一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第30回将棋ペンクラブ大賞発表

2018-07-25 00:38:26 | 将棋ペンクラブ
去る7月21日(土)に、「第30回将棋ペンクラブ大賞」最終選考会が行われた。
最終選考委員は、木村晋介(将棋ペンクラブ会長・弁護士)、西上心太(文芸評論家)、所司和晴(棋士)の3氏。
その結果、同会から発表された各賞は、以下の通りである。

【観戦記部門】

大賞
大川慎太郎 第30期竜王戦決勝トーナメント1回戦 藤井聡太VS増田康宏(読売新聞)

【文芸部門】

大賞
杉本昌隆「弟子・藤井聡太の学び方」(PHP研究所)

優秀賞
柚月裕子「盤上の向日葵」(中央公論新社)

【技術部門】

大賞
藤井猛「四間飛車上達法」(浅川書房)

優秀賞
永瀬拓矢「全戦型対応版 永瀬流負けない将棋」(マイナビ出版)

【特別賞】

山本一成「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」(ダイヤモンド社)


観戦記大賞は大川慎太郎氏。第27回に続いて2度目の大賞受賞である。
本局の▲藤井四段VS△増田五段戦は藤井四段の29連勝局にあたり、当日の藤井フィーバーはすごかった。観戦記はそれを見事に活写している。
なお今年は、優秀賞はなかったようだ。私は諏訪景子さんの名人戦第4局(朝日新聞)を一番に推していたので、やや残念だった。

文芸部門の大賞は、杉本昌隆氏。杉本氏は第26回の技術部門で、「杉本流相振りのセンス」にて優秀賞を受賞したが、文芸部門では初受賞となる。
本書はいわゆる藤井本であるが、ことさら藤井七段を前面に押し出さず、冷静な記述に終始したのがよかったと思う。
優秀賞は柚月裕子氏の「盤上の向日葵」。同書は「2018年本屋大賞」の第2位を獲っているので、面白さは約束されている。
ただ、奨励会三段で退会した青年が刑事になれるのか、奨励会を経験しなかった青年に、タイトル戦に出場するほどの実力が付くのか、などの細かい疑問符は付く。
極め付けは小池重明氏をモデルにした真剣師の「申し出」だが、ホンモノの小池氏なら、ああいうことは言わないと思う。
終盤の展開も性急でやや疑問符は付くが、本書にはそれを補って余りある、圧倒的な将棋の取材量がある。将棋ファンなら、座右に置いておきたい1冊だ。

技術部門大賞は、藤井猛氏。藤井氏も第27回以来、2度目の大賞受賞。
浅川書房は編集者がよく、どれも良書である。プロ棋界で四間飛車は激減しているが、アマ棋界ではまだまだ隆盛を誇っている。その意味でも、この新刊の存在は大きい。
永瀬拓矢氏の本は読んでいないが、永瀬将棋のエッセンスが詰め込まれた、良書に違いない。

なお今回は特別賞として、山本一成氏の著作が受賞した。山本氏のそれは文芸というより論文に近く、私はそれをエッセイや小説と同列に扱うのはどうか、という疑問を持っていた。
その意味で今回の「特別賞」は、よい落としどころだったと思う。

以上受賞の皆様、おめでとうございます。


将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月14日(金)に「レストランアラスカ・パレスサイド店」(地下鉄東西線・竹橋駅直結)にて行われる。18時30分開演、参加費は男性8,000円、女性6,000円である。
私も時間があれば行きたいが、参加できるようならまだ無職、参加できないなら会社勤め、ということになろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする