プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

先住民文化とアウトドアカルチャー

2024-09-02 19:53:00 | アート・文化


 
 先住民文化を特集した雑誌を最近よく見るが、目についたらとりあえず買う。

 先住民文化の良さ、面白さはなんといっても、その土地その場所その季節に特徴的な風、波、花の香り、川のせせらぎ、うねりの怒涛などに固有の名前がついていて、そこに物語性や音楽的ヴァイブスが込められているところ。

 ぼくらがカヤックという北方系先住民の小舟に乗るのも、要はそういう世界観にリアルに触れたいから。自然の現場では、下手して状況判断をミスったら生き死に関わる事態におちいる可能性もある。そんな中で目や耳や鼻や皮膚を研ぎ澄ませて花鳥風月の音楽的調和点を結びつつ、美しいラインを描くこと。そこから見えてくるものを探り、それを何がしかの形で表現すること。

 それはカヤックのみならず、これからのアウトドアカルチャー全般が目指すべき、一つの方向性だといえるだろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

先住民の現代アート

2024-06-20 17:49:00 | アート・文化



 おもろそうなので買ってみた。
 最新は太古の中にあり。

 海や自然に対して最も敏感なアクティビティ、カヤッキングを通じて得た自然感覚をどのように表現、表出するかということは長年考えているテーマで、その流れから先住民文化に関する興味もつきない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講演

2024-06-20 17:40:00 | アート・文化



 ちょっと前の話ですが、和歌山県青少年(補導、相談)センター連絡協議会研修大会という会に招いていただき、警察、行政、教育関係者の皆さんの前で「希望としての自然文化、環太平洋カヌー文化圏という視点」という題目で講演させていただきました。

 これからの時代に大事なこと、あるいは面白いことをお伝えするために、今後できるだけ呼ばれたらどこでも行ける範囲で行きたいと思います。機材がなくてもその場合、こちらでマイプロジェクター、マイスクリーンを持って参上します。よかったらお声かけください。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自然との調和とは?

2023-12-31 13:58:00 | アート・文化





















 12月初旬、台湾南部、パイワン族の住む山の中腹の小さな町・三地門。
 家々やストリートはもちろん、役場やポリボックス、コンビニに到るまで町全体がトライバル柄&緑で統一され、それが周囲の山々や川の景観と調和していて、いい。
 ヘビ、トンボ、シカなど生き物をモチーフにした柄が多いが、「蛾」までオシャレにするところに、センスを感じる。
 だって蛾やで・・・、ガ。

 日常生活の全体で表現する、自然に対する敬意と祈りの精神の体現って感じかな。そういうのはとてもよく分かるし、響く。

 虫が気持ち悪いといってジャポニカ学習帳の昆虫写真にまでクレームを付けて廃止させる虫フォビアと自然破壊の病理がリンクする、どこかの国も見習いたいセンス。
 スローガンや取って付けた作為ではなく。人間の内面から湧き上がる、町と自然景観の調和の姿には、未来の風を感じる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お久しぶりです。

2023-12-31 11:03:00 | アート・文化















 ごめんなさい。
 すっかりブログの更新を怠っていました。インスタ等のSNSは頻繁に更新したのですが、そちらにかまけてこちらがお留守になっておりました。しかしSNSはあくまでも主体はプラットフォームの運営会社であり、基本的にフォロワーや友達登録者しか閲覧しない。一方、ブログは発信者自身が主体であり、全ての人に開かれた媒体。一見リアクションが分かりやすいSNSに行ってしまいがちだけど、やはりブログは大事にしなきゃなと反省。新年からはできるだけきちんとやっていきます。

 おかげさまで今年も無事、無事故でツアー業務を終えることができ、ホッとしています。アイランドストリームにお越し頂いた皆様には、心より感謝を申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いします。

 写真は、先日訪れた台湾南東沖にある蘭嶼島(ランユウトウ)のもの。太古から続く漁撈生活を営む原住民のタオ族が使う舟が、チヌリクランと呼ばれるカヌー。
 実は台湾とはポリネシア、メラネシア、ミクロネシアに広がる環太平洋の人々が約6000年前に最初に船出したルーツの場所だと言われるが、その直系の子孫が台湾原住民。

 ここんところ、環太平洋カヌー文化の過去を知り、そこから未来への道筋を探究することというのが、ぼくの一つの大きなテーマとなっています。
 紀州も環太平洋の海洋文化圏だから。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソングライン

