140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

名古屋フィル#119ブルックナー交響曲第6番

2022-06-18 21:06:23 | 音楽
第502回定期演奏会〈ブルックナー〉
バルトーク:2台のピアノと打楽器のための協奏曲 Sz.115
ブルックナー:交響曲第6番イ長調[ノヴァーク版]

交響曲第6番は第2楽章と第3楽章のみの部分的な初演が行われたが、
全曲が初演される前にブルックナーは他界してしまったということです。
それから3年後にマーラーが全曲を通しての初演をしたそうですが、
長大な曲ゆえに聴衆の理解を得にくいということで、
大幅にカットした上にオーケストレーションを変えて演奏されたそうです。
変更なしで全曲通しての初演は作曲家の死から5年後にようやく実現したということです。
交響曲作曲家としてベートーヴェンと並ぶブルックナーの作品が
生前に演奏されることがなかったという事実に驚いています。
私たちは作曲者本人が聴けなかった曲を格安の料金で聴けることに全身全霊で感謝しなければならないのでしょう。
そういう意味では生まれた時代が良かったに違いないです。
GDP比2倍で税収の16年分を超えるレベルの国の借金があって、きっといつか破綻してしまうのでしょうが、
ブルックナーもマーラーも名フィルが極上の演奏を聴かせてくれるので、
きっと今は良い時代に違いないと思うことにします。

ブルックナーは入門曲の交響曲第4番と非の打ち所がない第7番~第9番が
クラシックベスト100に必ず入っていると思いますが、それ以外の曲は取り上げられる機会が少ないような気がします。
でも私はこの第6番がけっこうお気に入りでございます。
第1楽章からして世界の終末が訪れたような、
ニュートンの見出した法則に導かれて巨大な惑星が宇宙を鳴動するような、
そんな圧倒的な響きが聴こえて来て、一瞬にしてその中に取り込まれてしまう感じがします。
それはお気に入りの小説を読み始めてすぐにその世界の中に同化してしまうのと似ています。
その時に私のちっぽけな主観はどこかに消え去ってしまって、私はそこにある世界と一体化しているのです。
そして万人の心象に共通する何かを探り当てて作品に仕立て上げてしまう芸術家の業を心ゆくまで楽しめることができるのです。
そんなふうに喜びを見つけられる人はこうして何度もコンサートホールを訪れるのでしょう。
やっぱり良い時代だなぁ。