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第914話 ステイホーム週間は本を読もう(10)

2020年05月04日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、いつもはビジネスに関わる内容をお届けしているこのブログですが、ステイホーム週間に合わせて「お薦めの本」を紹介しています。10冊目です。

「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」山口 周

 今回はたしかに「お薦め」なのですが、非常に批判的に書きます。すでに本書を読まれて好意的な感想をお持ちの方には、「申し訳ありません」と先に述べておきます。批判するなら、お薦めしなければいいのでは?そう思われた方も多いと思います。それでもここで紹介する理由は「なるほど。商売とはこうやってはじめるのか!」と感心したからです。

 本書の主張は極めてシンプルです。「おわりに」の一部を引用します。

「本書が、世の中で通説とされている「生産性」「効率性」といった外部のモノサシではなく、「真・善・美」を内在的判断する美意識という内部のモノサシに照らして、自らの有り様を考えていただくきっかけなれば、著者にとってこれほどの幸福はありません。」

 以上です。従来のようなロジック中心の「サイエンス重視の意思決定」ではこれからは立ち行かなくなる、ビジネスエリートは「アート」を学んで「美意識」を鍛えなければVUCA(ご存じない方は調べてください)の時代においてビジネスの舵取りをすることはできない、乗り切れないというわけです。

 その「美意識」は絵画を鑑賞し、哲学者の言葉に耳を傾けることで培われます。欧米のグローバル企業で働くエリートたちが、世界的に著名なアートスクールに通うのはそうした理由だからだそうです。今までの考え方の中心にある「サイエンス」を批判し「アート」へと導こうというわけです。

 ところが、「サイエンス」を批判する手法が極めてサイエンスなのです。最先端の経営学の学識を身に付け、ボストン・コンサルティングやコーン・フェリー・ヘイなどの超一流コンサルティングで働いた経験を持つ著者だけのことはあります。

 この本はベストセラーとなっています。「得意な技」を使って「得意な分野」を批判する。そりゃあ上手く行くわけです。「なるほど!商売が上手です!」と思わずうなってしまいました。

 さて、本書の中で、スティーブ・ジョブズについて触れています。「(ジョブズの意思決定は)一瞬の直感に導かれて行われていたことは確かようです」、「ジョブズは製造コストや在庫のシミュレーションを行うことなく・・」と書かれています。

 これには爆笑してしまいました。その理由にご興味のある方は以下のサイトをご覧ください(有料ですが)。 

https://www.businessinsider.com/apples-steve-jobs-was-an-expert-in-supply-chain-management-2018-3

 

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

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