プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

スール地方・2 グリーンタートルの夢

2009-04-14 16:50:17 | オマーン&UAE編(南アジア&アラビア半

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※オマーン、UAE編(南アジア、アラビア半島カヤックトリップ)の続き記事。

 アラビア半島最東端に位置しウミガメ(グリーンタートル)の産卵で有名なRas Al Jinzの近くの、Ras Al Hadd周辺でカヤッキングした。もちろん産卵保護区は外している。

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↑ 道端に車を止め、フォールディングカヤックを組み立てて出艇。

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↑ 何度か海上でウミガメに出くわした。 

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↑ なかなか絵になる砂浜が次々出てくる。マスカット周辺の海もなかなかだが、遠く離れると海水の質もさらに素晴らしくなる。

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↑ 荒涼とした大地と青い海。この子犬は上陸して散歩しているとずっとついてきたやつ。かわいいけれど狂犬病を持っている可能性があり、海外ではむやみに動物に手を出さない方がよい。

 心地よいワンデイ・カヤッキングを終えた後、夜のウミガメの産卵観察ツアーに参加するためにRas Al Jinzのサンクチュアリに向かった。途中で道が分からなくなったので大衆レストランに入り従業員のニイチャンに行き方を教えてもらう。ついでにビリヤニという焼き飯を注文して色々話をしているとどうやら彼はインド、パキスタン、中国の国境をまたぐカシミール地方からの亡命者であることがわかった。UAE(アラブ首長国連邦)やオマーンにはインド、パキスタン、バングラデッシュ系の移民や出稼ぎ人がたくさんいるけれど、カシミール地方出身者に出会ったのは初めてだった。ジェントルな物腰で、やさしげな笑みをたたえた感じのいいアニキだったが、それゆえにカシミール紛争で親・兄弟を殺された話をする時にも絶やさないその達観したような微笑みが一層悲しく映り、ぼくはとても胸が痛んだ。さっきまで道が分からないくらいで少々いらついていたぼくの、その下らなさを恥じた。そして気ままにどこへでも旅することのできる恵まれた日本人であることにかたじけなさを覚えた。しかしだからといってカヤックトリップのモチベーションは揺らぐことなく、一瞬一瞬をもっと大事にしながら、さらによりよいカヤックトリップをこれからも続けていこうと思った。そしてアイランドストリームのカヤックツアーをもっといいものにしようと思ったのだった。

 Ras Al Jinzのウミガメ産卵観察ツアーは夜9時半から始まる。年間二万頭ものグリーン・タートルが産卵しにくる浜で、環境意識の高いオマーン政府が守っているサンクチュアリである。日中は立ち入り可能だが、産卵が行われる夜間はガイド同行でなければ入ることができない。産卵時のウミガメは神経質なのである。ぼくのほかにオランダ人、ベルギー人、カナダ人、ドイツ人、スウェーデン人計9名の参加者を、サイードさんという巻き舌英語が耳に残る35歳くらいのごついアンチャンのガイドさんが案内してくれた。満天の美しい星空の下、潮風を浴び波の音を聞きながら、甲長1mちょっとあるグリーンタートルの産卵を観察した。気付かれないように背後にまわり、産み落とされた十数個の卵に赤外線ライトを当て、サイードさんのひそひそ声の解説を聞き、ぼくらはひそひそ声の質問をした。潮騒の間から立ち上がってくるようなみんなのひそひそ声が不思議にチームワークというのか、バラバラの国籍の者同士の一体感のようなものを作り出していた。和やかで、なかなかいい夜だった。

 ここのグリーン・タートルはアラビア海からインド洋、アフリカ、南極・・・、全世界のウォータープラネットを旅し、数十年後再びこの浜に戻ってくる。人間が生まれるはるか昔、アンモナイトや三葉虫が海底を這いまわっていた二億年も前から、このプラネットアースを旅し続けているわけだ。昔、スティングに「ブルー・タートルの夢」という、凄腕ジャズマンが多数参加したなかなかの傑作アルバムがあって、ぼくはよく聴いたものだった。で、それを意識してかせずしてかぼくはカヤックを漕ぎながら海上でウミガメに出会うと、その生々しさと非現実な感じとののギャップを覚えつつ、「いったいウミガメってどんな夢を見るのだろうか」とよく連想したりするようになった。トリップフィールドであるプラネットアースのとてつもない空間的広がりと、先祖代々生き続けてきた長い長い時間軸、その思い出が見させる夢。ウミガメの身体そのものがいつも何か夢見てるようなドリーミーなシェイプをしているともいえるわけだし、シーラカンスや首長竜、ブロントザウルスとかネッシー、ゴンドワナ大陸とか超パンゲア大陸、人をおちょくったように発光するイカやファンキーな色彩を放つエビ、満月の夜に妖しく光る穏やかな海面とかクジラが奏でる音楽など、いろいろカラフルな夢を見るんだろうなと思う。