2021-02-20 00:45:00 | アート・文化



第三作目の書き下ろし著書「ソングライン」(仮題)の第一稿を何とか書き上げた。と言っても完成を100点とするとまだ21点くらい。これからノミとカンナでじっくり仕上げていく。
 紀伊半島各地の自然場所や聖地を、「歌」「音楽」「和歌」でシンクロさせ、DJのように数珠つなぎでつないでつないでつなげてゆき、見えてくるその先は? という内容。前二作で探求したテーマをより深めてゆくお話。

 日本は明治から戦後にかけて今に至るまでことごとく自然を破壊してきた国だけど、もう別の道を行かないとヤバイだろう、という危機感から書いていますが、真正面から切り込むとスローガンみたいになってしまうので、それより音楽という「美」で整えていきつつ、あくまで作品として新たなる自然文化のあり方の道を探っています。
 まだここに書くのもあれだけど、マイペースでやってると終わらんので、己にプレッシャーをかけつつ、年末か来年頭には刊行できるようにと。

 なお、昨年末に出た新刊「黒潮ストリート」、こちらともつながっているので、よろしくお願いします。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大航海を応援しよう

2019-12-06 15:26:02 | アート・文化

 古代の葦船「EXPEDITION AMANA(エクスペディション アマナ)」で2021年、アメリカ西海岸から4,000km離れたハワイ諸島へと航海を目指す石川仁さんを、クラウドファンディングで応援しよう。

 仁さんは2,3年前に一度うちのお店にも来てもらったことがあって葦船の興味深い話を色々と伺ったのですが、葦船とは極めて自然とのつながりが強い船だと感じました。特に印象に残ったのは、一本一本の葦の中にいろんな微生物が生息しているのだけれど、砂漠のように茫漠たる大洋をゆく航海が深まってくるにつれて、それら微生物たちとも一緒に旅をしている、生きとし生けるものみな同じ仲間として運命を共にし、この惑星を航行しているという実感が真に迫ってくるという話でした。これはすごいなと思いました。それはそのままバックミンスター・フラーのいう「宇宙船地球号」みたいなものの縮図で、葦船の航海とは、究極の共生思想かもしれないなと、そのとき思った次第でした。

 この閉塞して生きずらくなっている日本において、海文化こそ、ひとつの大きな希望だとぼくは思っています。 
 だけどそれは自分たちで「作って」いかなければ、もはや、存在しない。
 近現代で、日本古来の海文化もあらかた消えてしまった。
 だけど考え方を変えると逆に、新たに「作っていく」面白さがある。
 老若男女・年齢職業関係なく「真剣」に「作る」という対象物があるというのが、面白いんだ。そして海はいついかなるときも「本物」だから、ゆえになにがしか真摯に海に関わる、携わるということで、それがそのまま本物志向のクリエイトということになる。

 そんな中でも石川仁さんのこの葦船での大航海は、最先端を行くものとなるだろう。
 なぜなら葦船という、最古の道具を使うわけだから。
 最も古いものが最も新しい、なぜならそこがすべての創始点だから。

 仁さんの葦船に一緒に乗り込んで、一緒に航海してみたい気持ちにかられます。もちろんそれは無理な話ですが、まずはサポーターとして同じ感情、感覚を共有しながら、その行方を見守っていきたいと思います。
 微々たる支えかもしれませんが、葦の中の微生物のように一緒に航海する気持ちを楽しみたいと思います。
 よろしければ皆さんもぜひサポートしてください。
 それはただの支援ではなく、クリエイティブな共有となるに違いないでしょう。
 https://readyfor.jp/projects/expedition-amana


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本が入荷しました

2019-11-10 21:41:00 | アート・文化










 
 やっと本が入荷しました
 拙著「インスピレーションは波間から」(〜自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行)
 本屋では13日発売ですが、アイランドストリーム店舗では既に購入できます。

 今年1月に完成していた原稿、そこから出版社探したり何やらかんやら、本だすのにこれほど時間かかるとは思わなかった。だけど誰に頼まれたわけでもなく好き勝手書いた本としては早いリリースなのかもしれない。

 来たるべき新しい海文化を祈願して書いた作品。是非皆さん買って読んでください。なお、内容紹介などはアマゾンページをご参照ください。もちろんアマゾン及び全国の書店でも購入できます。
https://www.amazon.co.jp/dp/4839701768/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出雲の神在祭を取材

