毎日新聞連載コラム「シーカヤックで地球再発見」、今回はタイのクラビです。よろしければどうぞ写真クリック・拡大してお読みください。
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対馬の白嶽、龍良山、御岳と立て続けに三つの山に登った。そのうち、南部にある龍良山は国内でも最大級の、縄文古来の照葉樹に覆われた極めて希少価値の高い原生林の山だが、それにまつわる話が面白い。
どこからか小舟でこの地に流されてきたシャーマンの女性が太陽光線によって受精し、産んだ子が天道法師で、その子の住処がこの山だったという。そこは誰も入ることが許されず、「オソロシドコロ」と呼ばれるイカツイ名の祭祀場所もあったりするゆえ、犯罪者が入りこんでも追跡できなかった。そういう森だったからこそ手付かずで残された。
一方北部にある御岳も聖なる山で、モミの木の原生林にはキタタキという50センチくらいになる固有のキツツキが生息していたが、この山は禁足地ではないゆえ、ジャンジャン人に荒らされ、キタタキは昭和初期に絶滅した。
天道法師とキタタキ、山の精という意味で通じてるように思う。前者は禁足地だったおかげで稀少な照葉樹の原生林として残されたが、そうではなかった後者の象徴キタタキは滅んでしまった。
これらの話からわかるのは、龍良山のオソロシドコロというのは、本当はそのイカツサとは真逆の、清らかなるもの、美しいもの、夢、ロマンディシズムなどのことであり、そういうものは得てしてすぐに踏みにじられ、壊されてしまうものなので、それを守るための鎧としてイカツイ命名にしたのだという気が、ぼくにはしてならなかった。
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和多都美神社を海から詣で、対馬一周完了。
山の化身ヒコホホデミと海の化身トヨタマビメが結婚した場所。そしてその孫が初代神武天皇であるというのが日本神話。ここに今の時代に響く、深い意味が隠されてると思う。
森は海の恋人と言われるように、海と山とのつながりとは、オオワシもミジンコもバッタもクジラもマムシもタツノオトシゴも、すべてのものが有機的に絡み合ってハーモニーを奏でるエコシステムの象徴であるってことだけど、それがそもそもの日本的自然観の基本だとも言える。
この神話は今的に、そういう風に読める。
それを忘れて20世紀から21世紀にかけて水銀や放射能汚染水を垂れ流すという愚を繰り返すこの国はどこでどう逸れて行ったのか?
と、そういうことに触れるのが、他のアクティビティにはない、シーカヤッキングの真髄なんだと思う。ただのレジャーだけではなく。他のスポーツで、古事記とか参考にする奴はいないだろうし。
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対馬の空気感が妙にしっくりくるのは、やはり黒潮つながりだからかもしれないな。紀州と兄弟分みたいな。近い将来ここで環境学習and海旅ワークショップをやろう、不知火海とともに。
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対馬、素晴らしすぎる。無数の入江、島、断崖、洞窟、数えきれない誰もこない野生の浜、海神の祀られてる社など、地形的にもシーカヤッキングのために造られたもうたフィールドにしか思えない。世界的なシーカヤックの聖地となるべきと言っても大袈裟ではない場所。そしてやはり、ヤポネシアはすごいと思う。
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八代海を一周、水俣から出て水俣に戻ってきた。水俣周辺は山また山で、水際まで魚付き林が迫っていて、しかも海底からも湧き水が出てる。海水を舐めてみるとすごく甘い。山と海が分かちがたく繋がり、魚が育まれる子宮のような立地条件だとよくわかった。実際水俣沖でルアーを落とし込むとマゴチの5、60センチくらいのが入れ食いだった。
八代海はちょっと盲点だったけど、面白い海だ。15人しか住んでないフェリーも通わん島もあったし。カヤックトリップ講座と環境学習を兼ねて5日くらいのカヤック旅スクールをやるのにも適してそう。キャンプできる浜が少ないのがネックだけど。
ところで、このたびのCOP26でなんでブルーカーボンについて言わないのかな、と思う。海草類の二酸化炭素吸収量が地球上で最大であり、それをブルーカーボンというけど(グリーンカーボンの倍吸う)それの効果を考えるとき、水俣や八代海の海の豊かさの価値が再浮上してくる。水俣は近代化の過程で泣かされてきた地だけど、世の近代化も終わり、それが爛熟して退廃を迎えて久しい今、状況が一周して新しい意義を持ち始めているんじゃないだろうかと思う。
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先日のシーカヤックキャンプ講習中のツーリング。もちろん湯浅湾。誰も着眼しない、ガイドブックなんかにも載らないような場所に美しいスポットがあるのが日本の海岸線。
キャンプ中の写真は内容シークレットという事で。