Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

アメリカで牛肉を食する理由ー生活して理解する食文化ー

2012-07-11 | 水圏環境教育

(ウォールマートの店内,フレッシュという看板の下にある冷凍食品棚に冷凍ハリバットとサーモンがあるのみで,他は牛肉がメイン,本当のフレッシュなものは牛肉だけである)

アンカレッジ市内のスーパーマーケット「ウオールマート」に入ると,店内の片側を占めるフレッシュコーナーで大きく幅をとっているのは,生の牛肉コーナーである。豚肉は1コーナーだけ,生の魚介類は皆無で凍結したハリバットや紅鮭の切り身が格納されている。魚介類の冷凍物は決して安いものではない。当然,安くて新鮮で美味しい牛肉に走る。アラスカ滞在中は,主に牛肉を主食とした。その理由は,他に食べるものがないからでもある。

(側面全部が肉製品,肉が本当に好きなのですね。)

アラスカと言えば,ベニザケであるが,彼らのサケの食べ方は主にムニエルである。他には,シーフードスパゲッティに大きなブロックとして食したりする。本来の味はいいのだが,味と量とのバランスがよくない料理が多い。塩漬けにして少しずついただく荒巻ジャケという発想は見られない。

その点,牛肉はとても安く手に入り,手軽に出来て美味しいこと。10ドル出せばおいしいお肉が大量に手に入る。この日は,スカートという小々固めの牛肉を購入し,料理はとても簡単で,適度の大きさに切り,塩コショウをふり,赤ワインで最後に軽く煮込む。これが大変美味である。3人で3日間朝と晩にいただいてちょうどよい量である。

(10ドルで買ったスカート肉。固いが,ワインで煮るとうまい)
肉食生活に傾く理由は,バークレー市でもそうだったようにサケの本場アラスカでも同様であったことに驚いた。アメリカはランチャー(牧畜)の国なのである。牧畜の民からすると,水生生物を好んで食べている島国人の気持ちはなかなかりかいできるものではないであろう。

(料理も得意なためか,とても美味しい)

ただ,牛肉大量の飽和脂肪酸が含まれていることは事実。おいしいお肉を主食として毎日のように食べていれば,確実に健康に影響が出るであろう。そのため,脂肪分控えめの食事が推奨されているようだ。改めて,主食がご飯,副食が魚というスタイルがいかに健康にいい食スタイルであることを実感する。これからは,海外の方々に現地に来ていただき日本の食を体験していただきたいと願う。

フィヨルドクルーズ船にて「自然の見せかた」を学ぶ

2012-07-08 | 水圏環境教育
閉伊川大学校のエデュケーターと,自然ガイドに関する調査をかね,Sewardのみなとから出航する氷河クルーズ船に乗り込む。12時出航で17時寄港5時間のツアーである。

(閉伊川大学校のエデュケーターの方々)
Sewardはフィヨルドの切り立った山々の間に出来た小さな港町である。フィヨルドは氷河によって削られた山々がそびえたちちょうど宮古湾を巨大化した様な形状である。

船はゆっくりとSewardの港を出る。最初に船長から,そしてクルーから注意事項の説明と,National Marine Centerのレンジャーが乗り込んでいるとのアナウンスがあった。

(船から陸を望む,海沿いの平地には白い大型のキャンパーが軒を連ねている)

港を出るとレンジャーからクルーズ船による観察のポイントが説明された。ここの氷河は国立公園であり連邦政府によって管理されている。国立公園内は原則として人々は生活することができない。

レンジャーの存在によって,自然に対する価値付けが確かなものとなりより自然観察が楽しくなる。今回のレンジャーの説明の中で,特に印象的であったことは,雪解け水の説明,氷河の説明,そして説明の順序である。

雪解け水については,「氷河が解けることによって豊かな栄養を含んだ水が海水と交わり植物プランクトンを発生させる。この植物プランクトンは地球上の二酸化炭素の約半分を吸収している。二酸化炭素だけではなく,動物プランクトンの餌となり,数多くの生物を支えるものとなっている。氷河があることによって,オヒョウやクジラ,イルカ,ラッコ,アザラシ等が生活できるのである。」と説明していた。自然を間近に観察することによって,森川海のつながりと生物の関わりについてより深く理解できる。


(氷河によって半円状に削られた跡)

