中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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「真打」までには15年

2014年03月26日 | コンサルティング

「入門から15年。『きちんと大事にゆっくり』と育てました。」

これは3月23日に、真打に昇進した古今亭志ん公改め古今亭志ん好さんの昇進襲名披露口上の時の、三遊亭金馬さんの言葉です。

噺家は、入門から真打昇進まで約15年という長い年月を経るそうです。15年と言えば、赤ん坊が高校に入学するまでの年数ですから、何とも長い時間です。

その道のりは、弟子入りを志願した師匠から入門許可を得て前座登録し、師匠の下での雑用から始まり寄席での仕事(前座修行)が課せられて、二つ目になります。

ここでようやく一人前と見なされるようになります。紋付きの羽織を着ることが許され番組にも名前が出るようになりますが、二つ目でさらに10年間程度の経験を積み、師匠の許しがもらえれば、そこでやっと真打に上がることができるのです。

これだけの長い下積み期間を経てようやく真打昇進するわけで、それまでの長い道のりを考えると、あの襲名披露口上の席がいかに晴れがましいものなのかが想像できますね。

ところで、年度末 3月も残すところあと数日となりました。4月1日は多くの企業の入社日です。私どももこれからしばらくの間、新入社員研修をご依頼いただいている企業で沢山のフレッシュマンの皆さんにお会いすることになります。

企業を取り巻く環境は一時期より厳しさが回復しつつあるとの報道もありますが、実情はまだまだ厳しいところが多いように感じます。

そうした状況ですので、自ずと新入社員に対する期待も大きくなるようで、先日お会いした企業の研修担当者も新入社員に対して「早く育ってほしい」「早く即戦力として活躍して欲しい」とおっしゃっていました。

もちろん、早く成長してもらえるのならそれに越したことはないのでしょうが、現実はそんなに簡単でないことは言うまでもありません。

噺家の世界は真打まで15年ですし、桃栗3年 柿8年という諺もあります。昨日今日植えた木が来年すぐに実をつけることはなかなかないわけで、将来大きな実をつけてもらうためには、丹精を込めて育てなければならないのはもちろんのことです。

今のご時世、早く大きくなって欲しい、育ってほしいという気持ちはとてもよくわかりますが、1年以内に生長して開花・結実し、種子を残して枯死してしまう1年草のように、すぐに大きくなってもすぐに終わりが来るものもあります。

また、肥料や水をやり過ぎると根腐れしてしまうということもあります。肥料や水を吸収するのにもそれなりの時間が必要ということは、植物も人も同じだと思います。

スピードが求められる時代ではありますが、人材は長い目でゆっくり丁寧に育てることが必要だということを忘れないようにしたいものだと思います。

(人材育成社)