東京都という大消費市場を隣に持つ埼玉県は、江戸時代から江戸への食糧供給基地だった。実際、昭和30年代に工業県に転換する前は、埼玉県は農業県だったのである。
8月31日は「野菜の日」なのだという。確かにゴロ合わせをしてみると、「ヤサイ」と読める。
2013年の埼玉県の農業産出額(2012億円)は、全国18位ながら、大消費地に近いので、その51%を占める野菜の産出額(庭先販売額)では全国6位だ。
ネギ(194億円)、サトイモ(68億円)、コマツナ(54億円)は全国1位。
独特のぬめり・ねばりと上品な味わいが特徴の県産のサトイモだが、県が売り込もうとしている新品種「丸系八つ頭」を御存知だろうか。
ソフトボールのような丸みが特徴で、重さ500~1000グラム、通常のサトイモの約10倍の大きさ。甘みがあり、ほくほくとした食感。大きいので皮もむきやすいという。
埼玉市の見沼たんぼで突然変異の丸い芋が見つかったのがきっかけで、県農業技術研究センターが開発、深谷市で産地化を図った。市内の生産農家は20軒を超し、他市にも広がっている。
ミネラル、カルシウムが豊富なコマツナは年に5、6回栽培できて,生産性が高い。草加市など県の東部地域で栽培されていて、草加市ではB級グルメなどにいろいろ加工されている。
キュウリ(146億円)、ホウレンソウ(125億円)、ブロッコリー(45億円)、カブ(15億円)は全国2位である。
深谷ねぎに代表されるネギは全国に名を知られ、県民の人気も一番高い。
花(花き)は、172億円で全国5位。パンジー(苗、7億円)が全国1位。ユリ(切花、32億円)、洋ラン類(鉢物、26億円)、チューリップ(切花 4億円)が2位だ。
果物では、果実産出額の約60%がナシ(39億円)で、全国6位。県農林総合研究センター園芸研究所(久喜市)で育成したオリジナルな埼玉ブランド「彩玉(さいぎょく)」をはやらせようとしている。
「新高(にいたか)」と「豊水」を交配したもので、大玉で「幸水」以上に甘くみずみずしいのが売り物。県育成品種なので、生産は県内に限定されている。「幸水」が終わった8月下旬から9月初旬が収穫期。
眼にいいとされるブルーベリーは、美里町の作付面積(40ha)が市町村単位で日本一で、観光農園が25か所ある。養蚕の衰退に伴い、桑畑の遊休地を活用しようと1999年から町が推進してきた。
狭山茶を代表とする茶(生葉)は、12億円で全国8位。おせち料理にかかせないクワイは、福山市を持つ広島県に次ぐ。
私にとって興味があるのは、小麦の産出額が7億円と全国4位で、作付面積が8位、収穫量が6位であることだ。
食料品製造出荷額では、中華めんが369億円で全国1位、和風めんが206億円と全国3位を占める。
県のうどん生産量は、香川県についで2位、うどん・そば店の数も全国2位(09年)。「統計からみた埼玉県のすがた」の中の「埼玉県の一番」に明記してある。
増産のための麦踏みや米麦二毛作も、熊谷市東別府生まれの「麦翁(王)」こと権田愛三(1850~1928)の研究から始まって、全国に広がった。熊谷市の小麦の収穫量は今でも県の3分の1を超しており、断トツだ。
「朝まんじゅうに昼うどん」という粉食文化が根付いていて、今でも客が来たり、お祭りがあると、うどんをつくる家も多い。
川島町の「すったて」や鴻巣市の「幅広うどん」はB級グルメでおなじみ。コシの強さと喉ごしの良さで知られるうどんが売り物の加須市は6月25日を「うどんの日」と定めた。「山田うどん」にはファンが多い。
埼玉県はうどんの国だったのである