幕末期に活躍した岩崎彌太郎は、三菱財閥の創立者として有名ですが、その岩崎家の本邸と別邸4ヶ所は、今、都立庭園として、人々に緑の潤いと、憩いの場を提供しています。
それらの庭園は、「旧岩崎邸庭園」「清澄庭園」「六義園」と「殿ヶ谷戸庭園」です。前記3ヶ所は、都心にあり、規模も大きく、名園としてよく知られていますが、最後の「殿ヶ谷戸庭園」は、東京都下にあり、面積もそれほど広くないので、知名度は低いかもしれません。
ここは、大正2年(1913)頃に、後の南満州鉄道副総裁・江口定條が、別荘を構えた土地で、昭和4年(1929)に、岩崎彦彌太(3代目三菱社長の長男)が買い取り、主屋や茶室を整備し、現在の姿に近い和洋折衷の回遊式林泉庭園として完成させたものです。
殿ヶ谷戸庭園の特徴は、国分寺崖線の南の縁に位置し、その段丘の高低差と、自然を十分に生かして作庭されていることです。
JR中央線「国分寺駅」から徒歩2分。繁華な街に隣接しながら、一歩中に足を踏み入れると、外の喧噪が嘘のよう。上段は洋風庭園。聳える大樹に囲まれて、広々とした芝生地が出迎えてくれます。
(上: 大らかな雰囲気が好もしい上段の庭)
(上: 今は管理所となっている和洋折衷の建物)
右手の小径を、萩のトンネルをくぐって進むと、道は下り坂。(下の写真)
(上:小径沿いには、美しい竹林)
庭園の下段には、次郎弁天池が緑の中にあり、そこには湧水が注ぎ込んでいます。
(上: 崖線から湧き出る豊富な水が池を満たし、植物や小動物を育んでいる)
滝があり、見上げると対岸の高台には、風情豊かな茶室「紅葉亭」。(下の写真)
(上: 見晴らしの良い紅葉亭)
石段を上って、そこに至れば、深い緑を映した水面が、眼下に広がっています。モミジが多いので、紅葉の頃も楽しみです。
殿ヶ谷戸庭園は、昭和40年代(1960年代)、周辺の開発計画が持ち上がった時に、存続の危機に直面しましたが、市民による保存運動が起こり、それを受けて、東京都が買収、昭和54年(1979)、都立庭園として開園されたとか。住民運動に感謝です。平成23年(2011)に国の名勝庭園に指定されました。
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