プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

カヌー文化のルーツ

2023-12-31 13:51:00 | 黒潮文化の旅





















 12月初旬、台湾南東部の離島、蘭嶼(らんゆう)島へ。

 ポリネシア、メラネシア、ミクロネシアといった環太平洋の人々の大元のルーツは、台湾原住民が主を占めるというのが人類学上でも通説となっている。台湾あたりから5000年ほど前にカヌーで船出した人々が、何百世代のあいだに太平洋の島々に散らばっていったというわけだが、16部族が現存する台湾原住民の中で、今でも海に生きる民が、蘭嶼島のタオ族の人々。
 彼らが乗るカヌーがチヌリクラン。

 タオ族に生まれたシャマン・ラポガンという海洋作家がいる。この島の波音と潮風と雨粒に身をさらして、彼の作品「冷海深情」を精読するのが、この旅の一つの目的だった。
 あえて天気がよくない方がよかった。
 「厚い黒雲が島全体をすっぽり覆っていて、大海原は夏の、人を魅了する濃紺の眺めではなく、冷たさと寡黙さを感じさせる灰色だった。しかし、わたしは、この陰鬱な天気を最も愛していた」
 というフレーズが、
 「海は、生命があり、心がある、やさしい最高の恋人だ」というフレーズと呼応してポリリズムとなり、その鼓動が、波音とシンクロするように感じられるから。

 自ら素潜り漁をしながらタオ族の日常を描き、そこから先祖代々つたわる彼らの自然観が透かし見えてくるシャマンラポガンの作品は、今の時代にきわめて価値があると、改めて思った。

 また他所をあちこち見て回って、台湾原住民の若いアーティストたちのあいだで、環太平洋文化の繋がりに関して、またそこから派生する文化のクロスオーバーや、エコロジー思想や、精神性などについて、結構意識の高まりの気運があるように感じられた。
 今の地球に生きていて、まともに物事を考えるならば、それは当然のこと。


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水俣の海

2022-07-06 22:00:00 | 黒潮文化の旅



毎日新聞連載コラム「シーカヤックで地球再発見」、60回目の今回は不知火海の水俣です。意外と知られてないけど、水俣の海って本当に豊かなんですよ。縄文古来から続く海の恵みを日々ありがたく頂く幸せな暮らしの傍で、何十年も水銀汚染が続けられてきた果てに起こった、近代的価値観の皮肉の究極が水俣病だった。

 ぼくらシーカヤッカーにとっても水俣と福島は、「環太平洋カヌー文化圏」という観点からも、自分の見解を明確に持っておかなければならない事象だと思っていますが、そんなことに触れています。ご興味あればどうぞご一読くださいませ。


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龍良山

2021-11-23 22:58:00 | 黒潮文化の旅

















 対馬の白嶽、龍良山、御岳と立て続けに三つの山に登った。そのうち、南部にある龍良山は国内でも最大級の、縄文古来の照葉樹に覆われた極めて希少価値の高い原生林の山だが、それにまつわる話が面白い。
 どこからか小舟でこの地に流されてきたシャーマンの女性が太陽光線によって受精し、産んだ子が天道法師で、その子の住処がこの山だったという。そこは誰も入ることが許されず、「オソロシドコロ」と呼ばれるイカツイ名の祭祀場所もあったりするゆえ、犯罪者が入りこんでも追跡できなかった。そういう森だったからこそ手付かずで残された。

 一方北部にある御岳も聖なる山で、モミの木の原生林にはキタタキという50センチくらいになる固有のキツツキが生息していたが、この山は禁足地ではないゆえ、ジャンジャン人に荒らされ、キタタキは昭和初期に絶滅した。

 天道法師とキタタキ、山の精という意味で通じてるように思う。前者は禁足地だったおかげで稀少な照葉樹の原生林として残されたが、そうではなかった後者の象徴キタタキは滅んでしまった。

