一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第54期王位戦七番勝負雑感

2013-09-01 19:08:11 | 将棋雑考
羽生善治王位と行方尚史八段の間で争われた第54期王位戦七番勝負は、8月27・28日の第5局に羽生王位が勝ち4勝1敗となり防衛、幕を閉じた。
今回の七番勝負、タイトル戦登場113回目の羽生王位に対して、タイトル戦初登場の行方八段がどこまで食い下がるか、が見どころだった。しかし私は、行方八段が1つでも勝てば上出来だと思っていた。
事実結果もそうなったわけだが、私と同じ考えの将棋ファンも多かったのではないか。行方八段が羽生王位から4勝を挙げるイメージがまったく浮かばなかった。
中継を見ていても、「最後は羽生が勝つだろう」という、羽生王位への絶大な信用があった。羽生王位が唯一負けた第3局にしても、行方八段が△8七金と打つ直前まで、羽生王位が快勝すると思っていたほどだ。
とにかく、これだけ世間?が早々と?行方八段を見切って?いては、勝てる道理がない。私は大山康晴十五世名人の全盛期は知らないが、若手の八段がタイトル戦で大山名人に挑んだときは、こんな雰囲気ではなかったかと思う。
ちょっと第5局を振り返ってみる。将棋は後手行方八段の一手損角換わり。17手目羽生王位の▲3七銀に、行方八段は△8五歩。これ、ネット解説を読むと、▲3七銀だから△8五歩と指したとあったが、これでは後手の一手損が丸々残りおもしろくないのではないか。プロ的には当然なのだろうか。
以降は両者の熟考が続く。ただ行方八段の長考は異常な気がした。まるで加藤一二三九段のごとく、なんでここで考えるんだ? というところで長考している。…と思うのは行方八段が本局で負けたからいうのであって、やはりプロ的には当然の長考なのだろう。事実、羽生王位だって長考を重ねていたのだから。
ただ行方八段においては、終盤時間が足りず、未消化の手を指して負けそうな予感があった。
果たしてそれは現実のものとなる。51~52手目、歩以外の駒が乗ったときは、行方八段の残り時間は15分になっていた。一方の羽生王位は、この時点で1時間以上は残っていたはずだ。同じペースで時間を消費しているようでも、羽生王位のほうがちょっとずつ時間を残していたのだ。これでは、行方八段が勝てない。
54手目の△3四歩が疑問手とされる。ここは△8六歩で先手の応手を窺うのがよかったらしい。このタイミングを逸したのも時間がなかったからで、ちょっとこの辺り、タイトル戦の不慣れな環境で、その弊害が出てしまったようだ。
74手目△5八金。女流棋士でこういう金を打つのが好きなひとがいるが、行方八段の感触はどうだったのだろう。この局面ではこの手が最善だったのかもしれないが、ジョナ研だったらこの手は、非難の対象になるだろう。
以下、羽生王位が手早くまとめて快勝。解説の小林健二九段は、終盤に「▲7一銀」とか「▲6三銀」とか妙な手を指摘していたが、羽生王位は一秒も考えなかったはずで、ここに百戦錬磨の超大豪とロートル九段(失礼)の差異を見た気がした。
行方八段は今年度好調で、王位戦七番勝負を除くと、13勝2敗。それでも羽生善治には勝てない。もはや、羽生三冠とトップ以外の棋士とは、香一本の差があるようである。
コメント
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