140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

沈める滝

2016-09-17 00:05:48 | 三島由紀夫
「『沈める滝』は、三島由紀夫の長編小説。原題は旧漢字の『沈める瀧』である。
愛を信じないダム設計技師が建設調査の冬ごもりの間、或る不感症の人妻と会わないことで人工恋愛を合成しようとする物語。
ダム建設を背景にした一組の男女の恋愛心理の変化を軸に、芸術と愛情の関連を描いた作品である」と
ウィキペディアに書いてあった。

石のように生きている主人公と石のような不感症の女が出会う。
他人や自分を石のようにしか思っていない男が石のような女に初めて愛情を覚えるとか、
不感症と知って遠ざかって行く男に対して内面までも石化させていた女も同じように相手を見ているとか、
それをマイナスとマイナスを掛けてプラスになる乗算とか人工恋愛とかそんなふうに形容しているが、
結局は同じ境遇の人間でないとわかりあえないと要約してしまうと乱暴だろうか。
どこかで理解されたいと思う人間の弱さとか、
離れていることで深まる愛情とか愛する姿勢を見せた途端に弱まる立場とか、
石なら愛せるが女としての喜びを隠さない相手に感じてしまう覚めた気持ちとか、
主人公たちの特殊な有り様は実際には通俗的な人間関係、男女関係とあまり相違ないかもしれない。
そして後になって、何事もなかったよりは何かあった方が良いということになる。
どんな記憶であったとしても。

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