一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第13回白瀧あゆみ杯準決勝戦を見に行く(中編)

2019-09-19 00:12:24 | 将棋イベント
対局者4人の中では、加藤桃子女流三段が断トツの優勝候補である。だが第10回大会は決勝で相川春香女流初段が西山朋佳奨励会三段に勝ち、優勝した。
私は奨励会員の実力を高く評価しているけれど、女流棋士だって一発入る時がある、礒谷真帆女流初段はマイナビ女子オープンで本戦ベスト4の経験もあり、本局だって展開次第では、勝敗はどっちに転ぶか分からない。

第1図で高見泰地七段の推奨は▲7四歩の強攻である。以下△7二金▲7八飛△6三銀▲7三歩成△6四銀▲7二とで、こうなれば先手優勢だ。
だが礒谷女流初段は大人の▲3八銀だった。すかさず加藤女流三段は△3四歩とし、高見七段が不満の声を漏らした。▲3八銀と締まらず、すぐに▲7四歩と行くべきだったというのだ。
本譜はそこで▲7四歩としたが、△6五歩の合わせが厳しい。▲3八銀より△3四歩の価値が高く、後手の角に活躍の場ができたのが大きい。
▲脇田菜々子女流1級-△山根ことみ女流初段戦は中盤の難しい戦いだ。脇田女流1級はは5筋の歩を交換したが、山根女流初段も5筋に飛車を振り反撃する。
高見七段「5筋の歩交換を逆用されちゃっているので、先手が難しいですね」
さらに山根女流初段△6五歩。「▲6五同歩は△6六歩▲同金△3九角の飛車金取り」でゲームセット。ヘタな受けは後手の攻めを助長するらしい。
塚田恵梨香女流初段「私は迷ったら攻めます」
高見七段「塚田一門は攻め将棋が多いもんね」
塚田女流初段「でも私は受け将棋になっちゃいました。もともとは攻め将棋だったんですけど、攻める人が多いので」
このあたり、升田幸三実力制第四代名人の攻めを受け過ぎて、受け将棋になってしまった大山康晴十五世名人のエピソードに似ている。
教室はほどよく空調が利いていて、まどろむ。大学の講義だったら居眠りはマズイが、将棋だったら構わないか。いややっぱりマズイか。
脇田女流1級は▲8四角。
高見七段「▲8四角は粘り強い手ですね。後手のほうが攻めてるんで勝ちやすいイメージはあるんですけど、難しいところもあります。
脇田さんも攻め合いたいけど負けちゃうから、辛抱しているんですね」
▲5七金が指された。「▲5七金は玉から離れちゃうんですが、やむを得ません」
▲礒谷-△加藤戦の指し手が動く。指し手はまとめて伝えられるため、微妙にタイムラグがある。でもそのぶん、臨場感が薄れている。
とはいえ、2局同時解説はせわしないと思う。とくに今はどっちも秒読みだからなおさらである。マイナビ女子オープンのような一斉対局は別だが、本局は持ち時間15分の早指し戦である。客と対局者も滞在時間は長くなるが、別々の進行にできなかったものか。これなら大盤の用意も1セットで済むし、改善策はいろいろあると思う。
…というのは私の勝手な意見で、大部分の客は、スピーディーに将棋が終わるからいいのだろう。
▲脇田-△山根戦に替わる。高見七段「先手は▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩という手が回れば相当です」
高見七段の後手の予想は△5五飛。果たして△5五飛が指された。
「当たりましたネ」
「光栄です」
女流棋士の指し手が当たると、男性棋士でもうれしいらしい。
▲礒谷-△加藤戦は、加藤女流三段の猛攻に、礒谷女流初段が▲5九桂と受けた。しかしいかにも異筋で、礒谷女流初段劣勢は否めない。
▲脇田-△山根戦も、山根女流初段が攻勢だ。
「やはり後手がうまく攻めていると思います」
と高見七段。ちょっと声が小さいが、まあ我慢できる。「△6六角成に▲6七歩は、△8八馬▲同玉△8六歩で攻めが繋がっています」
▲礒谷-△加藤戦に戻る。「▲5九桂がどうかと思いますけど、礒谷さんは終盤チカラがあるんで、まだ分かりません」
▲脇田-△山根戦は。△8六歩。先手玉はなかなか逃げ切れないですよ。△8七歩成がありますから」
▲礒谷-△加藤戦に戻り、礒谷女流初段▲6六角。次に▲5五の桂を▲4三桂成とし、角筋を一気に通す狙いがある。
▲脇田-△山根戦は、脇田女流1級が▲2四歩と行った。やはり攻めに活路を見出す。
▲礒谷-△加藤戦は、加藤女流三段の△5七桂が早い両取りで、ますます優勢である。高見七段は指し手をよく当てるので、塚田女流初段も感心している。
▲脇田-△山根戦に替わる。ものすごい激戦である。先手玉は詰めろに近いが、脇田女流1級に凌ぎはあるのか。
「▲4二飛△3二銀▲6二飛成で、これが6筋に利いてくるから詰まないだろう、というのが脇田さんの読みですね。でも△6七歩成で詰んでてもおかしくない。詰まなければ脇田さんの勝ちです
▲5八同玉の局面で先手玉が詰むかどうか」
▲礒谷-△加藤戦は、加藤女流三段が△7六歩と打った。しかし「▲4三桂成△同金▲4四桂で△7六歩が一手パスだからどうでしょうか」
▲脇田-△山根戦。「こちらは結着が近いですよ。△2八飛(▲5八玉に王手)に▲4八金の一手だと思うんですよ」
高見七段は、この局面がハイライトと見ているようだ。脇田女流1級は何を合駒するのか。
(つづく)
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