 これらの話からわかるのは、龍良山のオソロシドコロというのは、本当はそのイカツサとは真逆の、清らかなるもの、美しいもの、夢、ロマンディシズムなどのことであり、そういうものは得てしてすぐに踏みにじられ、壊されてしまうものなので、それを守るための鎧としてイカツイ命名にしたのだという気が、ぼくにはしてならなかった。


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海から詣でゴール

2021-11-23 10:09:00 | 黒潮文化の旅













 和多都美神社を海から詣で、対馬一周完了。
 山の化身ヒコホホデミと海の化身トヨタマビメが結婚した場所。そしてその孫が初代神武天皇であるというのが日本神話。ここに今の時代に響く、深い意味が隠されてると思う。

 森は海の恋人と言われるように、海と山とのつながりとは、オオワシもミジンコもバッタもクジラもマムシもタツノオトシゴも、すべてのものが有機的に絡み合ってハーモニーを奏でるエコシステムの象徴であるってことだけど、それがそもそもの日本的自然観の基本だとも言える。
 この神話は今的に、そういう風に読める。
 それを忘れて20世紀から21世紀にかけて水銀や放射能汚染水を垂れ流すという愚を繰り返すこの国はどこでどう逸れて行ったのか?  
 
 と、そういうことに触れるのが、他のアクティビティにはない、シーカヤッキングの真髄なんだと思う。ただのレジャーだけではなく。他のスポーツで、古事記とか参考にする奴はいないだろうし。

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対馬暖流

2021-11-18 21:49:00 | 黒潮文化の旅



対馬の空気感が妙にしっくりくるのは、やはり黒潮つながりだからかもしれないな。紀州と兄弟分みたいな。近い将来ここで環境学習and海旅ワークショップをやろう、不知火海とともに。


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対馬は最高

2021-11-18 19:37:00 | 黒潮文化の旅

















対馬、素晴らしすぎる。無数の入江、島、断崖、洞窟、数えきれない誰もこない野生の浜、海神の祀られてる社など、地形的にもシーカヤッキングのために造られたもうたフィールドにしか思えない。世界的なシーカヤックの聖地となるべきと言っても大袈裟ではない場所。そしてやはり、ヤポネシアはすごいと思う。

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対馬トリップ

2021-11-17 19:37:00 | 黒潮文化の旅
















島の周囲に130個もの島々がある島、対馬トリップ


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黒潮流域古来の植生

2021-01-06 00:02:00 | 黒潮文化の旅











三重県賀田の海辺にある飛鳥神社の社叢に生えてる木々は凄いと再発見。樹齢千年の楠を筆頭にホルトノキ、バクチノキ、ハマセンダンなど黒潮流域古来の植生が時空こえて真空パックされて残ってる。なかなかない場所。

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楽しみだ

2019-12-06 14:55:00 | 黒潮文化の旅







 琉球王国の聖地、セイファ御嶽近くの展望台から眺める朝の海。むこうにうっすら見えるのが久高島。御嶽から撮る写真を載せるのは気が引けるので違うところから撮っているが、やはりこの角度から見る沖縄の海には何か特別感がある。プラネット感覚がある。

 光がキラキラする海面と緩やかにカーブする水平線に目をこらすと、宇宙からみた青い宝石のような水の惑星のヴィジョンが浮かんでくる。

 鹿児島から島々を南下していく取材旅行も一つ終わった。黒潮文化の独創性というテーマで出雲、熊野、三陸、伊勢、平戸島、五島列島、甑島、錦江湾、奄美、加計呂麻、沖永良部、与論、沖縄本島と、ここ数年カヤッキング&トレッキングで旅してきたけれど、それを黒潮感覚でまとめあげるのが次作「黒潮ストリートの知恵」。それは先日リリースした「インスピレーションは波間から」より、もっとメッセージ性をはっきりさせたものになるけれど、どのように仕上がるか自分でも楽しみだ。

