一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第17回 あっち亭こっち勉強会(後編)

2018-07-14 00:41:46 | 落語
仏家シャベル(湯川博士)の演目は「黄金餅(こがねもち)」。
「大勢のお越しでありがとうございます。今回この寄席に出ることになって、知り合い25人に手紙を出しました。全部手書き」
そのうちの一人が私だったというわけだ。
「この2日後(12日)に目の手術をすることになっておりまして」
ほう、と私たち。「でも手術をする先生が80(歳?)だっていうんだから、大丈夫かいな」
さすがにシャベル、何でもオチがあるのである。
「黄金餅といやぁ(5代目)志ん生が有名ですが、アタシは身の程知らずにそれをやっちゃう。お囃子も志ん生のを使わせていただきました」
「黄金餅」は、舞台は下谷山崎町。僧侶・西念が、あんころ餅に二分金と一分銀をくるみ、それを食べて死んでしまう。それを盗み見ていた行商・金兵衛は、西念の腹に入っているお金をくすねようと、あれこれ思案を巡らせる…。
この噺の白眉は、下谷山崎町から、火葬場のある木蓮寺までの街並みの描写だろう。
時代考証に精通しているシャベルは、その道中を細かく語る。私にも馴染みの場所なので、私はそれを江戸時代の街並みに変換する。まるでタイムスリップしたかのような、不思議な感覚に陥る。
上野広小路から東叡山寛永寺に至る川に3つの橋が架かっていたが、それが現在台東区にある甘味処「みはし」の由来とのことで、私は唸った。
シャベルの噺は滞りなく終わり、仲入りである。
休憩中、私の左に婦人が座った。そのまた左の男性と知り合いだったわけだが、例の文庫本の持ち主は、私の何列か前のご婦人3人組のものだった。
どうも彼ら5人が知り合いで、前のご婦人が気を利かせて?、席を占有したものらしい。
今年の4月、JR東北本線で、「次の駅から敬老者が16名乗車します(だから席を空けておいてください、の意)」と置き紙をした関係者が非難を浴びたが、それと同じニオイを感じた。

仲入り後は、ディープ太田による、ギター歌謡漫談「なぜか身に沁む心唄」である。
ディープ太田はあっち亭と大学の同級生。当会には昨年2月に初登場した。
まずは酒にまつわる歌を、4曲ピックアップする。最初は荒木一郎「空に星があるように」。2曲目は八代亜紀「舟唄」。ディープ太田のギターはうまい。さすがに弾き慣れている感じがする。
3曲目は美空ひばりの「悲しい酒」。これをやるのか、と思いきや、イントロが終わってさあ歌いだし、という時に
「ひじょうにむずかしい歌なんです!」
と歌うのを拒否してしまった。客は大笑いである。
4曲目は、藤山一郎の「酒は涙か溜息か」。これはキーが合っているのか、見事に歌う。私はテレビ東京の「演歌の花道」を見ている気分、来宮良子のナレーションを聴いている気分になった。
「この曲は昭和6年の発表でして、この頃、蓄音機の売り上げが4倍になったそうでございます」
私たちは、ほう、と頷く。「以上、はなはだ中途半端ではございますが、酒にまつわる曲を終わらせていただきます」
何だか知らないが、私たちは大笑いである。もう、普通の単語を並べているだけなのに、可笑しい。
その後もディープ太田は、美空ひばりの「悲しき口笛」を歌う。こちらは歌えるようだ。
「悲しき口笛が現代に発表されても、ヒットしたのではないでしょうか」
次はグループサウンズの歌である。タイガース、テンプターズ、ワイルドワンズなどのヒット曲を歌う。
さらにイーグルスの「ホテルカリフォルニア」。これは英語だが、歌えるのだろうか。
長いイントロが始まる。けっこうもったいつけている。…あれ? このオチは、おぼん・こぼんのアレではないだろうか。
「誰か(イントロを)止めて!」
お約束の下げであった。
最後はジョン・レノンの「イマジン」をマジメに歌い、幕。
普通の語りで、笑いを取る。なかなかに参考になる出し物だった。ディープ太田、憶えておこう。

トリは再びあっち亭こっちに戻り、「青菜(あおな)」である。
まずはマクラ。
「さっき小丸さんが、シャベルは家じゃ落語の練習をしないって言ってたけれども、シャベルさんは練習しないほうがいいんですね。
落語ってぇのは、練習すればするほどヘタになる人がいる。結局最初の噺がいちばんうまかったってね。シャベルさんはそのタイプ」
「青菜」とは、隠居の家で仕事を終えた植木屋が、そこの家で食事をご馳走になる。鯉の洗いが旨かったが、ワサビが辛い。それで、口直しに青菜を出してくれることになった。しかし、あいにく青菜は切れていた。その時の隠居夫婦の会話が粋で、植木屋は、自分も女房とこんな会話をしてみたい、と思う。
ある日、長屋仲間が家に来た。これはいいチャンスだと、植木屋は例の会話を実行に移すのだが…。
聞いた話を実際にやってみると大違い、というのはよくあり、この辺のソゴがこの噺の面白さだ。「男はつらいよ・寅次郎恋歌」(第8作)で、博の父・颷一郎(ひょういちろう)の話に感銘を受けた寅次郎が、とらやのみんなに同じ話をするのだが、みんなは感動するでもないので寅次郎がイライラする、という場面がある。あれを思い出した。山田洋次監督は古典落語が好きらしいので、案外このあたりの噺にヒントを得ていたかもしれない。
あっち亭の噺は安定感があり、安心して聞ける。
噺が終わり、時間を見ると、3時30分。プログラムとピッタリ同じ時間だった。
次回第18回は、9月13日(木)に同所で行われる。
帰り道、道路沿いに「天かめ」という蕎麦屋があった。もり240円、大もり340円と、立ち食い蕎麦価格だ。ちょっと小腹がすいたので、表で大もり券を購入して、入る。
店内はセルフサービスだったが大きなテーブルがいくつもあり、普通の蕎麦屋と変わらなかった。
蕎麦もゆでたてで、しこしこしていて旨かった。
平日の昼下がり、落語を聞いて、もりをたぐる。とても働き盛りの男性がやることではなく、いつかバチが当たると思った。
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