一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

十二たび大野教室に行く(中編)・縁

2011-10-23 00:04:37 | 大野教室
ツメ襟姿の奨励会員はM君。前述したが、もちろん大野八一雄七段門下である。
現役の奨励会員に教えていただくのは久しぶりで…と考えてみたら、昭和57年秋、東京・北区にある瀧野川女子高等学校の文化祭にお邪魔したとき、そこの将棋部に遊びに来ていた奨励会員と指して以来であった。
ちなみにこのとき、請われて将棋指導に来ていた植山悦行四段に、私は飛車落ちで教えていただいている。
それから25年の時が経ち、私はLPSAの設立記念イベントで、植山七段と再会する。さらにその翌年、私たちはLPSA金曜サロンで、再び出会うことになる。
植山七段はこの一連の出来事を、「縁だ」といった。「こうして再会したのは、縁があったんだ」と。植山七段の人生観にはどこか冷めたところがあって、どの人生も一局、と割り切っているところがある。それは中井広恵女流六段も同じだ。それだけに植山七段は、こうした出会いを大切にしているのだ。
私は本当に、いい人たちに出会えた。
さてM君との一戦である。当然私が先手と思いきや、M君ははっきりしない。結局M君に振ってもらって、私の先手となった。
▲7六歩に△8四歩。相居飛車は指せないので、▲7八飛と振る。M君は△5三銀左~△4二金上。2手目の居飛車明示といい、急戦の意思表示といい、気鋭の奨励会員らしくてよい。私相手に穴熊を指すようでは、棋士になれないだろう。
私は△5五歩~△6五歩の急戦を恐れて▲4七金と上がったが、これは不急の手だった。△7三桂と跳ねていないので、▲3六歩と待つぐらいでよかった。
M君は元気よく△7五歩と仕掛ける。▲6七銀△7六歩▲同銀△7二飛▲6七銀△7三銀▲9五角。
これにM君が△9四歩と催促したので、私は勢い▲7三角成。△同飛▲同飛成△同桂▲7四歩。この局面が以下である。

先手・一公:1六歩、1九香、2七歩、2八玉、2九桂、3七歩、3八銀、4六歩、4七金、4九金、5六歩、6六歩、6七銀、7四歩、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:飛、銀
後手・M:1一香、1四歩、2一桂、2二角、2三歩、3二王、3四歩、4二金、4三歩、5二金、5三銀、5四歩、6三歩、7三桂、8五歩、9一香、9四歩 持駒:飛、角、歩
(▲7四歩まで)

以下の指し手。△6九飛▲7八銀打△7九飛成▲7三歩成△8六歩▲同歩△8七歩▲7五桂△8八歩成▲6三と…

ここでM君は△6九飛と下ろしたが、私の▲7八銀打を軽視していたようだ。
M君は熟考後、△7九飛成。私は▲7三歩成とし、歩切れながら二枚換えでと金もでき、十分になったと思った。△6九飛では△6五桂▲7三歩成△7九飛、または単に△7九飛が優ったようだ。
しかし数手進んで、▲6三とがしくじった。局後大野七段に見てもらうと、「ここは▲6三桂成の一手」と即座にいわれた。
いわれてみれば、成駒を作るのは当たり前だ。桂を渡すと△3五桂の反撃が厳しいと思ったのだが、それなら私の攻めのほうが早い。▲6三とは駒がダブって、いかにも気が利かなかった。
本譜は、私の攻めが息切れになってきた。M君はさっきからため息をついて指しているが、そう悲観した形勢ではないだろう。否、いまはM君のほうがよい。
最後はM君が△6六角と出た手が、玉の懐を拡げながら、△3九角打の詰めろを見た一石二鳥の好手。ここで私は投了した。
29年ぶりの奨励会員との対局だったが、いや、いい勉強になった。
感想戦の最中に3時休みになり、大野七段からいつもの詰将棋(4題)が渡された。しかし今回は、
「30分で4題解けなくてもよしとします」
という。問題を見ると、パラパラっとした駒の配置で、まったく解く気が起こらない。「私は全部解くのに4時間かかりましたから」
「……」
詰将棋を出題してくれるのはありがたいが、そんな問題を出されても困る。私たちは簡単な問題を解いて、爽快な解後感を味わいたいのだ。
前回の将棋合宿でも詰将棋のタイムトライアルがあったが、これに全問正解したのは私だけだった。それで大野七段は、「大沢は詰将棋が得意だ」と刷り込んでしまったらしい。
来月の合宿でも、私を含めた何人かは特別問題を出されそうで、それを思うと恐ろしい。
Hanaちゃんとまた目が合う。
「たしか、Hanaちゃんだったね?」
「……。ねえ、(私のことを)イジメてるでしょ?」
いままでとは違う返事だった。しかしこれはマジの怒りである。相手に不快感が出てはもういけない。このジョークも、これで言い納めだと思った。
3局目は、そのHana ちゃんとである。姉のAkiちゃんとは5局指しているが、妹のHanaちゃんとは、意外にも初手合わせ。これは楽しみな一戦となった。
(つづく)
コメント (4)
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