一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井王位、防衛

2021-08-26 06:02:39 | 男性棋戦
豊島将之竜王と藤井聡太二冠による第62期王位戦と第6期叡王戦の挑戦手合いは、待ちに待ったカードといえる。
渡辺明棋聖が棋聖戦で藤井七段に敗れ、リターンマッチもストレートで返り討ちにされてみると、もう藤井二冠の相手は、豊島竜王しかいなくなった。オーバーなようだが、藤井二冠の勝率を考えれば、的を射ていると思う。
実際豊島竜王は、この挑戦手合い開始前まで、藤井二冠に6勝1敗。毎年勝率8割越えの藤井二冠にこの成績は驚異的で、この数字を見れば、豊島竜王が最強なのではと思えてくる。
ただ豊島竜王は「この成績はたまたま」と心から思っているだろうし、藤井二冠も同様の思いを抱いているに違いなかった。
挑戦手合いは王位戦から始まり、第1局は豊島竜王の勝ち。通常の相手ならこれで「豊島竜王の奪取濃厚」となるのだが、相手は藤井王位である。豊島竜王との通算対戦成績が1勝7敗になっても、「これで七番勝負が面白くなった」が私の率直な感想だった。これが藤井ブランドというか、信用である。
果たして藤井王位は第2局、第3局と勝ち、並行して始まった叡王戦も、第1局を制した。この流れ、それぞれの立場は違うが、1983年、大山康晴王将と米長邦雄棋王との間で行われた、第32期王将戦と第8期棋王戦のダブルタイトル戦と展開が同じなのだ。
すなわち、王将戦第1局は大山王将が勝ったが、それ以後4局と棋王戦3局をすべて負け、米長二冠が誕生したのだった。
しかし叡王戦第2局は、豊島竜王が逆転勝ちした。藤井二冠が逆転負けするとは珍しいが、対豊島戦においてはこの展開がままある。やはり豊島竜王が強く、藤井二冠が優勢でも疲労が蓄積し、終盤でミスを犯してしまうのだろう。しかしこれぞ人間の戦いである。
その後は王位戦第4局と叡王戦第3局に藤井二冠が勝ち、叡王戦第4局に豊島竜王が勝ち、今回王位戦第5局を迎えたのだった。
初日(24日)は互角の戦いだったが、二日目(25日)昼にABEMAを見ると、形勢バーが藤井王位に大きく傾いていて、私は訳が分からなかった。
ネットで調べてみると、事の発端は図だった。豊島竜王が△6四銀を△7五銀と角取りに出たところである。

図から▲9七桂△8四飛▲7五角△7四飛▲7六歩で先手勝勢。
△7五銀に▲4四角△同歩は後手が十分なのだろう。しかし▲9七桂が当然ながら好手で、飛車が逃げれば▲7五角と銀を只取りできる。それが分かっているのに豊島竜王は△8四飛と引いたから、藤井王位はゆうゆう▲7五角と銀を取り、これで将棋は終わった。
豊島竜王に何の誤算があったか……といったって、数手先の妙手をうっかりしたならまだしも、▲9七桂は誰だって読む。そこをどうして△7五銀と出たのか分からぬ。まったく豊島竜王らしからぬ手で、私だったらバカバカしくて投げるところである。
だが豊島竜王もカド番だし、スポンサーの手前、投げるわけにもいかない。しかし指す手もないし、ここからの豊島竜王はつらい時間だっただろう。
結局16時47分、77手までで豊島竜王が投了した。1勝3敗からの逆転劇は難しいとはいえ(2017年8月29日「1勝3敗からの逆転劇はあるか」参照)、1-4での敗退は厳しいものとなった。
こうなったら豊島竜王は、叡王戦最終局を死に物狂いでモノにしなければならない。
一方の藤井王位は充実のタイトル4期目。いまさらながら、19歳とは思えない実績だ。
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