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沖縄のレジェンド

2019-12-06 14:48:00 | 黒潮文化の旅

















 黒潮ストリート旅のシメにショッキーことテラワークス、諸喜田さんに沖縄本島・嘉陽の海を案内して頂きました。

 1991年から沖縄でシーカヤックツアーを始められたこの世界のパイオニアであり、今も現役で毎日のように海にでているショッキーさん。シーカヤック&SUPを駆使して沖縄本島のみならず周辺のあらゆる島々を人力で旅し数知れない人たちに海の本当の魅力を案内してきたレジェンドであり生き字引のような人ですが、でもとても気さくに優しく接して頂きました。

 しかもなんと、先日刊行した拙著をすぐに買って読んでくださっていました。ありがとうございます。

 もうちょっと話をお聞きしたかったけど、また遠からずお会いできそうな気がしますので、これからもよろしくお願いします。また、沖縄に行く人はぜひ、テラワークスのツアーにどうぞ。




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190円では安すぎる

2019-12-06 14:37:00 | 黒潮文化の旅










 
 沖縄本島にある海洋文化館。
 環太平洋のカヌー文化圏の事柄が網羅されていて丸1日いても飽きない。
 おまけにプラネタリウムもあって、そこで宇宙の創世や沖縄の星座についての映像上映などがあり、1日では足りなくなってくる。
 これで190円は安すぎる。


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沖永良部島の鍾乳洞

2019-12-06 14:29:00 | 黒潮文化の旅
 






 沖永良部島の鍾乳洞。
 
 沖永良部島や与論島はサンゴが隆起してできた島ですが、隆起するときに地下に空洞ができる。そこに長年かけて水がしたたり落ちながらこんなやつを形成するわけです。
 
 特に沖永良部島にはこのような大規模の鍾乳洞があります。
 
 ぼくも知りませんでしたが、面白いものです。一つ一つ見ていると、まるでコブシメというイカが足を畳んで泳ぐ姿に見えてきました。

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黒潮の木

2019-12-05 23:30:00 | 黒潮文化の旅
 
 




 1枚目がガジュマル、2枚目、3枚目の写真がアコウの木だ。どちらもよく似たタイプだがガジュマルは熱帯〜亜熱帯系の植物で、アコウは亜熱帯〜温帯系の植物。琉球列島では南に行けば行くほどガジュマルが増える一方、ある程度北上するとガジュマルが消え、アコウだけになる。そしてぼくの住む和歌山湯浅湾はアコウ分布の北限だ。それらの植生によって、黒潮の濃淡具合が連想できて面白い。
 

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琉球弧の黒潮文化

2019-12-05 22:55:17 | 黒潮文化の旅

 鹿児島以南の島々のお面は南に行けば行くほどパプアニューギニアあたりのメラネシア的要素があり、一方北のものは大和や大陸系の影響が強まっていたりして、その南北の文化の波のせめぎ合い、重なり合いが垣間見れて面白い。その中で最も北に位置する甑島なんかはもろにナマハゲとからさらに北方の要素も入ってる。沖縄のそばにある与論島ではあえて大和と琉球の要素を掛け合わせた十五夜踊りってのが習俗化していて、島の指向性が表出されている。日本は思っている以上に多様で開けた世界だがそれは琉球弧の黒潮文化が屋台骨となっている。

 黒潮の道を通すと、アジアや太平洋地域の文化が一繋がりのものに見えてきて、面白い。
 その中にある日本列島。
 島々の連なりとしてみると、その重層性がよくわかる。
 ヤポネシアというやつですね。


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黒潮ブルーの色たち

2019-12-05 22:35:02 | 黒潮文化の旅

 

 黒潮ブルーの色合い。

 太陽光線の入り方によってこんなに変わる。

 上から
 ・徳之島沖
 ・沖永良部島
 ・奄美大島
 ・出雲 日御碕

 どの色の力強く、美しい。

 


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