パオと高床

あこがれの移動と定住

小泉武夫『くさい食べもの大全』(東京堂出版)

2015-05-23 21:04:57 | 国内・エッセイ・評論
久しぶりの小泉武夫。今回は「大全」だ。食べ極めるくさいものが溢れている。
「はじめに」で、いきなりこう来る。

  昨今の日本では、個性派とおぼしき人物を見かけることが
 めっきり少なくなった。

あっ、来るぞ、その個性派から臭いにくるぞ。で、

  個性を生み出す大きな要素のひとつが、においだ。

だが、においを排除する現代を慨嘆。いわく、

  くさいものを知ることは、人としてたくましく生きるために欠
 かせない教養なのだ。

そして、「人間力」にとって重要だという。臭いは存在の、生命の維持にとって
重要な要素である。生命の危険は臭いによって回避されることが多いはずで、つ
まり無臭は危険なのだ。

とか何とかは置いといて、とにかく、獲物を狙う狩人のように、臭い食品を狙う
小泉武夫に連れて行かれる。
章立ては、第1章魚類、2章魚醬、3章肉類、4章納豆、5章大豆製品、
6章野菜・果物、7章虫類、8章酒類、9章チーズ、10章漬物となっている。
納豆は、それで1章できるだけの際立ちがある。ふむふむ。なるほどとか思いながら、
大豆、漬物の1章もあるよな。魚醬で1章というのも面白いな。とかとか、げっ! 虫、
とも思ったり。そして、それぞれの食品の臭度を★マークで5段階にわけている。
★1つは「あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる」。
2つは「くさい。濃厚で芳醇なにおい」。
3つは分かれ目、「強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる」となり、
では、4つは、「のけぞるほどくさい。咳き込み、涙することも」。ここには「熟鮨」
「ニョク・マム」「ドリアン」などがいる。
そして★5つです! 「失神するほどくさい。ときには命の危険も」ということで、
この本冒頭の一品は「シュール・ストレミング」。
その次に配置されたのが「ホンオ・フェ」。そして、3番目に置かれた「くさや」などが、
このテリトリーに入る。「臭豆腐」も★5つだ。
紹興酒と一緒に食べた臭豆腐はおいしかった。
そういえば、かなり昔に食べた「くさや」も店の人はホントに大丈夫って聞いて出して
くれた。

臭いの成分、食品の製造過程、その効用、また小泉武夫のその食品との出会いなどが
コンパクトに書かれ、学術性も備えながら、とにかく面白い。これは小泉武夫の著作
にはたいていあてはまることだが…。だから読んじゃうわけで…。
ごろんとなって、これはパスかなとか、これ食べたよとか、これ食べてみたいなとか、
思いながら、ああ、世界って広いし、人類は「快食」だよなと別の著作の題名を思い
浮かべたりして、楽しく時間を過ごせたのだ。
コメント
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