石造美術紀行

石造美術の探訪記

滋賀県 高島市安曇川町横江 布留神社宝塔

2008-05-24 02:28:50 | 宝塔・多宝塔

滋賀県 高島市安曇川町横江 布留神社宝塔

先に紹介した下小川国狭槌神社(2基の大型石造宝塔が並ぶ2007年6月記事参照)から東に約500m余、横江集落の北西に布留神社がある。社殿右手の竹藪に石造宝塔が立っている0606_2基礎は大部分が埋まり、上端がわずかに覗くに過ぎない。側面3面に輪郭、格狭間があるというが現状では確認できない。塔身は軸部、縁板(框座)、匂欄部、首部を一石彫成する。軸部は樽型で、素面。扉型らしき痕跡があるようにも見えるがはっきりしない。縁板の框座は半分以上が欠損する。匂欄部、首部と径を減じながら整った段形を形成する。笠裏は3段の段形になり、細い首部から続く最下段、中段は高さがあり、斗拱を思わせ、上段は軒口に近く作り付けた薄いものであることから、垂木を表現したものと思われる。軒口はさほど厚くなく隅の軒反も穏やかなものとなっている。四注の照りむくりが目立ち、隅降棟は断面凸状の突帯で表し、方形に立ち上げた露盤を頂に設ける。軒の張り出しが大きいためか笠全体に高さ(厚み)に欠け、照りむくりや軒口の薄さと合わせて軽快な印象を受ける。珍しく相輪も完存する。伏鉢は半球形で下請花は薄く風化が進みはっきりしないところもあるが複弁と思われる。下請花と九輪部下端の径に差がない。九輪の凹凸ははっきり彫成し逓減率は大きい。上請花は単弁と見られ、宝珠は整った曲線を見せる。伏鉢と下請花、上請花と宝珠の間のくびれ感は強い。基礎を除いた現高約178cm。花崗岩製。基礎の大半が埋まり、塔身表面、特に框座の欠損が目立つが、各部完存する点は貴重。笠や相輪の形状などから鎌倉時代最末期から南北朝前半、よく似た作風の今津町日置前正覚寺宝塔などと相前後する、概ね14世紀前半から中葉頃の造立と推定したいがいかがであろうか。穏やかで軽快感を醸しだす簡素かつ洗練された意匠表現には、既に完成の域に達し定型化し、さらに退化にさしかかってきた感があるように思える。

参考:滋賀県教育委員会 『滋賀県石造建造物調査報告書』 193ページ

竹を背景にした風情が涼しげでGOODでしょ。埋まった基礎に紀年銘とかないのかなぁ…。それにしても湖西は優れた宝塔の宝庫です。まだまだありますよ~。