2019-11-08 12:17:00 | アート・文化



















 出雲の神在祭にやってきた。次作「黒潮ストリートの知恵」の取材として。 

 琉球とか南方から対馬暖流に乗って渡ってきたセグロウミヘビというウミヘビが夏場この辺りで過ごすが、今ぐらいの時期から北寄りの季節風が本格化し、北を流れるリマン寒流からの冷たい水が接岸してくることによってセグロウミヘビはこごえ死に、浜にうちあげられる。そのセグロウミヘビが死んで龍蛇神となり、ガイドとなって全国の神々を迎えるのが神在祭。  

 11月は神無月というが、それは全国の神々が総出で出雲に参るからそう言われる。逆に出雲では神在月という。その神々は海からやってきて浜に上がって出雲大社に歩いて向かうのだが、その案内役がセグロウミヘビになるというわけ。  

 要するに丁度南方系と北方系の自然のエッセンスがこの時期この場所で合わさるという自然信仰が土台にある儀式だが、南方系とは琉球、台湾、フィリピン、東南アジア、インドネシア、ニューギニアなどオセアニア世界にもグラデーションでつながっていく筋があり、一方北方系とはサハリン、千島列島、朝鮮、中国、アリューシャン、ロシア沿海州、アラスカへとグラデーションで繋がっていく筋がある。その接点がこの時期この場所っていうこと。それを祭ろうとした古代人の自然観察眼は凄い。  

 要は北方系も南方系も倭人も隼人も蝦夷もアイヌもメラネシアンもコロポックルもタオ族も漢族もジャパ二もコリアンもアボリジニもチャモロ人もキリスト教徒もイスラム教徒も仏教徒もヒンズー教徒もみんな争わず仲良くやろうや、そして何より自然を大切に、という隠された意味があるのがこの神在祭である、というのがぼくの解釈。あるいは21世紀のグローバル化したこの時代そう考えるべきなんじゃないかというのがぼくの意見。
 そう考えると、セグロウミヘビがホスト役になるという事にも合点がいく。 
 まさにヤポネシアン的な思考法。  

 ということで日御碕あたりから祭りの行われる稲佐浜あたりまでシーカヤッキンク。昼飯に浜に上がり、セグロウミヘビが打ちあがってないかいな、と浜を歩いてみると、セグロウミヘビはいなかったが代わりにウミガメの死骸が打ちあがっていた。  同じく神話的なシンボル。南方から黒潮に乗ってやってきたやつ。 
 凄いなと思っているとどこかで誰かが吹くホラガイの音がきこえてきた。   
 水平線のキラキラする光の乱舞が美しい神々の舞のように見えてきた。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本の発売日が11月13日に決まりました

2019-11-02 23:01:34 | アート・文化

 

 著書「インスピレーションは波間から 
 ~自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行~」の発売が11月13日となりました。

 13日に全国書店で発売されますが、
 アマゾンには既にページがアップされており、
 内容紹介も記載されていますので、どうぞご覧ください。
 また先行予約していただければ幸いです。
 https://www.amazon.co.jp/dp/4839701768/

 なお表紙写真の下の部分はオビがくるのですが、
 現段階では外した状態で載せています。
 ちなみにオビ文やコピーなどは下記のようになります。

・関野吉晴氏(「グレートジャーニー」の探検家)
〔オビ推薦文〕より抜粋
……カヤックと一体化した人魚(著者)の身体は、生態系に溶け込み、野生の感性・理性・霊性を使って、独自の自然観・世界観を紡ぎ出していく。海やカヤックに関心はなくても、十分読みごたえがあり、たくさんの人に読んでもらいたい素敵な本です。

・鎌田東二氏 (宗教哲学者・京都大学名誉教授) 
〔解説〕より抜粋
……カヤックの装着と操行に魅せられた著者は、<身体感覚を総動員することによってこの「水の惑星」と深く対話し、進むべき道を導きだしていく叡智>を探っていく。このとき、カヤックはかぎりなく音楽に近づく。それはもちろんつねに海の波音と共にあるものだが、もっと深く地球の歌を、この水の惑星の歌を呼び込んでくる。

〔裏オビのキャッチコピー〕
 水の惑星の音色を聴きに行った――黒潮の長流に漕ぎ出してみると、太平洋はそのたゆたいの深みから、太古の人類の知恵とこの星に可能な未来を、五感にじかに語りかけてくるようだった。

