一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

八たび大野教室に行く(後編)・1ヶ月ぶりの笑顔

2011-10-01 00:42:30 | 大野教室
9月29日に行われた倉敷藤花戦・清水市代女流六段対室谷由紀女流初段の一局は、清水女流六段の勝ち。序盤から機敏に動いて、終わってみれば清水女流六段の完勝だった。室谷女流初段はまだまだ弱い。しかし室谷女流初段はこれからいくらでも強くなる。捲土重来を期して、頑張ってほしい。

(前日のつづき)
供される料理はいずれも美味い。私は食欲がないが、皆さんとワイワイやっていると、自然と箸が進む。野月浩貴七段らが少食だったこともあり、私はちびちびとだが、料理を平らげていった。
その端々にやはり、私の愚痴が挟まる。野月七段は、それを聞く5人目の棋士となってしまった。まったく、こんなどうでもいい話を5人の棋士に聞いてもらうなんて、将棋ファンに余りある光栄だ。
野月七段と私は親しい間柄ではないので、野月七段はキツイことは言わない。植山悦行七段と中井広恵女流六段も、事前に釘を刺しておいてくれたようだ。
ただ、それ以外の対象については、遠慮がなかった。ちょっともう、ここには書けないほど、バッサバッサと斬りまくる。私は口をあんぐりするばかりだった。
そこへいくと、事情を知らないMi氏のほうが私に厳しく、たまに洩らす言葉が核心を衝いて鋭い。そ、そこは私がいちばん気にしていたところ…を、バサッとやる。これは本当に、キツかった。
「もうさー、すべてをなかったことにしないとダメだね。LPSAもなかった。彼女もいなかった。私の見た彼女は、誰だったんだろう」
私は嘆く。中井女流六段が、そんな切ないことは言わないでよー、と言った。
「まぼろしー」
W氏がすかさず私に返す。
「そう、まぼろしー! オレ、イッコーだけに、まぼろしー!!」
「アハハ、うまい!!」
店内にひきつった笑いが響いた。

午後9時を過ぎたころだったか。店内で、土曜日恒例のじゃんけん大会をやることになった。各テーブルの代表者1名が出場し、店員とじゃんけんを行う。その優勝者のいるテーブルは、飲食代が半額になる、というものだ。
私たちのテーブルからは誰が出るか。皆さんが私を推すので、しぶしぶ出ることにした。こんな心身ともにボロボロのおっさんが出ても優勝できるわけがないが、少しでも元気になってほしいという、皆さんの配慮だろう。
1回戦。自信はないが、自分の出す手だけは決めていた。最初はグー、そのまま私は「グー」を出した。どうだこれ!! 後方を見ると、チョキやパーを出した選手が意外に多い。次々と着席していき、なんと、勝者が4人にまで減ってしまった。あとで聞いたところ、参加者は30人近くいたらしいから、たった1回の勝負で8割以上が減ったことになる。
残り4人でじゃんけん。ここで私は、パーで勝つイメージができていた。
数秒後に私が勝って、大喜びするイメージを脳裏で再生する。
決勝の勝負に入る。最初はグー、じゃんけんポン!
『パー』「グー」「グー」「グー」
勝った!!
「よっしゃああああああ!! やったあああああ!!」
私は派手にガッツポーズをすると、振り返って雄叫びを上げた。
久しぶりだ。久しぶりに腹の底から声を出した。そして心から笑った。私にもまだ、これだけの声を出す力が残っていたのだ。
すぐ近くのテーブルに戻ると、皆さんが笑顔で迎えてくれた。中井女流六段、植山七段、大野八一雄七段、野月七段…次々に、握手をしていく。
「大沢クンいま、いい顔してたよー!!」
「やっぱり大沢クンは何かを持ってるよー!!」
「あ~、いまの笑顔、ケータイに撮っとけばよかった」
皆さんが私に、祝福の言葉をくれる。
「大沢クンは将棋のイベントに行っても、何かしら賞品を持ってくからねー。今回もやってくれると思ってたよ」
「イヤほんと、ケータイ構えておくんだったなー。いい笑顔だったよー」
「2回のじゃんけんで終わりは、光速の寄せだよねー。店側はもう少し盛り上がりを期待してたんだろうけど。さすが大沢さん」
皆さんの賛辞は止まない。
「いやいや、私生活ではグズグズですけど」
私はすかさず、水を差す。しかし私のジョークは、素直に笑えないものが多くなってしまった。これではもう、ジョークとは言えない。
会計の半額が約束されたので、遠慮なく料理を追加する。このあたりの心理は、棋士も一般人も同じらしい。
また談笑に戻る。野月七段によると、ある棋士が失恋し、数ヶ月間将棋が勝てなくなったことがあるという。そのとき野月七段は、その彼に会うたび
「死ね」「死ね!」
と荒療治をしたらしい。これが野月流の励ましなのである。
私のほうは強制終了してしまったから、その棋士よりショックが大きいはずだ。それでもやはり、野月流は私に
「死ね!」
なのだろうか。だが一度言われてみたいと思う。
今回いろいろ話を聞いて、私の異性に対する認識が、あまりにも甘いことが分かった。これは中井女流六段にも、半分呆れられたところである。異性に関してこんなに超初心者では、恋愛が成就するわけがない。
「どうだい? 少しは気が晴れた? 次は誰(棋士)を連れてきたらいい?」
大野七段が苦笑しながら言う。
「いえいえ、もう十分でございます」
私は平伏するしかなかった。お陰さまで今回は、精神的にかなり回復した。

話変わって、中井女流六段がW氏と私に、LPSA芝浦サロンのテコ入れ策を聞く。
芝浦サロンのお客減の危惧は、いまに始まったことではない。芝浦サロンが始まる前から、その新システムについて、私はこのブログで警告していた。なのにLPSAは常連の声を聞かず、独自路線を突っ走ってきた。それならば私からは、もう何も言うことはない。
「もう芝浦サロンは終わりです」
とバッサリ斬る。相手が女性だとグズグズするが、じゃんけん大会や将棋の件だと、一刀両断にしてしまうのである。
だがここまで言い切ったほうが、LPSAのためになるのだ。心にもないことを言って、ヘンに希望を持たせるより、よほど親心がある。

11時すぎ、お開き。会計は、23,000円余の飲食代が、13,000円余になった(最大割引は10,000円)。私が出したおカネは1,000円。それでも皆さんに改めて感謝され、いい気分だった。
帰りは、川口駅から赤羽駅まで、一駅だけ野月七段とツーショットでお話をさせていただいた。
内容はオフレコだが、将棋愛が伝わる、とてもいい話だった。また野月七段にお会いできればうれしい。11月の合宿に参加してくだされば、いちばんありがたいのだが。
コメント (3)
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