小島と広島と私たち

島爺の倉橋島での農作業と,
広島を中心とした孫たちとのくらし

三根山

2008-10-18 04:40:47 | 私見
       相撲界の一面と海自・暴行死事件

 相撲界の不祥事が新聞紙上を騒がせている。
「弟子暴行事件」であり,「大麻吸引事件」であり,今は「八百長事件」の裁判が始まっている。

 島から帰る時には,何冊か適当に見繕って2度目の読書に耽ることにしている。1冊に『武士(おとこ)の紋章(池波正太郎・新潮文庫)』が含まれていた。
 そのなかの短編の一つが実在力士「三根山」で,昭和31年の秋場所(9月場所)15日間の取り組みと,彼の周辺の相撲界の一部が記されている。当時私は中学生で,同級生と同名の“富樫(後の横綱“柏戸”)”をひそかに応援していたが,“三根山”という力士は全く知らない。著者の処女作といってもいいほどの作品で,同年代の力士を描き,しかも翌年1月号の雑誌に発表されているから,小説とはいえ,事実を丹念にたどっているといえよう。

 この中に,弟弟子・兄弟子・親方の関係について述べられた部分がある。

 昭和13年,福岡巡業で高島部屋の後援者である岸本(後に妻となる淑子の父)を訪問するにあたって,序の口として初めて番付に名前が載ったことを祝って,兄弟子の巴潟(後,親方)が言う。
「今夜は大目にみてやるから,うンと御馳走になりな」
16歳の少年は1升飲んで酔いつぶれる。翌朝,嶋一(三根山の本名)のだらしなさを怒りステッキで殴りつける巴潟を親方が叱る。
「・・・,兄弟子というもんはな,稽古をつけるときばかりが兄弟子じゃないんだぜ。まだ人間が出来ていない若い者の毎日の生活ってものにまで,責任持って指導してやるのが本当なんだ。責めるなら自分を責めろ」

 後援者との関係についても触れている。

 「私が見ていても,一寸,卑屈になりすぎたり,ファンに媚びすぎたりする人もいるようです。大体,そういうのは系統をひいているようですね。先輩がそうだから,自然そうなるのでしょう。自分を大切にするという信念がなくてはいけませんね。」
と,この夏に,ある週刊誌のインタビュウに答えて,嶋一は,そういい切ったことがある。

 この作品を読み始めた時に目に入ったのが,海自隊員暴行死事件。しかも,第一から第四まである術校のうち,ほんのちょっと私も関わったことのある第一術科学校とある。特殊部隊「特別警備隊」の隊員を養成する特別警備課程で,中途でやめ別部隊への異動を控えた隊員が,1:15の“格闘訓練”をさせられ死亡したという。死には至らなかったが,同じ事件が五月にも発生している。勝ち残ったエリートが“落伍者をいたぶる儀式”であって,“はなむけ”であろうはずがない。
 これでは,悪しき伝統を「持つ」相撲部屋と全く同じことだ。
 同類の人間が集まる狭い社会で,しかも,場合によっては更に限定された船の上で何日間も過ごすこともあるから,規律は保たれなければならないが,それとこれとは違う。この度だけではないはずだから,外部からの人間を含めて,過去に遡ってしっかり調査してもらいたい。それが死者へのせめてもの“はなむけ”だ。
 組織から落後することは,そのこと自体が制裁であって,それ以上に,力の制裁を加えてはならない。

三根山隆司(1927.2.7~1989.8.15):高島部屋,本名 嶋村嶋一
 最高位は大関。病気や怪我で三役と平幕を上下。
 7年の婚約期間を経て結婚した年(昭和28年)に大関に昇進。
 翌昭和29年,大関として優勝。
 昭和30年,5月場所で負け越し,大関を陥落。同年9月場所は全休。
 舞台となった昭和31年の秋場所は,前頭十枚目。

池波正太郎(1923~1990)
   
  
 

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2 コメント

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Unknown (T)
2008-10-18 09:58:59
変換ミスと思われ巣箇所
素なかの、素敵で殴りつける、結婚した都市、部隊となった
以上は余分なことです。
「組織から落後することは,そのこと自体が制裁であって,それ以上に,力の制裁を加えてはならない」
締めくくりの文章に感動しました。
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Tさん,ありがとうございます (こまった島の爺)
2008-10-18 14:17:37
 ご指摘ありがとうございます。
つたない文と自認はしていても,こうして公開し,目を通して下さる方がある以上は,気をつけなくてはなりません。
 新聞記事などは,勝手に無断で引用させていただくわけですから,それなりに気をつけるのですが,つい書きなぐってしまう傾向があります。ごめんなさい。
 ついでに厚かましいお願いをします。
会話ではなく,一方通行の文章ですから,一面的な見方や,偏った考えや表現があろうかと思います。そうしたときには,遠慮なくずばり指摘していたくとありがたいです。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。
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