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鹿児島市の司法書士喜山修三のブログ

相続や売買の不動産登記,会社設立や役員変更,債務整理,成年後見等を業とする司法書士事務所の所長の法律や日々の雑感を掲載。

登記簿上の地目が宅地で、固定資産税の評価証明書が畑の場合、そのまま所有権移転登記ができるか。

2023年12月24日 | 不動産登記法

 年の瀬に不動産登記の依頼を受けた。
 登記簿の地目は宅地になっているが、固定資産税の評価証明書は畑になっている。そのまま所有権移転登記ができるか疑問に思った。
 農地法では、登記簿上の地目が農地の場合は、農地法の許可が必要と規定されているので、例え登記簿上の地目が宅地でも、固定資産税の評価証明が畑となっている場合は、そのまま登記でるか、との疑問である。
  ネットで調べても法務局によって取り扱いが異なるようなので、鹿児島地方法務局に質問をした、回答はそのままでは登記できないという。
 現地が畑でなければ、固定資産税の評価証明を畑以外の地目に変えなければ駄目だという。まあ、そのとおりですよね。しかし、もし、きずかなかったら、と思うと背筋が寒くなりました。

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遺贈の単独申請

2023年04月24日 | 不動産登記法

相続人に対する遺贈による所有権移転登記が令和5年4月1日から単独で申請できるようになることは以前このブログにも書いたが、今年に入って早々とこの案件を依頼された時には「まさかこんない早く依頼があるとは」と驚いた、と同時にこの依頼者は、とてもラッキーだと思った。何しろ他の相続人の協力が要らないのである。
 書式に関しては司法書士会から連絡が入ると思っていたが、4月になっても何の連絡もないので、ネットで調べてみたら、ちゃんと法務省のHPに懇切丁寧な説明がされていました。 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001388918.pdf
  単独申請だから、相続と似たような申請書になるかと思っていたのですが、様式は遺贈の様式でした。登記権利者の所に(申請人)を書き込み、登記義務者は、被相続人です。被相続人の登記簿上の住所が、同人の最後の住所と異なっていた場合は、変更証明書は必要であるが、所有権登記名義人表示変更は要らない。
   原因は、年月日「遺贈」で登録免許税は、1000分の4。この点はこれまでと同じである。登記原因証明情報も住所証明書も、これまでの遺贈と同じである。
 単独申請ができる遺贈は相続人に対するものに限るので、あまり大きな影響はないかもしれませんが、遺言者が「相続させる」と書かずに、「遺贈する」と書いていても単独で登記の申請ができるようになったのは、一つの進歩であると思う。

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後見監督人の印鑑証明書

2021年05月19日 | 不動産登記法


 後見監督人が付されている後見人が不動産を売却するときには、後見監督人の同意が必要になりますが、その同意書には、市長村長発行の印鑑証明書が必要になります。
 後見人の印鑑証明書は裁判所で発行してもらえるのですが、後見監督人に関してはまだ裁判所が発行できるとする制度がないそうです。
 弁護士会の発行する印鑑証明書(私はまだ見たことはないのですが)では登記ができません。それは、弁護士会の発行する印鑑証明書で登記ができるとする登記先例がないからです。
 後見登記事項証明書の後見監督人の住所が個人の住所地で登録されている場合は、なんら問題ないのですが、後見登記事項証明書が弁護士の事務所で登録されている場合(多分実務上はこちらの方が圧倒的に多いと思われます)は、弁護士会発行の証明書が必要になります。
 その証明書には、弁護士名、事務所名、事務所所在地、自宅住所、証明書を発行した理由が記載されています。 
 備忘のためには、ブログに書いておくに限ります。検索スピードがとても速い。

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登記識別情報を提供できない正当な理由(物件が多数の場合)

2021年04月08日 | 不動産登記法

 司法書士が担保設定の登記をするときには物件所有者の登記識別情報を預からなければなりませんが,その数が多数の場合は,司法書士もいつもより緊張します。それは多分,預ける依頼者も同じ気持ちかも知れません。
 物件が多い場合で,登記識別情報を添付しなくても良い方法はないものかと調べてみると,その期待に応える規定がありました。不動産登記事務取扱手続準則(以下「準則」と言う。)には,登記識別情報を提供することができない正当な理由が次のとおり規定されています。
 登記識別情報が(1)通知されなかったと場合(2)失効している場合(3)失念した場合で,これらは物理的に無理なので,とても分かりやすいです。平成20年の通達で,登記識別情報を提供することができない正当な理由として(4)登記識別情報を提供すると管理の上で支障が生じる場合(5)登記識別情報を提供すると登記申請に係わる不動産登記の取引を円滑におこなうことができないおそれがある場合の二つが追加されています。ここでは(4)の説明は割愛し,(5)の説明を書くことにします。
  登記識別情報は,登記済権利証書と違い,不動産ごとその所有者または共有者毎に発行されます。所有者ごとに分かれているので,管理をする上では便利ですが,それを提供をするのはとても手間暇がかかる場合があります。
 上記(5)に該当する場合としては,不動産の数が多かったり,共有者の人数が多数にのぼる場合は,電子申請で登記の申請を行う場合に,登記識別情報を暗号化し,提供様式を作成するのに相当な時間を要するので,迅速な取引を行うことができなくなるおそれがあります。そこで,このような場合は,登記識別情報を提供することができない正当な理由があると考えられます。
 したがってこのような場合に,準則43条の事前通知を選択するか49条の資格者代理人による本人確認情報の提供をするかは,依頼者との協議によります。この規定は,登記識別情報を預ける依頼者にも,登記の申請をする司法書士にも実際に登記をする登記官にも使い勝手の良い規定だと思います。
 さらに詳細な説明を読みたい方は,「逐条解説不動産登記事務取扱手続準則(金融財政事情研究会)」をご覧下さい。

