一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第34期竜王戦・挑戦者決定三番勝負第1局

2021-08-14 00:10:48 | 男性棋戦
第34期竜王戦挑戦者決定戦は藤井聡太王位・棋聖と永瀬拓矢王座で争われることになり、12日、その第1局が行われた。
竜王戦は優勝賞金が4400万円と高額だから挑戦者決定戦もしかりで、対局料は各460万円となる。その先に七番勝負が待っているから、この三番勝負は序列下位のタイトル戦並みに大きい。
さて「藤井聡太被害者の会」があるとすれば、タイトルを取られた渡辺明名人や木村一基九段が筆頭に挙げられようが、永瀬王座も相当なものだ。
すなわち永瀬王座は2020年の第91期棋聖戦と第61期王位戦の挑戦者決定戦で、ともに「藤井七段」に敗れている。当時永瀬王座は叡王も持つ二冠。当時の勢いから行けば、挑戦者になれば両方とも奪取の可能性があった。つまり四冠も夢ではなかったのだ。
そこに現れたのが藤井現二冠なわけで、永瀬王座にとってこの19歳は目の上のタンコブ、早急に除去したいところなのである。
将棋は先手永瀬王座が三間飛車に振った。永瀬王座もいまはすっかり居飛車党だが、昔は振り飛車党で、粘り強い受けに定評があった。本局はいわば昔とった杵柄だが、それをこの重要対局で用いたことに驚いた。
ただ、両者の公式戦対戦成績は藤井二冠の4勝、永瀬王座の1勝。永瀬王座の唯一の勝ちが「後手四間飛車」(王将戦リーグ)だったことを考えると、この戦法の採択も十分納得できるのである。
囲いは永瀬王座の穴熊明示に呼応したか、藤井二冠も△1二香と突いた。
私は、藤井玉は懐が深いといつも思う。その本領は相居飛車戦にこそ発揮されると思うので、玉の自由度の少ない穴熊はどうなのだろう。むろん永瀬王座も、この展開に自信を深めたと思う。
将棋はいい形勢のまま中盤戦に入ったが、永瀬王座の▲5七金が中途半端な位置で、この金の処置に神経を遣いそうである。
将棋は53手目▲6六同金まで。ここで△6六同角▲同角△8六飛が利けばいいが、それは▲7七角打の飛車取り詰めろで先手勝ち。
そこで藤井二冠は△3一金と寄った。これが離れ駒をなくして戦いに備えた大人の一手で、後手陣には憂いがなくなった。対して永瀬陣はやはり▲6六金の処置が悩ましく、例えば▲6七金は△7七角成▲同金△7六歩▲同金△6七角のような狙いがありそうである。
ということは、明らかに後手の模様がよし。ということは、藤井二冠レベルなら、これを勝ちに持っていくことは容易に思われた。少なくとも、最後は藤井二冠が勝つと思った。
果たしてその後は藤井二冠が勝勢になり、双方1分将棋の184手目△2八金打。私はこの場面をたまたまABEMAで見ていたが、永瀬王座がなかなか投了しない。しかし40数秒を過ぎたところで、もはやこれまでとばかり、永瀬王座が深々と頭を下げた。
棋士は投了するときに心の準備ができているというが、このシーンを見る限り、とてもそうは思えず、永瀬王座の無念さがひしひしと伝わってきた。
しかし藤井二冠が先勝では面白くない。まあどちらが勝っても豊島将之竜王との七番勝負は新鮮味がないのだが、いずれにしても、永瀬王座が残り2局を連勝するとは思えない。
ということは、ついに藤井二冠が竜王戦の大舞台に登場するのか――。
恐ろしいことになった。
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