 ということですが、上記アマゾンのサイトで購入できるほか、できましたら書店で予約、購入していただけるとなおありがたいです。またカフェやショップをされている方は、本書を仕入れて販売していただけるとさらにありがたいです。それから、ぼくを呼んでいただければ貴店で販促スライドショー&トークイベントを開くことも可能です。

 ●ショップやカフェ等のお店様が、出版社から直接本書を仕入れる場合の取引条件
 ・注文部数に関わらず、定価の20%引き(1584円)で卸します。
 ・1回の注文が5冊未満の場合は、送料は着払いです。5冊以上は元払い。
 ・配送は宅急便を使います。

 ☆めるくまーる社
 郵便番号101-0051 東京都千代田区 神田神保町1-11 信ビルディング4F
 03-3518-2003
 info@merkmal.biz

 よろしくお願いいたします。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海感覚のインスピレーション

2018-12-06 11:21:03 | アート・文化

Alfa Mist - Antiphon - full album (2017)

 最近よく聴くアルバム。

 海や自然とより深く繋がるための「物理的ツール」としてカヤックやSUPなどがありますが、「精神的ツール」はぼくは音楽だなと昔から思っていて、過去に死ぬほど色々と聴いてきましたが、最近のヒップホップ的なジャズ、またはジャズ的なヒップホップには、なかなか面白いのが多いですね。
 その中でも特にいいなと思ってよく聴いてるのが、これ。

 このブログでも昔からよく言っていますが、海の波やうねりって音楽的なリズムやグルーヴみたいなものだし、またジャズやヒップホップの「グルーヴ感」ってやつもまた、海の波やうねりみたいなもの。両者はとても相性が良くて、例えばシーカヤックを漕いだ後すぐの体で音楽を聴くと、より身に染みてくるものがある。
 
体に刻まれた海感覚と、演奏のリズムやグルーヴとが呼応し、調和するってわけ。
 
 というわけで、ジャズそのものもヒップホップそのものもよく聴いてきたけれど、なぜかジャズとヒップホップを掛け合わせたやつにはあんまりいいと思うモノがほとんどなかった。昔、そのタイプの音楽で「アシッド・ジャズ」と言われるものもあったけど、同様にそれほどいいなと思わなかった。
 その理由が最近分かった。
 ドラムが機械的な打ち込みのやつばかりだったから。

 それが分かったのは、最近、きちんと一級のドラマーが叩いているジャズ+ヒップホップが増えきたのだけれど、リズムに人力のゆらぎが入るととても自然な感じで、ジャズの繊細さも浮き出てきて凄くよくなるということに気づいたからだった。
 みんな思ってたんだろうな。
 ドラムマシーンって、なんか貧しいなと。
 そんな批評性も感じる。

 だから最近、ヒップホップ的なジャズや、ジャズ的なヒップホップをよく聴いてるんだけど、
 その中でも特にいいのがこれ。
 自分の海感覚にもよいインスピレーションを与えてくれる。
 特にドラム、聴いてみて下さい。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

毎日新聞での連載記事 今回は白崎海岸

2017-11-05 17:29:05 | アート・文化

 

 「シーカヤックで再発見 紀州の海」というテーマで毎月一回、毎日新聞で連載させてもらっている記事ですが、今回で5回目となり、11月2日に掲載していただきました。湯浅湾最南端の「白崎海岸」についてのものです。新聞記事ってやっぱり、淡々とした文章が求められて苦手だけど、まあこんなもんでしょう。
 どうぞ写真をクリック&ズームしてご覧下さい。

 なお、ズームできない方のために元原稿を下に記しておきますので、もしよろしければこちらもご拝読ください。

「特異さ漂う岬 太古の面影、時空越えて」

 海の世界は、岬のあちら側とこちら側とで、大きく変わる。

 風や波、潮はもちろん、生態系、海水の色彩、航行の安全性や難易度、景色や空気感までもが変わる。シーカヤックの荷室にテント、寝袋、食料を積み込み数日以上の海旅に出る際にも、岬が大きなターニングポイントとなる。ひとつの海域を過ぎ去るちょっとした感傷と安堵感、そして新しい世界に突入する期待と不安とが心の中で交錯する、旅情がひときわ掻き立てられる特別な場所なのだ。

 中でも湯浅湾南端の「白崎海岸」は、岬の持つ特異感が際立っている。湾内から外海へ、いざ漕ぎ出でようと気持ちを引き締め直し、紀伊水道の向こうに霞んで見える対岸の四国や淡路島の方角に目を向ける。凪ならば徳島まで6時間、淡路島まで5時間で行ける距離だ。船首を動かし、コンパスが南西を指し示すと、複雑に入り組んだ南徳島の海岸線が脳裏に描き出される。北西方向に向くと、鳴門の渦潮やさらに彼方に展開される瀬戸内海の島々の形が心に浮かび上がってくる。

