140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

赤と黒

2012-03-25 00:10:06 | スタンダール
以前、新潮文庫で読んだ時には「赤と黒」という題名はあまり意味のないものという
説明があったような気がするが、岩波文庫の「はしがき」には
「ポール・ブールジェは『赤』は軍服、『黒』は僧衣をあらわすと解釈した」
「赤はジュリアンの共和主義精神を、黒は僧侶階級を示していると見ていいと思う」と書いてあった。
「共和主義精神」というものがどういうものかよくわからないが
野心家で激しやすいジュリアンの気性のことなのかもしれない。

ジュリアン・ソレルという人物に対して感情移入するのは私には困難だ。
どちらかというと嫌な奴だと思う。
本を読み終えるころになって、ようやく彼に同情を寄せることになる。
それと同時に「野心」というものが、いかにつまらないものであるかを感じることになる。
上巻・下巻あわせて800ページを越える比較的長い小説だが
その長さは「虚しさ」を感じさせるために必要なものかもしれない。
しかし流麗な文章なので「長い」と感じる人はあまりいないのかもしれない。

スタンダールは墓碑銘に「生きた、書いた、愛した」と残した人であるから
彼にとって「生きる」ことと「愛する」ことは同じ意味を持つものなのだろう。
「パルムの僧院」と「赤と黒」はトーンが異なる小説だが
「愛する」ことが主題であることに変わりはない。
それはアリョーシャやムイシュキン公爵のような周囲の人々ひとりひとりを受け入れるような
愛ではなく単純に「男女間の恋愛」だ。なんてまぁ「フランス的」なこと・・・

「蜉蝣は真夏の朝の九時に生まれ、その夕方の五時に死ぬ。
どうして夜という言葉を理解できようか」
TO THE HAPPY FEW

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