20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊10冊ご紹介

2013年10月17日 | Weblog

 すっかり遅れてしまった新刊のご紹介です。

 今日は10冊。

 あとの10冊は、また後日に。

 

 うかうかしていたら、机の上がご紹介していないご本で山積み状態になっていました。

 すでに20冊、すべて拝読していますが、ご紹介となるとそれなりに気負い・・・。

 ほんとうにごめんなさい。

 残り10冊も近々、ご紹介させていただきます。

 出版社からご恵贈いただいているご本も多数ありますが、それもとなると際限なく広がってしまうので、あくまでも作家からの献本のみのご紹介に限らせていただいております。出版社の皆さま、いつもありがとうございます。

 来年の新人賞・協会賞に向けて、また書評などに取り上げる参考のために、すべてのご本をしっかり拝読させていただいております。

 

         

『おれのミューズ!』(にしがきようこ作・平沢朋子絵・小学館)

 椋鳩十賞を受賞された、にしがきようこさんの2作目です。

 久しぶりに会った幼なじみの少女「ミーミ」は病気を抱えています。絵を見ることが好きなミーミに誘われ、ふたりは上野の国立博物館に出かけていきます。

 そこで見た長谷川等珀の屏風絵に「おれ」は感動し・・・。

『ピアチューレ』では「音」を文章で繊細に力強く描写したにしがきさんが、今回は「絵」を文章で細やかにそして力強く描ききっています。

 

 

         

『ねむの花がさいたよ』(にしがきようこ作・戸田ノブコ絵・小峰書店)  

 立て続けに、2冊ご上梓された、もう一冊です。

 文体と人間描写に、とても惹かれる作品です。

 こんなふうに、あたたかな大人たちに囲まれて大きくなるというのも、ステキなことです。

 このご本については、『飛ぶ教室』(光村図書)の秋号の書評(もうじき発売)に取り上げさせていただきました。

 

 

        

『ジャンピンライブ!!』(開隆人作・宮尾和孝絵・そうえん社)

 剣道を描いたシリーズ3作が終わり、待望の4作目の新刊です。

 貧しさを、どう描くかというのは格差社会の時代、ひとつのテーマです。

 開さんは、そこに取り組んでいます。魅力的な登場人物を配して。

 貧しさを恨むのではなく、自らの生きる力で乗りこえていく。いまの時代の新しい児童文学の誕生です。
 
 
 
        
『マジックアウト3 ーレボリューション』(佐藤まどか作・丹治陽子絵・フレーベル館)
『マジックアウト』シリーズの完結編です。才術をもった「守の使い」の家に生まれたアニアは、実は無才人でした。
 そのアニアは実は双子の姉妹でした。妹のアマリリアは生まれてすぐに誘拐され、離ればなれに暮らしていました。第三巻の完結編では、アニアはなぜ無才人に生まれたのか。そしてふたりに背負わされた運命とは、いったいなんだったのかが明らかになっていきます。
 才術の力はないけれど読書家のアニアは、危機に瀕した国を救うことができるのでしょうか?
 現代社会の問題を想起するようなストーリー展開と、魅力的な人物像でいよいよ物語はクライマックスです。
 
 

        

『ふしぎ駄菓子屋・銭天堂』(廣嶋玲子作・jyajya絵・偕成社)

 ファンタジーの若き旗手である廣嶋玲子さんが書いた、駄菓子屋をめぐる7つの短編連作です。

 作品の真ん中にあるのは「ふしぎ駄菓子屋・銭天堂」の主人の紅子さん。ところがこの駄菓子屋。ただの駄菓子屋ではありません。

 第一話「型抜きグミ」では泳げなかった女の子が、紅子さんに薦められるまま手にしたグミで不思議な体験を・・。いずれもちょっと不気味でぞくっとするような短編で構成されています。

 

 

        

『都会のアリス』(石井睦美作・植田真絵・岩崎書店)

 主人公の「佐和子」はどうも自分の名前が気に入らない。そこで思いついたのが大好きな『ふしぎな国のアリス』の「アリス」という名前。そんな「アリス」のモノローグで綴られる、家族の物語。

「アリス」の心情が、見事なレトリックで、くっきりと立ち上がってきます。

 また、物語の合間に登場する植田真さんの絵が、余白を豊かに表現していて、とってもおしゃれでステキなご本です。文章のお上手さに定評のある、石井睦美ワールドです。
 
 
 

        

『レガッタ!3』(濱野京子作・一瀬ルカ絵・講談社YA)

『レガッタ』シリーズ3巻の完結編です。ボートという競技のおもしろさと、それにとり組む少女たちのストイックさやひたむきさが丁寧に描かれたシリーズでした。

  それに取り組む少女群像、姉、両親、そしてBFとの関係も好感が持てます。
 
 人間をじっくり描き上げる力で描いたこの作品は、そのまま作者の人間をみつめる眼差しの確かさに裏打ちされているものです。
 ちなみに、いわば外伝ともいえるアンソロジーも発売されています。それは後日ご紹介します。
 
 

        

『アランビアンナイト』(濱野京子文・ひらいたかこ絵・ポプラ社ポケット文庫)

 名作『アランビアンナイト』、濱野京子さんの筆によるリライトです。

「アリ・ババと40人の盗賊」といった名作5編が収録されています。

 リアリズムだけでなく、ファンタジーもお書きになる濱野さんだからこそ書けた描写が、随所にひかっています。

 世界中の物語の原点となった、この説話。子どもたちに読みやすくリライトされています。

 

 

        

『だだすこ』(北柳あぶみ句集)

 俳人の北柳あぶみさんは、ご存じの方も多いですが長編ファンタジーなどをお書きになっている、児童文学者のおおぎやなぎちかさんです。

 そのあぶみさんの句集です。その中から勝手に「天」「地」「人」を選ばせていただきました。

(天)雪解けて イーハトーヴの 現はるる(さすが東北生まれ。この心象風景はあぶみさんの原点なのでは)

(地)ひろびろと 桃をはなるる 桃の皮(ひろびろと感じるのは、児童文学者の視点です)

(人)重陽の 指に重たき 指輪かな(秋、こんな気だるさも作家には書くことへの必死さにつながっていくものです)

 すてきな句集でした。

 

 

         

『きっとオオカミ、ぜったいオオカミ』(山崎玲子作・かわかみ味智子絵・国土社)

 主人公の「真砂人」は神社で「オオカミ」の頭らしき骨を見つけます。「オオカミ」というのは「大神」として山に祀られていて、大昔には山でいちばん強かった動物です。そんなオオカミの骨を見つけたのです。

 それを調べに新幹線にのって「真砂人」は上野の科学博物館に行く決心をします。そこで知ったのはオオカミは絶滅種であること。そして鑑定してもらった骨の結果は・・・。

 真砂人の大冒険と絶滅種であるオオカミへのロマンのつまった物語です。

 

 皆さま、この10冊、ぜひお読みになってください。   

 

コメント (4)
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