一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第25回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(中編)・美しき鈴木環那女流二段に教えていただく

2013-09-23 14:00:06 | 将棋ペンクラブ
「石田先生、いつもNHK杯の解説で拝見しております」
「はいはい」
「最近は年に1度ぐらいですよね。(もう少し出てもらいたいので)残念です。私としては、先生が黒縁のメガネだったころのが、いちばん好きでした」
「いまは銀縁だからね」
石田和雄九段は、なんか図々しいのが来たなあ、という感じで応対してくれる。
「私は、いままでの解説者の中で、先生が三指に入ると思っております」
ここで終わらず、私は続ける。「先生、柏で将棋道場やられてますよね。私日暮里に住んでまして、同じ常磐線なんで、いつかお邪魔しようと思ってるんですが、なかなかその機会がなくて…」
これが見え透いた社交辞令だと看破したのか、石田九段は
「魚は川を上らないです」
とつぶやいた。「あちらからこちらへ来ることはあっても、東京からこちらへ来ることはありません」
魚は川を上らない、とは言い得て妙だ。私は大いに感心した。私はさらに続ける。
「先生、この間実戦集を出されましたよね。私は買ってはいないんです。いないんですけど、あれはいい本だと思います」
私はさっきから、微妙に失礼なことを連発しているようだ。
「おお、それはいかん」
石田九段は名刺を取り出した。「将棋道場に連絡をくれれば、サインして、(有料で本を)お送りしますよ」
「ははあ、ありがとうございます!」
この辺りで味よく切り上げればいいのだが、私はしつこく続ける。お弟子さんの活躍にしばし触れた後、
「ところで先生、大山先生はどんな感じだったんですか? だって大山先生と順位戦で指された棋士って、もうそんなにいないですよね」
といった。
「大山先生は…すごい人でした。すごい人でしたよ…」
パーソナルな部分は、あまり言いたくなさそうだった。そこへ別の会員氏が来て、私はその場を外した。話に夢中になりすぎて、ちょっと石田九段に、迷惑を掛けてしまった。
会場の一隅では、鈴木環那女流二段と渡部愛女流3級の指導対局が始まっていた。しかし対局者はまだ1人ずつだ。
将棋ペンクラブ幹事の鷲北氏らにうながされ、私も加わることにする。愛ちゃんには、彼女が中学生の頃から何度か教わっているので、ここでは鈴木女流二段にお願いする。
「す、鈴木先生、お願いします。先日は関東交流会で、『NHK将棋講座』にサインをいただきました」
鈴木女流二段はにこやかに応じる。か、か、かわいい…!! 何というか、小悪魔系のかわいらしさだ。
席に座る。左は、頭を綺麗に丸めた紳士氏。聞くと、湯川博士幹事のおいごさんだという。そういわれてみれば、頭の形から顔から、湯川幹事そっくりである。私は妙に緊張しての対局となった。


2013年9月20日
第25回将棋ペンクラブ大賞贈呈式会場
東京・四ツ谷「スクワール麹町」

上手 鈴木環那女流二段
下手 一公

(平手)
▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲4八銀△8四歩▲7八金△8八角成▲同銀△4二銀▲7七銀△6二銀▲4六歩△6四歩▲4七銀△6三銀▲5六銀△5二金▲6八玉△5四銀▲3六歩△4一玉▲5八金△4四歩▲7九玉△3一玉▲6六歩△9四歩▲4八飛

手合いは香落ちでもよかったのだが、まあ、平手でお願いする。ちなみにおいごさんも、平手で指していた。
鈴木女流二段の△3二金に、私の▲4八銀が早くも疑問手。△8四歩▲7八金に△8五歩と伸ばされたら、早くも一本取られていた。
すなわち▲7七角は△同角成▲同金で、下手の形が悪い。▲2二角成△同銀▲8八銀も、△8六歩▲同歩△同飛で、そこで▲7五角は△7六飛で下手投了である。飛車の横利きが消えているのが痛いのだ。▲4八銀は不急の一手だった。
しかし鈴木女流二段は△8八角成と、予定通り?指してきた。もちろん△8五歩は織り込み済みだが、それだと上手十分になってしまうので、緩めてくれたものだろう。聞けば当人は否定するだろうが、ここが鈴木女流二段の思いやりである。
私には指し慣れない角換わりになったが、最近中倉宏美女流二段との指導対局でたて続けに指しており、そのときの経験を活かせると思った。
相腰掛け銀になり、粛々と進む。おいごさんも同系統の将棋だが、下手は▲5八玉型で、なかなか斬新だ。
その左には、先ほどのご婦人が入っている。こちらも平手だ。関東交流会ではフェアリープリンセスに属していると聞いたから、かなりの実力者である。飛車を振っているようだ。
愛ちゃんのほうも、3面が埋まっている。こちらは二枚落ちの手合いが入っている。下手がうまく指しているようだ。
壇上には、来場のプロ棋士が呼ばれている。まずは窪田義行六段のスピーチのようだ。しかし内容に脈絡がなく、さっぱり要領を得ない。
「窪田先生…」
と鈴木女流二段が心配顔でつぶやくのが可笑しかった。
△9四歩に、私は心の余裕がないので、▲9六歩と受けず、▲4八飛と回る。腰掛け銀+▲4八飛は、私の好きな形である。

△3三銀▲1六歩△1四歩▲3七桂△4二金右▲2五歩△7四歩▲2六角△4三金直▲4五歩△4二飛

鈴木女流二段は、一手一手に少考(数秒)する。指導対局とはいえ、一局の将棋を大事にする姿勢が見られ、私は大いに感心した。
その横顔をチラチラ盗み見るが、やはりかわいらしい。美しいというべきか。多面指しでは一局の将棋に専念できないから上手に負担が大きいが、美人女流棋士の場合、下手だって上手を鑑賞してしまうから、読みに専念できない。ある意味、条件は同じなのだ。
壇上には北尾まどか女流二段が上がっている。北尾女流二段はここ四ツ谷に事務所を構えており、それで顔を出したものであろう。いまから13年前まで私もここ四ツ谷に勤めていたが、いい思い出はなく、消したい過去ではある。
事務所は今度引越しをするらしい。どうぶつしょうぎが売れまくり、事務所が手狭になったのだろうか。どうぶつしょうぎ万々歳であろう。
あすからは外国に飛ぶそうで、北尾女流二段、ますます充実しているようである。
私は▲2五歩から▲2六角。この攻め筋も、私の好きな形だ。善悪はともかく、満足の行く進行にはなっている。
△4三金直に、満を持して▲4五歩と仕掛けた。
(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする