感染症診療の原則

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感染症と「補償」

2009-05-10 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
感染症対策でときどき「補償」という言葉が出てきます。

■休業補償

検疫法に基づきインフル症例の接触者が10日間指定の施設に停留していることについて、社会人の場合は休業をすることになります。食事や宿泊費などは国が負担しますが、休業補償は特にないそうです。

保育園で病原性大腸菌がブレイクし、しばし休園となると親も仕事を休むことになります(その間他の保育園に預けたりされると感染が他の施設に拡大することもある)。対策としては必要なのですが、それを決めた行政に親が「休業補償をしてくれるのか」とつめよることも珍しくないそうです。
(集団事例にならないように日々皆で協力することが大切ですね)


■お願いで病院にとどまっていただいた場合に発生する費用

症状があって指定病院を受診し訪問国情報などから検査をすることになりPCRの結果を待つ約6-7時間。場合によっては1泊することになります(陰性の場合は1日入院する費用が個人負担になってしまいます)。外来にずっといるわけにはいきません。
お願いベースでご協力いただくのでなんとも・・・な話ではあります。今後の別の感染症の対策のためにどこかで再検討されることかもしれません。


■発熱外来協力条件としての補償

 日本独自の発熱外来は自治体によって工夫されていて内容もことなります。
マニュアルを作っている時から問題になっていたのは、地域の医療機関に協力を依頼するする際に「タミフルの提供や自分・スタッフの補償はどうなるんだ?」ということでした。
 タミフルはプランに沿って扱われますが、この補償というのは、診療する上での自身の健康リスクに対してのものです。この補償も日本独特の話なので興味深いです。皆さんの周囲でもあるかもしれません。

 医療者自身の感染リスクについて補償をするという考え方はこれまでにもありました。
 HIV感染症は当初「補償のある国公立病院が見るべきである(なぜなら医療者に感染リスクがあるから)」といわれていました。 患者を診ている病院で危険手当を払うところもありました(今もあるのかわかりませんが)。
これは感染源が血液・精液・膣分泌液・母乳とわかった後の話です。

 「補償をしてほしい」という場合、具体的には何を?になります。特定の保険に入りその費用を行政が払えというようなことか、通常外来をクローズして発熱インフル症例対応専念で失う収入か・・。すでに各地で議論されていることですので関心がありましたら周囲に聞いてみてください。


■経済活動における補償

 感染症対策として規制が行われるのは個人の行動だけでなく法人・組織も同様です。経済的な大打撃を根拠無く(弱く)受けないようにするためには、現状の見極めと多くの人に理解される規制であることが大切。


今後も新しい感染症はどんどん出てくるでしょうし、そのたび対策も必要なので、いずれじっくり勉強したい話題のひとつです。

診療を断る医療機関について倫理とか医師法という言葉で批判記事がありますが、そんなにシンプルな話ではないですね。
どの病院も毎日の通常の診療をしなくてはならないなかで、今回のことでの混乱が少しでも減るよう早めの医療計画をアナウンスしていただきたいところです。
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