パオと高床

あこがれの移動と定住

松尾亮太『考えるナメクジ』(さくら舎2020年5月24日)

2020-09-26 01:04:17 | 国内・エッセイ・評論

副題は「人間をしのぐ驚異の脳機能」という。
ナメクジの学習能力や脳の再生力、繁殖力や五感、DNAの増殖力などが語られている一冊。
いやいや、生きものというものは生きるための知恵を備えているものだと改めて感じた。

ナメクジ、唐突に現れて、いつのまにかそこにいて、はっきり言って苦手な存在だが、その生態を語られると面白い。
そもそも、その研究者がいることがやはり、研究家とはすごいものだ。
読み終わって、もう一度中表紙のナメクジの振り向きに至る三枚の写真を見ると、何だか一瞬かわいく見えてしまう。
もちろん、一瞬だけれど。

そういえば、「ウルトラQ」ではナメゴンという巨大ナメクジが現れた回があった。
パトリシア・ハイ・スミスの小説はカタツムリだった。ナメクジとは違うし、この本の著者もカタツムリとナメクジの
一般的な人気の違いから語り始めている。ただ、各章の扉のナメクジの絵や柱に描かれているナメクジはユーモラスで
思わず笑える。
そう、この本の「はじめに」に書かれているように、
「ヒトとはまったく違うロジックで働き、それでいて非常にすぐれた彼らの脳機能」に触れるのは、楽しく、
「万物の霊長たるヒトの脳は、なにもすべての動物が目指すべき頂点ではなく、この世界を生き抜くための
単なるひとつの形にすぎない、ということも同時に感じていただければうれしく思います」を感じることができて、
うれしく思えた一冊だった。
コメント
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