感染症診療の原則

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『企業危機管理 実践論』

2009-05-10 | (ちょっと休憩)ほんとに休憩
研修医の皆さん。連休中によい書との出会いはありましたか?

ブログでは出張の往復で読めるような手軽な本(なるべく安い)をときどき紹介しています。(紹介してくださる方もいて助かります)

中公新書『企業危機管理 実践論』はリクルート等で危機管理を担当していた著者によるもの。平成11年の本ですが、今でも使えるパールがそれぞれ3ページとコンパクトに並んでいます(どのページからでも読める)
ブックオフで105円でした(ほんとは680円+税)

いくつか紹介しておきます。

■マイナス情報が遅れる事情(p.92~)

トップにマイナス情報を届きにくくしている主な原因
1)トップに万能幻想がある(創業者は危険)
2)マイナス情報の提言を経営批判と錯覚する
3)役職者の防波堤心理(責任回避・組織擁護→隠蔽・責任転嫁)
4)側近の思いやり症候群 

■「発生」を前提とした予防(p.113~)

 様々な危機に対して「起きることを前提とした予防」の議論は敬遠される。
「そんな杞憂を抱くよりも起こさない努力をするほうが大切だ」という意見に押しやられてしまう。

■タラ・レバ論者と人ごと論者(p.120~)

「タラレバ論者」は危機対応の当事者を苦しめ萎縮させる。結果が出てからタラレバを言うのは簡単であり、狡猾。タラレバは架空の案だから結果は永遠に出ないリスクのない提案でしかない。
「人ごと論者」も危機対応の当事者を苦しめる萎縮させる。奇麗事は同じく当事者ではない視聴者の共感を得て正論と化す。
危機管理が難しいのは、限られた情報の中で早い判断を求められ、やり直しがきかないから。当事者はその時点での「ベターな選択」で行動するしかない。
(消火活動にたとえると、ボヤの段階で大量の水をかければ「水浸しになって台無し」といわれ、遅れれば「手際が悪いから全焼してしまった」といわれる)


■危機下の議論が長引く理由(p127~)
小田原評定に陥る原因

1)ショック性虚脱(巻き込まれた事件の規模が大きい)
交わされる会話はそれぞれが被る被害の予測。責任回避の予防線ばかり。対策の議論までに時間を要する。
2)決定権の不在
3)会議参加者のレベルの不均一
4)不埒な意図
対策よりも原因分析に矛先を向けて危機の当事者をおいつめようとする人が議論を攪乱させる
5)権力の拮抗
玉虫色議論→再審議→同じ議論をくりかえす


■記者会見のコツは「社長、限界でしょ」→謝調原改処(p168~)

1)謝罪の意を表する(少なくとも「お騒がせした」ことについて)
2)調査結果を報告する(調査法と裏付け・データベースを公表)
3)原因分析結果を示す
4)改善案を呈示する(精神論などの抽象論ではなくシステム対策、それを実施する方法を説明)
5)処分の内容を明らかにする(

■マニュアル作りの無駄」

すべての場面に役立つ危機管理マニュアルはない。各場面の課題を抽出すると同じような内容になり汎用性を高めようとするとすればするほど曖昧な表現になる。
   「危機管理はマニュアルになじまない」
マニュアルは作業を標準化したルチンワーク向き。
他社のマネをした「マネアル」をつくるより、スタッフの育成や危機意識を向上させるほうがよい。

企業危機管理 実戦論 (文春新書)
田中 辰巳
文藝春秋

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1 コメント

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お取り寄せ (島尻888)
2009-05-10 21:39:14
そろそろ「ハマるお取り寄せ」にも期待してます・・・。
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