「ゆるキャラの首都」 羽生市
「ゆるキャラ」の語がひとつピンと来なかった。
ゆるキャラとは縫いぐるみのことらしい。ゆるとは縫いぐるみのぶかぶかした印象から。キャラとはキャラクターの略語。人形もキャラクターなのか。中に入っている人は、夏などは汗だくになり、大変だろうと同情する。
10年11月29日の各紙の埼玉版は、羽生水郷公園で第1回ゆるキャラさみっとが開かれ、1都18県の85体(県内からは45)が集合、会場には5万人が集まったと伝えた。「この市にこれほどの観光客が来たのは記憶にない」と担当者が語っていたほどだった。
「埼玉県はゆるキャラ王国といってもいい」と、羽生市の河田晃明市長は語っている。その王国の先陣を切っているのがその羽生市だ。この市は、県のゆるキャラの先進地なのである。
ゆるキャラは埼玉県にとっては特別の意味がある。「海なし、温泉地なし、世界遺産なし」。観光資源ときたら“無い無い尽くし”だからである。
上田清司知事は10年1月、「埼玉『超』観光立県宣言」を出した。本当にほとんど無いのだから、観光というなら、「超」的な知恵を絞って、イベントを考え出し、人に来てもらわなければならない。その柱の一つが、このゆるキャラ、もう一つはB級グルメである。
知事はこの宣言で、「63全市町村に12年までにゆるキャラとB級グルメを」と呼びかけた。ゆるキャラ制作費やPR活動費の2分の1(上限百万円)を県の「ふるさと創生資金」で補助しようというのである。
上田知事は、県人ではなく、福岡県大牟田市出身。それだけに埼玉県を客観的に見ることができる。なかなかのアイデアマンだ。
羽生市に何があるだろう。
東に加須市、西に行田市。田山花袋の「田舎教師」の舞台だ。その像が立っている。
水郷公園の宝蔵寺沼には、自生する国内唯一の天然記念物の食虫植物「ムジナモ」がある。そこで出来たキャラが「ムジナもん」。その頭の横についているのがモロヘイヤ。羽生の特産だ。
その原産地エジプトに3年半いたので、モロヘイヤについてはよく知っている。日本に紹介した故人も私の知人だった。最高の健康食品で、その健康効果の全貌が分かれば、再び大ブームになるだろう。私も暑い時によく買う。
ピラミッドを造ったのはモロヘイヤだと聞いたことがある。クレオパトラも食べた
羽生の飲食店組合はモロヘイヤ入りの「王様のワンタン」をつくった。暑い時には最適だろう。このほか、地ビール工房「キャッセ羽生」は、国際ビールコンテストで7年連続受賞。名物「いがまんじゅう」は農水省の全国郷土料理百選に選ばれた。
ゆるキャラと言えば、最も有名なのは、「彦根のひこにゃん」だ。10年には特別ゲストで招待されて喝采された。羽生市はゆるキャラで「東の羽生、西の彦根」を目指した。
3回目は12年11月24、5日、36都道府県から前年の2回目を80以上回る265キャラ(県内からは60以上)が参加した。2日間で前年の2倍以上の29万5千人が見物に来た。市の人口約5万6千人の5倍を超す。(2回目の11年は、30都道府県から172キャラが参加、二日間で13万5千人の人出)。
全国から865キャラが参加する「ゆるキャラグランプリ2012」(投票総数650万票)の発表があり、1位には前年2位の「バリィさん」(愛媛県今治市)、前年6位だった深谷市の「ふっかちゃん」 (写真)は5位に選ばれた。
この1か月前に開かれた彦根のゆるキャラ・イベントに集まったのは244キャラだったので、羽生市の方が多かった。羽生市は、日本の「ゆるキャラ」の首都になったのである。
14年8月2日には、羽生市中央の「羽生市民プラザ」に、「くまモン」「ふなっしー」など65体のキャラクターのぬいぐるみとキャラクター・グッズ約500種を展示する日本で初めての「キャラクターミュージアム」(約80平方m)もオープン、15年5月4日リニューアルした。
日本ご当地キャラクター協会(本部・滋賀県彦根市)が設置、羽生市観光協会が管理・運営する。