漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「㱿カク」 <から・そとがわ> と 「殻カク」「穀コク」

2022年02月05日 | 漢字の音符
㱿 カク・から  殳部    

     上段が㱿カク、下段が南ナン
 苗族銅鼓

銅鼓の裏側は空洞になっている
解字 㱿カクの甲骨文は、中国南部に住む苗ミャオ族が用いる釣鐘式の楽器である銅鼓をバチで打っている形。金文はなく、篆文および現代字は形が変化して㱿となった。ところで、㱿カクの左辺は、下段「南」の甲骨文第一字と同じ形である。すなわち、南ナンは苗族の銅鼓の象形であり、これをバチで打つ形が㱿カクなのである。しかし㱿は打つ意よりも、外側に堅い殻(から)がある意に転用された。それは、楽器の銅鼓の形が中空で、裏を除くと外側が堅い銅で覆われているからである。
 一方、古代文字の図・下段の銅鼓の形は異なった変化をし、現代字で南となった。意味の南(みなみ)は、銅鼓を使う苗族が甲骨文字を使っていた殷インの南方に居住するからである。
意味 (1)うつ。(2)から。(=殻)。

イメージ 
 「から・そとがわ」
(殻・穀・愨・榖・鷇)
  銅鼓は中が「中空」(轂・觳)      
音の変化  カク:殻・愨・觳  コク:穀・榖・轂・鷇 

から・そとがわ
[殼] カク・から  殳部    
解字 旧字はで「几+㱿(から)」の会意形声。㱿カクは、銅鼓を打つ形、そこに几(=机・台座)をつけたカクは、銅鼓を台座に据えた形であり、㱿は異体字で同字。新字体は、旧字の殼⇒殻になった(殼の左辺の一がとれる)。
意味 から(殻)。物の表面をおおっている殻。穀物などの表面をおおっている殻。「貝殻かいがら」「卵殻ランカク」(卵のから)「外殻ガイカク」(外側にあるから)「地殻チカク」(地球の最も外の層)
覚え方 さむらい()は()つくえ()るまた()でカクになる。
[穀] コク  禾部
解字 「禾(こくもつ)+㱿カク(から)」 の会意形声。から(殻)をもっている禾(こくもつ)の形で、脱穀(穀粒から殻を取り去る)する前の穀物を表す。新字体は旧字の左辺の一がとれる。
意味 こくもつ(穀物)。米・麦・黍・粟など、殻に覆われている穀物。「五穀ゴコク」(人が常食とする五種類の穀物。米・麦・粟あわ・黍きび・稗ひえ・豆など、諸説があり一定していない)「穀倉コクソウ」(穀物を入れる倉。また、穀物の主要産地)「穀雨コクウ」(二十四節気の一つ、太陽暦の4月21日頃。穀物を潤し育てる雨の意)
覚え方 さむらい()は()のぎ()るまた()で
 カク・つつしむ・まこと  心部
解字 「心(こころ)+㱿カク(から)」 の会意形声。心を殻でつつみ冒険をせず、つつしむこと。堅実で誠実な態度をいう。
意味 (1)まこと(愨)。義理がたく誠実なこと。「誠愨セイカク」(まこと。誠実)「愨士カクシ」(誠実な士)(2)つつしむ(愨む)。堅実な態度でものごとをおこなう。
 コク・こうぞ  木部
解字 「木(き)+㱿カク(そとがわ=樹皮)」 の会意形声。木の外側の形で樹皮の意。樹皮から紙をつくる木である榖(こうぞ)をいう。
意味 こうぞ(榖)。楮とも書く。クワ科の落葉低木。樹皮は和紙の原料となる。「榖皮紙コクヒシ」(こうぞ製の紙)
 コク・ひな  鳥部
解字 「鳥(とり)+㱿カク(から)」 の会意形声。殻をつついて生まれたばかりのひなをいう。
意味 ひな()。かえろうとするひな。「鷇食コクショク」(ひなが母鳥の捕ってきたエサを食べる。鳥のひなのように母の恵みを受ける)「鷇卵コクラン」(ひながかえる)

中空
 コク・こしき  車部
①車輪中央の轂コク(ハブ)。
②切断した轂コク(ハブ)。
①②とも、古材オブジェ(株式会社・ウォールデコ)のHP
解字 「車(くるま・車輪)+㱿カク(中空)」 の会意形声。車輪の軸を受ける部分である「こしき」をいう。軸を通すため内側が中空になっている。
意味 (1)こしき()。車輪の中央の円い部分で、放射状に差し込まれた輻(や)を集めて受けている所。その中心を車軸が通っている。ハブ。「車轂シャコク」(車のこしき)「肩摩轂撃ケンマコクゲキ」(肩摩は肩がすれあう。轂撃がぶつかりあう。人や車の往来が激しく混雑していること)「転轂テンコク」(こしきを回す、車で荷物を運ぶ) (2)くるま。「輦轂レンコク」(輦は貴人がのる手車(人がひく車)、はくるま。天子の乗り物)「轂下コクカ」(輦轂レンコクの下(もと)の意から天子のひざもと。宮城のある地。帝都)「推轂スイコク」(くるまを推して前にすすめる。推し進める。協力する)
 カク・コク・さかずき  角部
解字 「角(つの)+㱿カク(中空)」 の会意形声。角の中空部分を利用したさかずき。また、角カクに通じ、角突き(きそう)意がある。
意味 (1)さかずき()。角で作った杯。 (2)ます。容量をはかる道具。=斛コク。 (3)きそう。「觳抵カクテイ」(力をきそうこと。=角抵。)
<紫色は常用漢字>

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