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正統的周辺参加論と生産性向上

2017年11月19日 | コンサルティング

正統的周辺参加(LPP:Legitimate peripheral participation)とはJean Laveと Etienne Wengerが提唱した共同体における学習プロセスです(かなり端折った表現です)。ある人が、組織の中で中心的な役割を担うことができるようになるまでには長い時間がかかります。たとえば、新入りが親方や先輩の下で段階的に知識や技能を獲得していく「徒弟制度」を思い浮かべてもらえばよいでしょう。新入りはその組織の「正統的な」参加者であり、はじめは「周辺的」な立場から徐々に「中心的」な役割を果たすようになっていきます。そのプロセスが正統的周辺参加です。

一般の会社は徒弟制度で成り立っているわけではありませんが、職場に入ってきた新人(年齢、経験にかかわらず)は「正統的周辺参加」者です。たとえば、新たな参加者(新人)が先輩の下に付いてOJT(On the Job Training)を受けるとします。新人が学ぶ様々な知識や仕事の進め方は、その職場が置かれた状況やコンテクストの中で生み出されたものです。それは、先輩個人の持ち物ではありません。職場内外でのやり取りの中で「社会的に」獲得されたものです。

さて、生産性にかかわるテーマにわざわざ「正統的周辺参加」論を持ち出した理由を説明します。昨今、生産性向上が求められていますが、それについては2つの議論があります。「生産性=仕事の成果÷投入する労力」とすれば、(1)生産性を上げるためには投入する労力(たとえば時間)を少なくせよという「効率重視」と、(2)仕事の成果(品質、価値)を高めよという「価値重視」です。

会社のような組織においては、1人だけで完結できる仕事はほとんどありません。仕事には「前」と「後」があります。「前」の工程を行う人から仕事が渡され、「後」の工程を受け持つ人へと渡されていきます。このように仕事は「パスワーク」で進みます。ですから、個人の仕事の「効率重視」には限界があります。また、仕事の成果(品質、価値)を高めようとすれば、職場や会社全体でしっかりと話し合う必要があります。

いずれにしても組織全体で生産性を上げようとすれば、メンバーが「正統的周辺参加」という学習のプロセスを経て「社会的に」に知識やノウハウを獲得するしかありません。

すでに学ぶ必要のない優秀な人材だけを集めた「オールスターチームであれば話は別ですが、「普通の」会社はそうではないはずです。

生産性向上の議論の前に、ご自身の職場や会社が「学習する組織」になっているか今一度点検してしみてはいかがでしょうか。

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