また,氷河については,氷河活動により山が削られているところを紹介しつつ,「年々氷河が薄くなっている。1年間に厚さ42mの氷河が失われている。100年前に比較して極端に大きな変化が見られる。このままでは,海面の上昇が危惧される。」と地球温暖化の現象について説明を受けた。島国の日本では緊迫感を持って海面上昇を捉えていないが,氷河が確実に減っている事実を目の当たりにすると人ごとではないことが理解できる。

(1909年のベアー氷河)

(2005年のベアー氷河)
確かに,アンカレッジでも日中は気温が25度を超え,最低気温も10度を下らない。氷河の厚さの変化を目の当たりにして海面上昇を危惧することは当然であろう。実際にフロリダではある都市は水没が予想されており,海面上昇に対するアダプテーションについて議論がなされている。一方,日本はどうであろうか。海面上昇に対して政府はどのように対応するのであろうか。

3つ目は,説明の順序である。氷河クルーズであり,目的は氷河であるが氷河だけではない。氷河についての説明の後,寄港しながらほ乳類の説明が始まる。楽しみはこれからである。氷河だけでも圧巻であるが,ほ乳類,鳥類の観察が始まる。これら大型生物も当然氷河の恩恵を受けているのである。ラッコ,アザラシが悠々と泳いでいだり岩の上で休んでいる光景を見ることができた。豊かな水が生物を育んでいるのである。

(アザラシの日光浴)

寄港まであと2時間という穏やかな内湾に移動後,船内から「おー」という歓声が上がる。ザトウクジラが姿を現したのである。一瞬だけ,尾を見せる。人々の視線が一点に注がれた。しかし,なかなか,姿を見せてくれない。船内の観光客は5分後のブリーズを見ようと海面に神経が注がれた。確かに,食用としての見方もあるが,ザトウクジラは食用としてよりもむしろ観察の対象としての価値が高い。

氷河が織りなす大自然の営みは人々の心を釘付けにする。最後のザトウクジラの勇姿を見て,「あ,そうか,氷河はこれだけ生命を育む偉大な自然なのだ」と確信にいたる。国内の遊覧船に比較すると5時間という長いクルーズであるが,あっという間であった。船もゆっくりと進み観察ポイントでは停止してくれる。日本の日帰りクルーズももう少し工夫を凝らすことによって,豊かな自然環境をさらに価値あるものに転換できるであろう。

フィヨルドでのクルーズに向けて1号線を南下

2012-07-06 | 水圏環境教育
アンカレッジから車で国道1号線seward 道を南へ2時間するとSewardという港町に到着する。氷河に覆われた山々を眺めならのドライブである。規模は異なるが
106号線沿いを走っているようなものだ。


この港町には水産加工業と販売を営む小さな店があった。水産加工業の看板につられて店内をのぞくと確かに魚はあるが,陳列ケースは幅1mと小さくハリバット(オヒョウといい,畳一畳になる巨大なヒラメ)とベニザケの塊が並んでいた。裏側にはスズキの軽自動車がとまっていた。ナンバーがなく,おそらく港内で使用するのであろう。Light Truckと書いてあった。

漁船は見えず,遊魚船が目立つ。


日本では考えられないが,港は一般の観光客向けのカラフルなお店が建ち並ぶ。

港内には釣具店も堂々と構えていた。アメリカ合衆国では,漁業権は州政府が管理している。私も,日釣り券を購入した。税込みで20ドルだ。1週間で50ドルである。特に,国籍は関係ないようだ。もちろん,海釣りもライセンスが必要である。


夏休みを利用して家族連れでロックフィッシュ(メバル,ソイの仲間か)とヒラメの仲間(オヒョウか?)を釣り上げた家族が記念写真を撮っていた。とても楽しそうである。自分の釣った魚をお店で買い取ってくれるようである。



日本では,川や湖では遊魚権が必要であるが,海に出れば誰でも自由に釣っていい。一方で,川,海の漁業権は,漁業協同組合が管理している。釣りでは自由に誰でも釣ってもいいが,漁業権はある一定期間従事している者に限られており,現実的に一般人に対し開放されていない。あくまでも海の漁業協同組合は漁業者のための組織であり,遊魚者のためのでもなければ,一般市民のためでもない。

明治初期には多くの漁業者が存在していたことから,漁業者を優遇する漁業権の制度が誕生したものと推察する。(ちなみに,漁業権制度を確立したのは,代議士であり水産翁の称号を持つ佐賀県出身の村田保という人物である。彼は,現在の東京海洋大学創設に貢献した人物の一人である。)日本の漁業の現状に合わせて,日本固有の制度が作られたとも言える。漁民の生活の向上と国民に対する安定的な水産資源の供給が大きな柱であったのである。しかし,漁民が少なくなり,多くが消費者となった今日において,漁民が優遇された漁業権の制度では,一般市民の海へ接する機会が限定的なものとなってしまう恐れがある。現状の水産行政機関はあくまでも漁民の立場に立った機関であり,一般人に対する配慮は十分ではない。海洋の持続可能な利用を考えた場合,生産だけではなく消費する側の体験を通した意識の改革が求められる。これからは,それらを調整する機関を十分に整備する必要があるだろう。



2014海洋教育の国際会議を東京,岩手県宮古市で開催します

2012-07-05 | 水圏環境教育

College of ExpolarationのPeter Tuddenhamが中心となり,国際海洋教育者の集いが開催されました。オーシャンリテラシーを作成した中心的人物の一人であり,研究者と教育者を結びつける重要な役割を果たしています。

この会議には,アメリカサモア,アメリカハワイ州,カルフォルニア州,ニュージーランド,オーストラリア,カナダ,チリ,日本が参加した。

この会議で話し合われたことは,国際的な海洋教育者のネットワークがどのように社会に貢献するべきかである。

海洋教育者として大切なことは教育を通して海の価値を高めること。海の価値を高めることはすなわち持続的な海洋の利用につながっていく。

教育はeducate:可能性を引き出すことが目的であり,海を題材として子供たちの可能性を開花していくことで,海の価値を高めることにつながる。

国際的な連携を深め,啓発し合うことは災害時の犠牲を最小限にとどめることが可能でり,災害発生後にもお互いにサポート体制を築くことができる。災害を環太平洋というスケールで捉えることで,局所的な災害は,実は共通性があったりする。

実際に,チリ,サモア,ニュージーランド,日本と大きな津波がそれぞれの国で発生しており,どこの国で発生するかが海洋教育者の懸案ごとであった。日本で津波が発生する直前,インドネシアのバリ島でも大きな地震が発生して,インドネシアの海洋教育者たちは大地震の発生を予期したという。

探究的な海洋教育の重要性を社会教育の場にもっと広く進めていくことがこれからの国際社会でも大きなテーマになっている。10月には水族館国際会議がケープタウンで開催され水族館における「教育の重要性」をテーマに開催される。この会議には日本から6名,中国から30名世界で合計400名が出席予定とのこと。

また,10月にはベルギーでヨーロッパで初めてオーシャンリテラシー会議が開催される。

11月にはチリで環太平洋海洋教育者ネットワーク(IPMEN)会議が開催されることが報告された。

さらに,2014年には,日本でIPMEN会議が開催されることとなった。
日本では,国際的な海洋教育の災害ネットワークの構築,魚食文化と海洋教育,持続可能な漁業と海洋教育等が議論される。場所は,東京海洋大学と今回の被災地である岩手県宮古市が会場として候補に挙がった。参加者からは,日本での開催を楽しみにしている。ぜひ,被災地において震災後日本がどのように立ち直っているのか,また子供たちの様子をぜひ見たいと語っていた。

事務局は,東京海洋大学,岩手大学,閉伊川大学校,日本水圏環境教育研究会他が担当し,民間企業,関連団体,関係自治体に協力をお願いする予定である。

第36回アメリカ海洋教育者学会カンファレンス2012, Anchorageに参加してきました。

2012-07-04 | 水圏環境教育
第36回アメリカ海洋教育者学会カンファレンス2012, Anchorageに参加してきました。
随時,紹介していきたいと思います。

今年で36回目を迎えました。最初は海洋教育の必要性を痛感した7人の高校教師によって立ち上がりました。今や,全米の海洋研究者や教育者とネットワークを築き会員数400名を超える国のカリキュラムを動かす大きな団体となりました。

私は2006年から毎年参加しています。今年は,アンカレッジで開催されました。日本からは学習院女子大学教授1名,閉伊川大学校のエヂュケーター2名が参加し,合計200名を超える参加がありました。最初は,言葉・文化による意思疎通の難しさを痛感していましたが,今や多くの大学の研究者や水族館の教育者と連携が深まり,お互いの教育研究に関する情報交換の場となっています。

この学会に付随して,環太平洋海洋教育者ネットワークという組織があり,今年はチリで開催されます。

写真は,学会紹介のポスター。うちの学生が2名が掲載されています。