イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

人類最終日の高円寺革命、もしくは「ストップ!矢沢君」

2010年02月14日 20時17分07秒 | Weblog
生まれて初めて「名曲喫茶」に行った。高円寺の「ルネッサンス」(名曲喫茶がとても好きだという人に連れて行ってもらったのだ)。

店は、駅前の商店街を少し外れたところ、古めかしい建物の地下一階にある。なぜか少しどきどきしながら階段を下りた。

店内に入るとその独特の雰囲気に圧倒された。薄暗い店内には歴史を感じさせる調度品が並べられ、数人の先客が遠い目をして何かに思いを馳せている。

メニューはコーヒー、紅茶、ジュースの3種類だけ(すべて400円)。持込も自由。私語も可能だ。われわれはコーヒーを注文し、本棚の近くの小さなテーブル席を占拠した。

かなりの音量で音楽が鳴っている。コーヒーを啜り、渋めのセレクションの本を手に取りながら、名曲の調べに身を委ねる。壁に掛けられたいくつもの時計の針は止まっていた。ものの10分もすると、本当に時間が止まったかのような錯覚に陥った。

リクエストボードがあって、チョークで聴きたい曲を書き込める。常連風のお客さんが、思い出したように立ち上がり、リクエストを書き込んでいく。ブラームス、バッハ、チャイコフスキー。私も負けずに何かお願いしてみることにした。しばし迷った後、やおら立ち上がり「矢沢永吉、時間よ止まれ」と書き込んでみた。というのは嘘で「ドビッシー、選ばれた乙女」をリクエストした。

ゆっくり本を読むのもいい、目を瞑って音楽を堪能するのもいい、浮かんでは消える想念を追いかけてみるのもいい、だが、それでも、そんなすべてを無力化してしまう何かがここにはある。

ある日、突然、地球に隕石が激突して、一瞬にして人類が絶滅する。もしそんな午後が近い将来に訪れるのだとしたら、その最後の瞬間の光景に相応しいのが、この店内かもしれない――なぜかそんなことを想った。クラッシック音楽、古本、美味しい珈琲。つかの間、人生を降りる。おもむろにカップに手を伸ばす、昭和60年代の奥付の写真集を手に取る、脈絡もなく、ふとあの日の光景が頭を過ぎる。そして、おもむろに隕石が激突し、すべてが無に帰す(なぜそこで隕石なのかは、自分でもわからない)。

ともかく、そんな午後を夢想させてくれる、素敵で不思議な空間だった。世界はまだまだ、知らない場所に満ちている。

Meikyoku Kissa \"Renaissance\" Classical Cafe 名曲喫茶 ルネッサンス(高円寺)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
名曲喫茶(^0^) (Natsume)
2010-02-14 22:35:14
行ってみたいです。
(^0^)/

スピーカー、タンノイかなあ...
(^^)
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まさに異次元 (iwasi )
2010-02-14 22:45:26
さすが夏目さん、スピーカーのメーカーが気になるなんて、すごいです!

それにしても、かなりディープなお店でした。いつまでも続けてほしいです。ジャズ喫茶にも行ってみたいと思いましたよ~。
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