第5図以下の指し手。▲4五銀△6五桂打▲同歩△同桂▲6七玉△7七桂成▲同角△4六金▲5九香(第6図)
私は▲4五銀と香を取った。これに△3五金なら、そこで▲2一馬のつもり。
しかし後手氏に△6五桂打と力強く指され、跳び上がった。
しまった、この筋は▲5六銀がいるから大丈夫とフンでいたのに、今4五に移動したのだ!!
ということは、この△4五香は撒餌だったのだ。私はそれに気づかず、食べてしまった…。
以下数手進み、7七の金を取られては、形勢暗転である。この将棋、負けたと思った。
第6図以下の指し手。△8六歩▲8八歩△8七歩成▲同歩△6五歩▲7八桂△6六香▲同桂△同歩▲同玉△6五歩▲同玉△7三桂(終了図)
まで、一公の時間切れ負け。
後手氏はじっと△8六歩と伸ばす。いい手だ。私は▲8八歩と受けるが、後手氏は歩成を利かし、△6五歩。これもいい手だ。ここで▲5四歩や▲8六桂があるが、どれも足りない。私は▲7八桂と受けたが、これではダメだと観念した。
後手氏は▲6五同玉まで進め、ウン、と大きく頷いて△7三桂。そこで私が▲6六玉と着手したら、後手氏が「時間が…」と言った。チェスクロックを見ると、私の数字が「0」になっていた。
…あぁ、またやっちまったか!
さっきは残り20秒を確認していたが、いつの間に秒読みが始まったのか。私は全然音が聞こえなかった。何と、7年振り4回目の時間切れ負けである。
もっとも▲6六玉以降は後手氏が、△6五金▲6七玉△6六歩▲同角△8七飛成を並べた。時間切れでなくても、私の勝ちですよ、というアピールだ。手順中、△6五金が好手だ。
感想戦。私はすぐに、第6図で「▲2一馬だった」とボヤく。
しかし後手氏は、「(序盤で)△3一飛に▲3七金と上がらせてよくなったと思ったんですが…」と感想を述べる。私は駒落ちの上手をやるせいか、この金上がりに抵抗はなかった。「でも(中盤で)金を打って頑強に抵抗されて…」
と後手氏は続ける。それ以降の彼の形勢判断はどうだったのだろう。私は▲2一馬の見解を聞いてみたい。
▲2一馬の変化に入り、以下△4六金▲6七玉△5六金▲同玉△3六銀不成で後手氏は自信があったようだが、さらに▲8八歩△4八香成▲7五歩(竜取り)△9七竜▲8七金と進むと、これは後手自信なし、と後手氏の弁だった。
まあ感想戦の言葉などアテにはならないが、▲2一馬なら私がおもしろかったと思う。
その図を載せるので、判断は読者諸兄にお任せする。
私はせっかく盛り返した将棋を勝ち切れず、グゥの音も出ない。
右の副将氏は勝った。木村晋介会長も終わったので聞くと、「うん、負けた」。
実に爽やかな答えである。「相手玉に必至を掛けたんだけど、そこで詰まされちゃってさァ」
「……。あのぅそれって、形作りっていうんじゃ…」
「しっ、大沢さん」
とこれはA氏。
ほかは五将氏も勝ったようだ。しかし六将のWatk氏と七将の女性は負けた。女性はともかく、Watk氏は関東交流会で、四段で指している。しかし勝てる雰囲気がまったくない。
ともあれこれで2勝4敗。またも勝ち越しはなくなったが、私は複雑な気分である。すなわち、現在戦っている四将氏が勝つと3勝4敗。優勢の将棋を落とした私が、A級戦犯になってしまうのだ。
局面は竜を二枚作った四将氏が優勢。しかし先手氏も頑強に抵抗して、まだまだ終わらない。
そのうち他所では、4回戦が始まってしまった。
一生懸命指している四将氏には悪いが、これは消化試合なのだ。そしてその原因は私にある。私はこのチームに何しに来たのか…。
結局、四将氏が勝った。私は目の前が暗くなった。
ここまでの3戦を振り返ってみよう。1回戦は私だけ勝ち、2回戦は全敗。3回戦は私が負けて3勝4敗。最悪の3パターンが展開されて、まさに悪夢としか言いようがない。
こりゃあもう4回戦は指せん、と意気消沈だが、控えのメンバーがいない。3回戦とそっくり同じメンバーで、また戦うことになった。
相手は「棋松会」。大将の私の相手は女性だった。だが彼女の駒を並べる手つきが覚束ない。棋松会、「あて馬」をやりやがった…。
バカなことをしていると思う。彼女をウチの七将に当てれば、棋松会が勝てる可能性は高い。つまり、ふつうに棋力順に並べればよかったのだ。
相手に振ってもらって私の先手。女性と公式戦を指すのは初めてである。私は四間飛車に振った。
もう対局が始まっているが、木村会長が、チーム名の由来を聞いた。自由である。と、棋松会の松は、松戸の松だった。
私の将棋に戻る。△1四歩に、私は駒組を急ぐ。女性は△1五歩。さらに△4四角とされ、アレッ? となった。
さらに△3三桂。これは次に△2五桂と跳ばれると、振り飛車おもしろくないんじゃないか?
しかし後手嬢はその後、△2一玉~△5二金右~△4二金寄と玉を固めてしまった。
なんだ、ミレニアム囲いの途中だったのか…。
第2図のあたりで、瀬川晶司五段が映画の宣伝に来た。みなはチェスクロックを止めて、聞く。
「泣き虫しょったんの奇跡、9月7日に公開となります。よろしくお願いします!」
自分の半生が映画になって、それでお金も入ってくる。素晴らしいではないか。
将棋に戻り、持久戦になったが、こうなれば私のもの。しっかり指して勝った。相手は飛車角を取られて指しようがなかったが、詰み上がりまで指した。ずいぶん往生際が悪いが、私も同じことを2回戦でやっていた。
感想戦では、第1図から第2図の間に△2五桂と跳ぶ手があったことを伝えた。女性は、今度やってみます、と言った。しかしそのころには忘れているだろう。
島井咲緒里女流二段がいた。チラシを配っていたのでもらうと、渡部愛女流王位の襲位記念パーティーが、9月2日(日)にあるようだった。
これは私も参加せねばならないが、最近は頭髪がいちだんと薄くなったうえに、白いモノがやたら目立つようになった。もはや老人の佇まいで、とても女流棋士の前に姿を見せられるシロモノではない。
私ひとりが行かなくたって、誰も気づかないだろう。当日はバックレる可能性アリ。
(つづく)