 少し角度を変えただけで想い描かれる世界が大きく変わる。シーカヤックで使用する「デッキコンパス」は想像力を喚起する道具なのだ。

 そしてコンパスが南を指すと、黒潮の世界である。紀伊半島では岬一つ南に向かうごとに、グラデーションのように黒潮の影響が濃くなる。美浜町の日ノ御碕、印南町の切目崎、白浜町の市江崎が大きな境目となる岬であるが、ここ白崎はその起点だ。そして最南端の潮岬まで来ると黒潮はダイレクトにぶち当たり、亜熱帯の海になる。ぼくは熱帯の海より、まるで絶妙な絵筆のタッチのように南国風情の濃淡が感じられる紀伊半島の海が好きだ。そしてそれを肌身でリアルに捉えられるシーカヤックは素晴らしい乗り物だと思う。

 白崎の岬としての特異性は、航海の起点という意味だけではなく、空と海の青をよりシャープに引き立て異彩を放つ、珍しい白亜の石灰岩が担っていることはもちろん言うまでもない。25千年前に赤道付近にあったものがプレート移動によって今ここにあるという不思議。その地球のダイナミズムは、リゾート化された陸からよりも、人工物が目に入らない海からの視点の方が、より心に響く。シーカヤック特有の、水面すれすれの目線でそばに近づくと、まるで時空を越えてやってきた太古の巨大生物のような存在に思えてくるのだ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4億年の歳月が刻む洞窟、黒島

2017-10-20 16:56:54 | アート・文化

 毎日新聞にて「シーカヤックで再発見 紀州の海」というテーマで月イチ連載中の最新記事は先日5日に掲載。

 今回は湯浅湾の中でもひときわトリップ感の強い秘境「黒島」について書いてますが、よろしければ写真をクリックしてズームしてご覧下さい。
 
 なお、毎回記事の写真を載せてますが、いつも読みにくいと言われますので、元原稿も合わせて下記にコピペして張っておきます。

 【4億年の歳月が刻む洞窟、黒島】
 由良町の衣奈海岸沖約1.7キロに威風堂々とそびえ立つ無人島・黒島には、風波によって削りこまれた海食洞(洞窟)や水路が無数と思えるほど数多く存在する。貫通した穴、袋小路の空洞、予期せぬ場所から抜け出せる迷路、差し込む光が神秘的に内部の海水を照らす通路などなど、おそらく100以上はあるだろう。他の船では入ることのできない幾多の洞窟や水路を巡ることは、シーカヤックならではの特権的な楽しみだ。
 その中に身を置く感覚は独特で、岩壁の神々しい重厚感が心身に響く。
 百万や千万の年数では、これくらいの洞窟は形成されない。1億年程度でもまだまだ「青二才」だ。ここは4億年前の地質であり、気の遠くなる年月を経た風格が、シーカヤックという敏感な乗り物を通すことによって、我が身にずっしりのしかかってくる。
 シーカヤッキングで出くわす、ふと、地球の鼓動を感じる瞬間。それをぼくは「プラネット感覚」と呼ぶ。
 ここは悠久の地球時間が身体の芯を通り抜けてゆくひとときが味わえる無人島だ。
 干潮時に一カ所だけ顔を出す浜がある。そこから素潜りするとルリスズメダイ等の熱帯魚を湯浅湾内の他所よりも多く見ることができる。黒潮の影響が強い場所なのだ。島全体が南方系植物群の北限地となっていることからも、それは分かる。「ハカマカズラ」という、実が数珠に使われる亜熱帯植物も生育する。博物学者の南方熊楠は生前、その北限はここから約50キロ南の田辺湾・神島だと思っていたが、後年の調査により黒島が北限だと判明した。琉球諸島や鹿児島県の屋久島、佐多岬、高知県の足摺岬など黒潮の「沿線」に生える「アコウ」の森も北限に近い。その他珍しい亜熱帯系の植物もここには多数存在している。
 一方、北方系植物の南限でもある。また瀬戸内海沿岸や西日本に分布する植物の東限だともいわれる。生態系的に「クロスロード」に位置するそのユニークさは、地形的複雑さと相まって、感覚的回路をも交錯させる。五感を研ぎ澄ませシーカヤックで巡ったときの「トリップ感」がとりわけ深い島なのだ。もしどこかの観光立国ならば、国を挙げての景勝地に指定されるかもしれない。それが人知れずひっそりと存在するところに、紀州の海岸線の奥深さがある。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

毎日新聞での連載記事 湯浅湾・鷹島

2017-10-09 18:31:55 | アート・文化

 毎日新聞にて「シーカヤックで再発見 紀州の海」というテーマで月イチ連載中の最新記事は先日10月5日に(「湯浅湾・黒島」について)、掲載していただきましたが、ふと考えると前回9月7日に掲載の「湯浅湾・鷹島」の記事をこちらに載せるのを忘れていましたので先にその記事の写真を載せておきます(黒島の記事は近日中にアップします)。ぜひ、写真クリックしてさらにズームしてご覧下さい。

 と、毎回記事の写真を載せてますが、いつも読みにくいと言われますので、元原稿も合わせて下記にコピペして張っておきます。面白いのでぜひぜひお読み下さい&よろしければフェイスブックなどでシェアしてください。 
 
 【古代航海の「ハブ港」 クジラのような形 無人島・鷹島】
 南北両方向から見ると漫画のクジラのような形をした無人島・鷹島には美しい浜が2カ所ある。いずれも広川河口沖の防波堤完成以来、山からの砂の供給が減少し、潮流が変わった影響もあって、痩せたゴロタ石の浜になっている。漂着ゴミも多い。海岸線を自在にゆくシーカヤッカーにとって全国どこでも出くわす現象だが、この島では特にそれが目立つ。
 南東側の弓なりに広がる入江には現在、海上釣り堀が設置されている。波風を遮断する地形で、周囲がどんなに荒れても、この入江だけは穏やかだからだ。それは古代から変わることなく、縄文時代前期の50006000年前には、集落が存在した。住人たちはここを拠点に南は伊豆諸島や八丈島、北は東北地方あたりにまで長距離航海し交易する「海洋民」だったようだ。この島でのみ作られた「鷹島式土器」(和歌山市の「風土記の丘」資料館に展示)が、全国各地で単体として出土するのがその証拠である。
 その際に使われたのが、シーカヤックと同様に手漕ぎの「丸木舟」だった。もちろん当時はコンパスも海図もない。五感を総動員して海と対話し、波風を読んで日本列島を縦横無尽に渡っていったのだ。
 信じ難いが、荒唐無稽な話ではない。私自身、2000年~2001年にシーカヤックで湯浅湾から太平洋を北上し、津軽海峡を渡って北海道一周、そして日本海を南下して九州、四国の外周を回りまた湯浅湾に戻るという、日本一周航海をした。
 長い人類の歴史と共に寄り添ってきたカヌー、カヤックは、理にかなった完成度の高い乗り物で、それくらいの航海もできるのである。
 空からの目線で見ると、鷹島から南下するとすぐ太平洋に出られることがわかる、北上すれば瀬戸内海を経由して、日本海や東シナ海にまで足を伸ばせる。長距離航海をする交易の民にとってこの島は、全国に開けた「ハブ港」だったのではないだろうか。
 その後、サハリンにまで商路を開いた豪商や、オーストラリアやハワイ、アメリカ大陸にまで生活圏を広げた漁民に代表されるように、紀州の海洋民は地球規模のスケール感を持って国内外へと繰り出していった。和歌山は、近世まで日本の海文化の中心地だったのだ。鷹島縄文人はその始祖といえるだろう。
 「熊野古道」に比べると忘れられた存在の「熊野海道」だか、そこにはスケール大きく、豊かな文化が眠っている。世の中が閉塞感に覆われている昨今、今一度そこに目を向けてみる価値がある。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

毎日新聞で連載決定

2017-07-14 11:50:04 | アート・文化

 「シーカヤックで再発見 紀伊半島の海」というテーマで、毎日新聞の和歌山版で月イチで記事を連載させて頂くことになりました。この写真は先日7月6日付の第一発目のやつです。
 今後ちょっとぶっ飛んだアバンギャルドなことも書こうと思ってるけれど、新聞的に果たしてどこまで許されるのか、ちょっと楽しみだ。
 今回はひとまず静かな滑り出し。よかったら写真クリック、拡大してお読み下さい。 まあ、このブログの過去記事とか読んでいただいている方には、おなじみの内容ではありますが・・・。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする