ドナウ川の白い雲

ヨーロッパの旅の思い出、国内旅行で感じたこと、読んだ本の感想、日々の所感や意見など。

友人・Tさんへ

2014年12月15日 | 手紙

前略

  この前お会いしたのは秋たけなわのころでしたが、もう師走も中旬になってしまいました。

  その後、お変わりなきことと思います。

  私は相変わらず、これという変化のない静かな日々を送っています。

  いま、井上靖の『わが母の記』を読み始めています。その冒頭部に亡き父のことが書いてありました。 井上靖の父は軍医少将に昇進したとき、昇進を契機に48歳の若さで退職し、以後、80年の生涯を終えるまで、夫婦で郷里の家に隠棲して、百姓をして暮らしました。

  そのことはそう珍しいことではないのかも知れませんが、このお父さんは一種の「厭人癖」があり、「家の敷地から外へ出たことは数えるほどしかなく、訪ねてくる村人には不機嫌な顔を見せるようなことはなかったが、自分から他家を訪ねて行くといったことはなかった」そうです。

   私は、親しい人となら酒を酌み交わすことが好きで、「家の敷地から外へ出たことは数えるほどしかなかった」というほど「厭人」ではありませんし、旅行にもよく出かけます。が、義理で会合や宴席に出たり、人前で話したりするのは、とみに億劫になっています。

  組織の一員として仕事をしているときには、そうも言っておれませんでした。しかし、今は、半公的な会合などに、なかなか足が向きません。いつも欠席ですが、お許しください。

                  ★

  「ドナウ川の白い雲」について、ご感想を送っていただき、ありがとうございました。

  私を知っている人が読んだら、多分、私の息づかいまで感じられて、ナマナマしく、いやなのではないかと思い、今までにこのブログの存在をお教えしたのは、本当に親しい方たちだけです。それでも、ご迷惑だったのではないかと、気にしています。

  ですから、このブログは、私という人間について何も知らず、どこの誰かを知る術もなく、たまたまネットの中で偶然に出会って、興味をもってくれた人、…… そういうごく少数の人々に読んでもらえればよいと思って、書いてきました。

                   ★

  それも、すでに117回になって、最近はすっかり筆不精になっています。

  書かないと、多くない読者が、さらに減っていきます。

  ブログを開いてみたけれど、今日も更新していないので、過去に、面白いと思った記事を1,2編、また読み直して、ブログを閉じたという、そういうファンもいることが、gooから送られてくる数値データからわかり、申し訳なく思います。

  書かないのではなく、最近は、書けなくなっているのだと思います。

  まるで一流の作家みたいな言いぐさですが、自分の中でぐつぐつと発酵して、やがて明確な「形」を現してきた何かでないと、なかなか書けません。

  それらはいずれも、自分にとって、本や旅や生活の中で得た発見や感動が基盤になっているのですが、その中でも、いつか、どうしても書き表したいと思っていたいくつかの事柄がありました。そのいくつかを、117回の中で書ききってしまったのだと思います。

  それは、いくつかであって、117回のうちの110回は、その周辺部分であったと思います。

  長い年月の間、自分の中で出口を求めていた事柄を、すきっと表現できた満足感は、大きいものがあります。

                  ★

  もっと多くの読者を得るためには、文章もごく短くし、もっと身近な題材で、さらっと書く、そして、毎日、更新することが必要だとわかっています。また、ネット上で人から人へとどんどん読者が増えるようなしくみを作ること、そういうことが必要なこともわかっていますが、そういう若者的なブログを作る気になれないので、仕方ありません。

                   ★

  ブログに掲載している写真についてお褒めの言葉をいただきましたが、例えばヨーロッパ旅行記にしても、他の同類のブログより、写真だけは負けてないなと自負しています。

  20年もお世話になっている歯科医院の先生が、最近、待合室のパソコン画面に、自分の撮った風景写真を次々流すようにセットしています。順番を待っている人を少しでも慰めようとの意図なのでしょう。

  この先生、最近、およそ中高年の医者らしくない、随分変わった形のオートバイに乗って、小旅行(撮影旅行)するという趣味をおつくりになったらしい。…… これはとても良いことです。お医者さんは収入の多い仕事でしょうが、来る日も来る日も狭い診療室で、次から次へと患者を診て、何十年もただ儲けるだけの人生では、人ごとながらたいへんしんどい人生だと思っていました。

  待合室のパソコン画面には、近畿圏のあちこちの風景が映り、時には自分の妙な形のオートバイを点景に入れてあったりして、歯科医としての腕ほどではありませんが、まずまずの腕前です。

                   ★

  少々脱線しました。

  最近、あまり書けなくなっていますが、でも、今のところブログをやめるつもりはありません。

  明治以後の日本人のあこがれであり、目標としてきた西洋文明とは何か? その歴史と現在は?

  (元首相の管さんがお好きであった)「市民」とは、本当のところ、西洋史上、どのような人々であったのか?

  日本にとって、先の「大戦」は、何であったのか?

  渡来弥生人はどこから来たのか? 日本語の起源は?

  「神武東征」はあったのか?

  邪馬台国がヤマト政権か?

  日本の文化と伝統とは?

  こういった関心が私の中にたえずあって、本を読み、考え、旅をし、そして書くという、それらが混然一体となって、結構、毎日を楽しんでいます。

  どうか、また、時に、思い出して、「ドナウ川の白い雲」を開いてみてください。

  それから、また、一献傾けながら、清談をしたいものです。

  寒さ厳しき折から、くれぐれもご自愛ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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