「上等な旨い肉」といえば、多くの人が“霜降り和牛のステーキ”を思い浮かべるであろう。
日本の消費者は肉質の柔らかいもの、脂の多い霜降り肉を好む傾向にある。雌牛は出産のために良質の脂肪を蓄え、霜降り肉が出来やすいそうで、取引価格も雄牛に比べ高いようである。一方、雄牛肉の評価は一段落ちるらしい。男性ホルモンが筋肉を強くし、肉質を硬くするためである。そこで、食肉用としての雄牛は去勢されて女性ホルモンを与えられるそうである。それにより肉質は幾分向上するが、雌肉には及ばないらしい。
雄はだいたい3ヵ月から5ヵ月くらいで去勢されて飼育されるが、それでも雌に比べれば肉質は固く脂も少ないという。また雄の成牛は気が荒く飼育には向かないので、その点からも去勢は好都合なようである。
従って、私たちが食べている牛肉は、雌もしくは去勢された雄の肉だけだそうである。日本では、正常な雄牛の肉は流通していないとのことである。まともな成牛の雄として存在できるのは、優秀な“種牛”だけだそうである。
人間の男として生まれた私は、特別優秀でなかったにも拘らず、去勢されずに生き来られたことを幸せに思う。