140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

名古屋フィル#117モーツァルト交響曲第41番

2022-04-20 19:49:22 | 音楽
第500回記念定期演奏会〈モーツァルト〉
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』
R.シュトラウス:アルプス交響曲 作品64

第39番から第41番の3つの交響曲は1788年の6月から8月にかけておよそ6週間で書かれたそうだ。
作曲の動機や目的は一切不明でいつ初演されたのかもわからないということだが、
きっと書きたいものを書いたのだろう。
モーツァルトが亡くなったのは1791年の12月5日だから、
まだ交響曲に未練があったのなら第42番が書かれていたかもしれないが、
もうこれが最後の交響曲ということが「ジュピター」を聴いているとひしひしと伝わって来る。
「ジュピター」という名称は後世の人が付けたということだが、
この曲の持つ荘厳で天国的な雰囲気によく合っていると思う。
終楽章のフーガを聴いていると誰もが永遠を求めている自分自身に気付く。
いつか死ぬ運命にある人間は神を求め、死を恐れ、永遠を渇望する。
それを具現化した作品が文学や音楽や絵画といった芸術の諸形式をとって存在する。
そして「ジュピター」は永遠性を獲得することで作品自体も永遠性を獲得することになり、
ヨーロッパを遠く離れた島国のコンサートホールを訪れた人々に感銘を与える。
その一人として、あることに気付く。
この曲は堅牢というのではなく、そこかしこに不安定な要因が見え隠れしている。
それが果たして永遠性を実現していると言えるのだろうか?
結局、私たちの気持ちに訴えかけるものは変化を伴う何かであって、
不安定な私たちは不安定なものにしか興味を持てないのかもしれないと考えるようになる。
遺伝子は子孫に引き継がれるのだとしても遺伝子の乗り物である私たちは不安定でいつか壊れてしまう。
だからこそ曲の美しさを感じ取ることができる。