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↑ グリーン・タートルがやってくるRas Al Jinの海岸線。

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↑ このキャタピラのような模様は、産卵を終え海に帰っていく母ウミガメが手足をパタつかせてできた足跡。

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↑ この穴ぼこも産卵の際に作られたもの。卵はさらに2mほど地下に埋められているので日中は浜を歩いても大丈夫。

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↑ 長い長いぼくの足。

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↑ アラビア海は魚の宝庫であり、オマーンでは漁業が非常に大切にされている。早朝のフィッシュマーケットをのぞいたりするのもとても楽しい。けっこう日本でもよく見るような魚種が大半を占めている。


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ドライヴ・スール地方1

2009-04-14 10:32:21 | オマーン&UAE編(南アジア&アラビア半

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 ※オマーン、UAE編(南アジア、アラビア半島カヤックトリップ)の続き記事

 マスカット・マトラ地区には銀製品やアクセサリーを売る土産物屋や民族衣装やスカーフを売る店、お香や香炉、手芸品、日用雑貨まで売る店がひしめく「マトラ・スーク」という迷路のような市場があるが、そこをふらふらと迷いながら歩くのが非常に面白い。そこここで漂うインセンスのエキゾチックな香りと相まって、昔ながらのアラビアン・テイストを連想させる味わい深い空気感があった。買いたいものがいっぱいあったが、フォールディングカヤックというでかい荷物を持ってるので断念。船便で送ればいいんだけどそれもまた一日仕事になるので面倒だし、またの機会にいろいろ買い付けにいきたいなと思う。、

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↑ オールド・アラビアンの空気感もあれば、ルイ地区にはなんとダイソーもある。600バイサだから180円くらい。日本よりも高い。

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↑ オマーンは車社会で列車もなく、またバス網もあまり発達していないので、マスカット近郊ならばいいんだけど遠出するにはレンタカーを借りるのが一番だ。トヨタのYARISという車を借りてアラビア半島最東端のスール地方に行きカヤッキング&ウミガメウォッチング三昧することにした。

 なお余談だけどYarisというのは日本のVitzと同じ車種。日本で「ヤリス」というのはなんとなくやらしい響きで語呂がよくないということ、一方、海外で「ヴィッツ」というとこれもまた「小さい男性器」という意味になるということで、シモネタ性を回避するため日本では「ヴィッツ」、海外では「ヤリス」と分けて呼ばれることになったらしい。

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↑ マスカットからスールまで、新しく開通した海岸道路をひた走る。素晴らしく眺めがよい。

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↑ 海岸ハイウェイからちょっと脇道に逸れて沿岸にまで出てくると、渋~い昔ながらの村が出てくる。ゆっくり車で通りを流すと、なんというか旅情感が色濃く出てきて、胸がキューンとしてくる。

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↑ スーツまでの道中に出てくるワディ・シャーブというオアシス。オマーンにはこれといった河川がなく、こういうオアシスは非常に貴重で、庶民のいこいの場にもなっている。ワディ=泉のこと。

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↑ 海岸ハイウェイを時速140キロくらいでぶっ飛ばすと、スールの港町に出てくる。ちなみにオマーン人は普段は温和だがハンドルを握るとスピード狂に豹変する人が多く、120キロくらいで走ってると「遅いぞオラ」みたいな感じでケツを煽られる。

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 昔ながらのダウ船の造船所で有名なスールにはラグーンのような入江があって、その中では干満の差が激しい。この写真はちょうど潮が引いたところ。潮が満ちると出船できる状態になる。

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↑ 対岸のアイガ村へは小さな渡し船でわたる。ひなびた感じが風情ある漁村。時間が止まったようなのどかな船揚げ場。

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↑ 純白の建物やモスクの幾何学模様と青い空とがマッチして鮮やかだ。

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↑ スールの町を過ぎ、さらに海岸道路を走っていくと、砂漠と岩山の無人の荒野が出てくる。ひたすら続く砂漠の一本道を走り続けるのは爽快だ。時々ラクダにも出くわす。

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↑ ところどころに侘びた感じの漁村が出てくる。造船の進み具合をチェックしている漁民。 

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↑ 砂漠と海が密接した海岸線が続く。

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↑ このあたりは広大なワヒーバ砂漠の端っこになるので、場所によって見事な砂漠が展開される。

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↑ 砂山のふもとでテントを張って眠る。テントから顔だけだし、星空を眺めながらすごいなあすごいなあと思っているうちにいつのまにか眠ってしまった。


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マスカットの海・2

2009-04-14 07:31:34 | オマーン&UAE編(南アジア&アラビア半

※オマーン、UAE編(南アジア、アラビア半島カヤックトリップ)の続き記事

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マスカットからさらに車で30分ほど行くとQantab、Bandar khayranといった、カヤックにも最高の入り組んだ地形の場所が出てきます。下のグーグルアース図の右の方ですね。ここも大変気に入りました。

