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児童文学作家 加藤純子のblog
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「白赤だすき小丸の旗風」(後藤竜二著 新日本出版社刊)

2009年01月09日 | Weblog
 昨年の暮れにGさんから、今夜これから中野で行われる、新年会のお誘いをいただきました。
 なんどか行っているお店なのにいつもだれかと一緒なので、行き方を覚えようとしていません。ですからこんなとき「どこを曲がったらいいかわからない」ということになってしまうのです。
「じゃあ中野駅で待ってるから」とGさん。
 いっつもこうです。こうして行き慣れない場所に行くときは、必ずどなたかにご迷惑をおかけしてしまうことになってしまいます。ほんとうにごめんなさい。

 さて、その後藤竜二さんの、1976年講談社から出版された『白赤だすき小丸の旗風』が、このたび新日本出版社から復刊されました。装幀は当時のものとはすっかり様変わりしています。
 この作品は、岩手県の南部藩の農民一揆の話です。
 北海道生まれの後藤竜二さんの母方のふるさとが岩手だということを、後日、彼から伺いました。
 その思いの深さと、後藤竜二の筆の力が、このすばらしい人間群像を活写する見事な物語を生みだしたのです。
 とにかく歴史観が深いです。
 そして驚くべきはこの作品、後藤竜二33歳のときのものだということです。 
 
 1976年。
 当時、児童文学を勉強していた私たちは、岡野和さんの重厚な装幀の本を買い込み、高みを見上げるように夢中になって読み、あまりのすごさに深いため息をついたものでした。
 いまでも書棚の、いつでも読める場所を陣取っています。
 後藤竜二の文章のうまさと、文章の美しさ、そのセンスには昔から定評がありますが、それに加えてぞくぞくするような農民一揆の臨場感や緊迫感。権力への怒り。悲しみ。それが余すことなく活写されています。
 そして作品の底辺を流れる民衆のロマンティシズムは秀逸です。
 
 ところで、いま「白赤だずき・・・」が復刊されたというのは、もちろんこの作品が、名作中の名作ということは無論ですが、(後藤竜二はこの作品でその翌年、「日本児童文学者協会賞」を受賞しています)一方、「今」の時代性ということもあるような気がしています。
 法政大学教授・江戸学が専門である田中優子さんの『カムイ伝講義』(小学館)や、小林多喜二の『蟹工船』ブームなど、ワーキングプア。あるいは若者たちが働くことにさえたどりつけない困難な時代。
 そういった、「今」という状況と、この作品に描かれた民衆たちの置かれている状況との重ね合わせ・・・。
 
 まだお読みになっていらっしゃらない方は、お急ぎください。
 とにかく必読の名作です!
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
パチパチパチ (ありちゃん)
2009-01-11 20:42:36
復刊、嬉しいです。
息子は「なつかしい」といってました。

(ということは・・わたしの年?それはやめておきましょう)

ごめんなさい、加藤さんのページで喜んでしまいました。
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Unknown (加藤純子)
2009-01-11 23:45:31
ありちゃんさん

Gさんたち、「北海道道場」なる研究会を立ち上げられたようですよ。
たぶん、北海道のTYさんにお問い合わせになればおわかりになると思います。

「白赤だすき・・・」の復刊、ほんとうにうれしいですね!
息子さんにもどうぞよろしく。
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Unknown (ありちゃん)
2009-01-12 07:39:46
北海道道場のお噂はかねがね聞いております。
いいなあ、うらやましいなあと指をくわえているばかりです。ちいさな日本のはずなのに、北海道は広すぎて、移動が大変。なかなかそのために出かけることもできずにいます。
ましてや、東京は夢の国かな。
でも、いつも加藤先生の所のお邪魔させていただくので、幸せです。これからもどうぞよろしくお願いします。
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Unknown (加藤純子)
2009-01-12 08:34:19
ありちゃんさん

そうおっしゃっていただくとうれしいです。
北海道は広いので、場所によっては飛行機で東京へいらっしゃる方が近い場合もあるわけですね。

でもその広い大地に生まれ育った方たちって、なんだかみなさん、すごくスケールが大きいような気がします。
山に囲まれた盆地の街に生まれた私などにとっては。
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Unknown (ありちゃん)
2009-01-12 21:02:56
いや~、わたしのようにたいしたことない人間もわんさかいます(ポリポリ)

刺激少なく大自然の中でぼんやり過ごすのが日課です。
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Unknown (加藤純子)
2009-01-12 21:24:19
ありちゃんさん

「北の大地」ってことでひとくくりに考えるのは、確かにおかしいですね。
でも、自然を眺めながら生きるなんて、うらやましいです。まぶしいです。

それにしても、私の周りには北海道ご出身の作家、画家、編集者の方々が、なぜかとっても多いんですよ。
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