一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第13回白瀧あゆみ杯準決勝戦を見に行く(後編)

2019-09-20 12:07:17 | 将棋イベント
▲4八桂、と脇田菜々子女流1級は受けた。高見泰地七段は「大丈夫?」と心配する。こういう時は高い駒でしっかり受けるのが、男性プロの感覚らしい。
▲礒谷真帆女流初段-△加藤桃子女流三段戦は、▲4四桂に△同銀▲同角。これで△7六歩の一手を無駄にできた恰好だ。
さらに△3三銀に、角を逃げず▲4五香。「(逆転の)雰囲気出てきましたネ」と高見七段が盛り上げる。
▲脇田-△山根ことみ女流初段戦は、山根女流初段が△6七金から清算した。
▲礒谷-△加藤戦は、礒谷女流初段が追い上げたが逆転までは至らず、加藤女流三段が寄せに入っている。△6六歩▲同玉の局面で、「△7五銀で詰みでしょう」と高見七段。「対局姿は落ち着いて見えるんですけど」とは、塚田恵梨花女流初段。これは加藤女流三段のことをいっているのか。
ほどなく加藤女流三段が△7五銀を着手。礒谷女流初段が投了した。新人の磯谷女流初段、序盤でチャンスがあったかに見えたが、そこで踏み込めなかった。加藤女流三段は中盤以降の指し回しが見事。さすがに奨励会元初段だった。
▲脇田-△山根戦も△7五銀。しかしこれは▲同角成△同歩▲同玉で、
「これは入玉ですね。脇田さんが一気に勝ちになりました」
と高見七段が下す。何という展開だろう。
とはいえ山根女流初段もそれを阻止すべく頑張る。
高見七段「いま流行りの『宣言法』をやりますか」
私はよく分からないのだが、最近は持将棋模様でそういうルールがあるという。だけど宣言法をやって失敗したら負けになるらしく、塚田女流初段は
「宣言法のタイミングが分かりません。リスクが高いですからね」
と慎重だ。
高見七段「いろんな場所から王手がくるんで、30秒将棋だと分からないですね」
そこに、加藤女流三段と礒谷女流初段が入場した。私たちは拍手をもって迎える。
加藤女流三段「序盤は失敗して苦しかったんですが……。最後はうっかりがあって(△7六歩のこと)混戦になって、失敗したと思ったんですが……」
礒谷女流初段「序盤はよくなった意識があって……そこから弱気になったのが悔やまれます」
高見七段や私たちがいちばん聞きたいのは、図で▲7四歩はなかったかということだ。

高見七段指摘の「△7二金▲7八飛△6三銀▲7三歩成……」の順は後手不利なので、△7二金では△6三銀とする。以下「▲7三角成△同桂▲同歩成△5四銀▲7二歩△8六歩▲8四桂……」が加藤女流三段の読みだ。
「抑えこまれて飛車を狙われると、厳しいですね」
と加藤女流三段。しかしこれは敗者を立てた感想で、実戦になったらそこから何とでも指し回してみせる、みたいな気概は窺えた。
礒谷女流初段は残念だったが、実力のあるところは見せた。また次の対局を頑張ればよい。
2人はそのまま席に座り、脇田-山根戦を観戦する。
こちらも最終盤だ。山根女流初段が入玉を許したかに見えたが、山根女流初段が△8二竜と引き揚げ、先手玉を捕まえんとしている。
高見七段「△8五角から△6三角が詰めろになっている気がするんですけど……」
脇田女流1級は▲2四歩として、「下駄をあずけました」と高見七段。さあ、先手玉が詰むや詰まざるやだ。「以前山根女流初段とすれ違ったんですけど、山根さんが詰将棋を解いてて、挨拶できませんでした」
高見七段は適当なところで笑いをぶちこんでくる。
実戦は山根女流初段が2枚目の竜を△6八竜と活用し、綺麗に詰め上げ、勝ち名乗りを挙げた。終了時刻は16時10分。
高見七段「最後の詰みは見事だったけど、それまでいろいろあって、▲7五同玉の時は山根さんが本意でなかった気がしますが、頑張って逆転しました。先手は上部に逃げても勝ちじゃない、っていうのが将棋の難しいところですね。2枚竜は強力ですね」
対局者が入場した。やはり大きな拍手で迎える。
山根女流初段「居飛車を選択したのは2回目です、望んでいた展開ではなかったけど攻め切れる展開になって、よくなったと思ったんですけど、そこから大変でした」
脇田女流1級「山根さんの四間飛車の棋譜しか見てなかったんで、序盤は作戦負けになりました。最後は勝ったと思ったんですが、詰み筋をうっかりして……。もっと将棋を勉強しないといけないと思いました」
この将棋で高見七段が聞きたいのは、終盤△2八飛の応手である。脇田女流1級は▲4八桂と安い駒で受けたが、金合はなかったのか。
脇田女流1級「最初は金合を考えていたんですが、桂でした。安い駒を打ってしまって」
山根女流初段「▲4八金なら、△5七金▲4九玉△2九飛成▲3九合で1枚使わせて、△4七歩を考えていました」
なるほどこれは先手難局だ。
高見七段「ああ、じゃあ、桂合はいい手だったんですね」
やはり対局者はよく読んでいるということだ。「竜が8二~6二と活躍して、見たことがない動きで、いい将棋でした」
これで決勝戦は、加藤女流三段対山根女流初段という顔合わせになった。勝利者には、対局室に飾ってあったブーケがプレゼントされた。両者に決意を聞く。
加藤女流三段「山根さんは将棋が強いと改めて思ったので、決勝戦は頑張ります」
山根女流初段「私がアマチュアだったころに角落ちで教わったことがあります。平手でも教わりました。それからこの棋戦で当たることができてうれしい。決勝戦は自分の力を出し切ることができたらと思っています」
私は両対局者に指導対局で教わったことがあるので、どちらにも勝ってほしい。改めて、決勝戦は10月6日(日)である。
コメント
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