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↑ 岩山に登って海を眺めくつろぐオマーン人。

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↑ 無人の岩の島がところどころ出てくる。

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↑ トンネルの向こうに海面から背びれだけ出してるサメを数匹見つけた。サメと言っても人を襲わないやつ。

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↑ yitiというところの岩肌と砂浜。ここのこの眺めはなぜかよくガイドブックに出ている。

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↑ 広い砂浜でお昼休憩。

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↑ 岩山の断崖絶壁と民家。写真ではなく実際に見るとものすごく迫力のある景色。こういうのの臨場感って、写真がもっとも苦手とするものではなかろうか。

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↑ Bandar khayranという入り組んだ無人の湾の外側には魚が気持ち悪いほど湧いてバシャバシャとボイルしている場所があった。そのあたりの岩肌。

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オマーン・マスカットの海 1

2009-04-14 00:42:49 | オマーン&UAE編(南アジア&アラビア半

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 ※オマーン、UAE編(南アジア、アラビア半島カヤックトリップ)の続き記事

 アンダマン・ニコバル諸島からチェンナイに再度戻り、チェンナイからムンバイ、ムンバイからUAEのドバイ、そこまでは飛行機を乗継ぎ、そしてドバイから早朝発のオマーン・マスカット行きのバスに乗って砂漠の道をひた走り、ようやく首都マスカットは海岸線の街・マトラ地区にたどり着きました。翌日マトラ地区の海岸プロムナードから出艇、小一時間漕ぐと上の写真のような入江が出てきました。オマーンは海の美しさでも知る人ぞ知る国ですが、首都圏にしてこの透明度。

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↑ アラビアンナイトのシンドバットが船出した地であるオマーンは大昔は海洋国家として大いに栄えましたが、近代化に遅れ、1970年頃までの前国王時代、舗装道路が10キロで、学校が3校たらずという貧窮極まるありさまにまでなり下がりました。それが現在のカブース国王が即位してから一転、近代化に成功し、めざましい発展を遂げました。というわけで発展してそれほど時が経っていないこと、産油国なので工場が少なく、工業廃液などが流れ込まないこと、また国の戦略として環境に非常に気を遣っているなどの理由から、近代国家の首都の海とは考えられないほどきれいでした。

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↑ 植物のはえないごつごつとした岩山が、日本とは正反対で新鮮でした。

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↑ マスカット近くの海沿いの漁師の村。

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↑ さんごも多い。マスカット周辺はダイビングでも人気。

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↑ ごつごつした岩山のそばのモスク。海から見ると一層異国感がありました。

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↑ どこまで行ってもワイルドな岩山。

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↑ 漕ぎ疲れたら美しい入江で休憩。

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↑ 気ままに行けるところまで漕ぎ、テキトーな場所に上陸し、カヤックを折りたたんだあと、ヒッチハイクして再びマトラ地区へと戻りました。オマーンは治安が抜群によく(たぶん日本よりいい)、何の心配もなくヒッチハイクできるのがいいです。オマーン人は温和、フレンドリーで、そして何より異文化に対する寛容性と同時にオマーン人であることの誇り、その両方を持って生きている感じが空気感として伝わってきます。ぼくは初日からすぐにオマーンが気に入りました。そして、これまで訪れた中でも最も好きな国のひとつとなりました。

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↑ これはUFOではなくお香を炊く香炉を模したモニュメントです。オマーンは、かのクレオパトラをも魅了し、またキリスト生誕の時、東方の三博士が贈り物として捧げたものの一つでもある「乳香(frank insence)」の名産地でもあり、町を歩くとあちこちから何とも言えないエキゾチックなかぐわしい香りが漂ってきます。あんまり日本でかいだことのない、魅惑の香りです(ちなみに大昔には乳香は金銀より価値のあるものだったようです)。オマーン人は乳香その他いろんなお香をミックスして室内で炊き、それを民族衣装に染み込ませている人も多く、すれ違うゴツイオッサンなんかでも、えもいわれぬ魅惑の香りを発していたりします。

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↑ 夜にライトアップするとこうなります。UFOそっくり。

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↑ もともと砂漠の殺風景な景観なので、街路には色とりどりの花が植えられ、きちんと手入れ、管理されています。

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↑ モスク型モニュメントの上に出た星。

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↑ モスクの上のこの三日月が、いい。   

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↑ ライトアップされたオールド・マスカットからマトラ地区への通り。

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↑ マスカット・マトラ地区の夜景。

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↑ 海沿いのプロムナードでは夜まで市民がくつろいでいます。あくせく、ギスギスしたところが感じられない、温和な感じのする街です。


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