感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

さまよう親子

2016-04-02 | 非・悲・否・避「常識」
医薬品が適切に安全に使われるためには、原材料の質、工場での製造過程の質、出荷から納品までの質 対象に適切に使用される時点での質すべてにおいて安全性の管理が行われる必要があります。

今月、中国の山東省では、ワクチンへの信頼を揺るがす大事件がおきました。

"2011年から末端価格約5億7000万元(約99億2700万円)、髄膜炎や狂犬病など25種類のワクチンを違法に入手し、闇ルートを通じて中国全土の医療機関数百カ所に販売した元薬剤師の女性とその娘を摘発"

です。

"これらの違法ワクチンは、規定の冷蔵保管ではなく常温下に保存されていたことから、専門家はワクチンとしての効果は失われている可能性が高く、危険性があると指摘"


少し前、日本でも化血研が適切な報告をしていなかったことで、ルール違反として問題になりました。

このとき一番困ったのは「その期間に接種を受けた・受けさせた子どもの保護者」そして現場のスタッフだと思います。

適切に管理され届けられたものと信頼をして始めて成り立つシステムだからです。

そしてこれが適切でないとなると、その他のワクチンや医薬品についても疑念がわきます。

医薬品そのものだけでなく、扱っている関係者・企業・管理責任のある行政機関にも疑念の目が向けられます。

信頼が崩れるのは一瞬、信頼を取り戻すまでにはたいへんな時間と手間と努力が必要です。


そして、不安になった保護者は安全な製品を求めてさまようことになります。

(不活化ポリオワクチンを求めて新幹線に乗ってきたご家族を思い出します)。


中国では香港やマカオに移動して接種をしようと試みている親が増えているそうですが、そうすると今度は香港やマカオのワクチンの在庫不足が問題になります。


HK curbs vaccine access for mainlanders after China scandal


コールドチェーン」について講義をする際の事例としてわかりやすいですが、アクシデントではなく故意であるところがとても残念なニュースです。



この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ICAAC 046 - Resistant Gram-... | トップ | HPVワクチン報道・ソース メ... »
最新の画像もっと見る

非・悲・否・避「常識」」カテゴリの最新記事