Islander Works

書いて、読んで、人生は続く。大島健夫のブログ

旅の途中

2015-04-19 22:21:29 | 出たもの
今年1月の「進撃の詩人」で池上宣久さんと共演した際のことは忘れられない。

この10年ほど、「詩のボクシング」に関わってきた人たちの間では、池上さんは知らぬ者のない有名人である。しかし、知る人ぞ知るという言葉は、裏を返せば知らない人は誰も知らないということでもある。あの日、渋谷Last Waltzの客席に集まっていた観客のほとんどは、明らかに池上さんを知らなかった。詩のボクシングのことも知らなかった。

ステージに上がった池上さんが朗読を始める。おそらくはラッパーや若い詩人を目当てにやってきた観客たちは、この50歳を過ぎた風采の上がらないおっさんのステージに集中せず、ざわざわと私語を交わしていたりした。こういった光景というのは様々なバリエーションであちこちで見る光景ではあるが、いつ遭遇してもちょっぴり胸が痛むものだ。そんな中、池上さんは普段通りのスタイルの朗読を、悲壮にさえ感じる熱量とともに展開した。そしてある時点から、客席の空気が変わり始めた。私語がひとつ、またひとつとやんでいき、会場の人々は彼の朗読に惹きつけられ始めたのだ。そして最後にはその場にいる誰もが腹の底から笑い、拍手を送っていた。一人の表現者が、自力で小さな世間を引っくり返し、自分自身をその時その場で証明する。それは感動的な光景であり、同時に、詩のボクシングから朗読を始めた私にとっては胸のすく光景でもあった。本当に嬉しかった。なぜなら私は、池上さんこそがミスター詩のボクシングだと思っているからだ。

今回、千葉詩亭に来場してくださった方々の中には、池上さんを目当てに遠くからやってきた方もかなりいた。だが同時に、常連さんを含む地元の人の多くは池上さんを見たこともなく、詩のボクシングを見たこともなかった。そしてこの夜もまた、池上さんはそういった人々を声をあげて笑わせ、おそらくは「いいものを見た」と「変なものを見た」の間のどこかの着地点に導いてみせた。



詩のボクシングでの長いキャリアをひとつひとつ丁寧に振り返るように数々の作品を朗読し、そしてまさかの新作披露まで。これだけのことが行われれば、ハッピーな夜にならないわけがない、という30分間だった。

オープンマイクに参加してくださったのは、登場順に、

カマコさん
OOMさん
さとうさん
きむらやすしさん
川島むーさん
川崎雄司さん
渡ひろこさん
あしゅりんさん
さいとうゆうすけさん

という皆様。初参戦の方も多く、バラエティ豊かな声と言葉の世界が展開された。

オープニングはいつもの通り山口勲が、ラストは私が務めさせて頂いた。

さて、千葉詩亭は、これまで偶数月の第三土曜に開催して参りましたが、TREASURE RIVER BOOK CAFEとの協議の結果、次々回、つまり8月の回から、偶数月の第三日曜日の開催に変ることとなりました。

「千葉で朗読イベントを継続していくこと、また、そのことがどのような意味を持つのか」をより一層、深く考え、関係者一同、今後も精一杯、努力してゆく所存です。

千葉詩亭は打ち上げ花火でも、焼き畑農業でもありません。

これからもずっと、千葉で続きます。千葉で千葉詩亭を続けてゆくことが、私にとっては長い長い旅のようなものです。皆様と旅の途中の時間を共有することができて、本当に嬉しく思い、また心から感謝しています。

ありがとうございます。

また、近いうちに!

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