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中国国籍を有する人の所有権移転登記。

2019年02月04日 | 不動産登記法

 先日,中国の国籍を有する人の所有権移転登記の依頼があった。住民票を見るとローマ字と漢字が併記されていた。以前は中国国籍を有する人の場合,日本語の通称名と中国読みの漢字が書かれていたが,平成25年の住民基本台帳法の改正によりこのように変更されたものである。
 ローマ字をそのまま登記するのが一番安易であるが,果たしてローマ字が登記できるか。ネットで調べると,ローマ字は不動産登記では使えないとある。なるほど,ローマ字はカタカナに変換しなければならない。
 では,漢字の方はどうか,再びネットで調べる。「中国で使用されている簡体字などを用いている場合には、まずこれに対応する日本の漢字を検索する必要があります。」(安西雅史氏のブログより)住民票を見ると,あまりなじみのない漢字であった。 
 とりあえずこれだけのことを調べて取引に臨むと,登記名義人になる方から,カタカナではなく,漢字で登記して欲しいと言われた。これまで調べた内容を説明し,漢字で登記できる場合は漢字で登記しますが,できない場合はカタカナになる旨の了解を得る。
 住民票に漢字で書かれているので,登記できるとは思ったが,念のために法務局に確認し,漢字で登記を申請し無事完了した。
  最近は数多くの司法書士がブログを書いているので,ネットで調べるときに大変助かる。

 

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登記義務者の印鑑証明書は,連件で申請する承諾書の印鑑証明書は援用できない,という先例。

2018年12月19日 | 不動産登記法

 登記先例には,訳の分からないものがいくつかある。この先例もその一つだと思うが,皆さんはいかがお考えでしょうか。
 「不動産登記施行細則42条又は42条の2の規定により提出する印鑑証明書については,連件で申請した申請書の添付書面の第三者の許可・同意又は承諾を証する書面の一部として添付した印鑑証明書をもって,これを援用することはできない。」(登記研究505号,)
  ここでいう不動産登記施行細則は平成16年に改正されるまえのそれである。
また,42条の2の規定は,保証書に関する規定であるので,これは考えない。
 平たくいうと,登記義務者の印鑑証明書は,連件で申請する承諾書の印鑑証明書は援用できない,という規定である。その理由は,登記義務者の印鑑証明書は承諾書の印鑑証明書とその根拠規定が違うからと推測される。
 例えば(先例とは逆の順番になりますが),(1)根抵当権の分割譲渡と(2)被担保債権の範囲の変更登記を例にとると,(1)根抵当権の分割譲渡に添付する根抵当権設定者の承諾書に添付する印鑑証明書は,(2)の根抵当権設定者の登記義務者の印鑑証明書として援用できないということです。そのために,根抵当権設定者は,わざわざ印鑑証明書を2通準備しなければなりません。印鑑証明書原本還付が認められていた時代は,どちらかを原本還付という方法もありましたが,今はそれができません。
 承諾書に添付した印鑑証明書が3ヶ月を過ぎていたら仕方ありませんが,そうでなければ援用を認めていいと思うのですが……この登記先例って,昔の頑固親父みたいですね。

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不動産競売申立の代位原因

2018年09月12日 | 不動産登記法

 債権者代位で登記をすることは数年に1回しかない。登記をするときは代位原因を苦労して探すが,登記が終わると,きれいに忘れてしまう。世の中には,忘れたくても忘れられないこともあるが,仕事上の知識は,残しておきたいにもかかわらず跡形もなく消えてしまう。砂に書いたラブレターか。 

 今度依頼があったら苦労しないように,ブログに残しておきます。
(1)金銭債権に基づく強制競売の場合。「年月日金銭消費貸借の強制執行」
(2)(根)抵当権に基づく任意競売の場合。「(根)抵当権の実行による競売」
 代位原因証書は,いずれの場合も「競売申立受理証明書」になります。
 
   参考書式,「相続財産管理人,不在者財産管理人に関する実務」正影秀明著,「月報司法書士8の中の債権者代位による登記について」(大﨑宏典氏の記事)

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工場抵当法第3条目録の作成方法

2017年10月04日 | 不動産登記法
【平成29年最新版】D1-Law nano法令COMPLETE 平成29年版 ([パソコンソフト])
クリエーター情報なし
第一法規株式会社

 工場財団や工場抵当に関する登記は,年に1回もしくは数年に1回しか依頼がないので,登記のたびに書籍を調べなければなりません。そこで今回は関連の条文を調べたので,備忘のためにアップしました。
 工場抵当法3条2項に規定する法務省令が「工場抵当規則」であること,また工場抵当法3条目録の記載方法が,工場財団目録の規定を準用していること,様式が別記第二号に定められていることが分かると,調べやすくなると考えます。
 法令は,第一法規が販売している「法令COMPLETE 平成29年版」を使用しました。USBで提供されていますが,規則まで掲載されているので助かります。

〇工場抵当法
 〔工場に属する土地建物上の抵当権設定の登記事項等と目録作成〕
第三条 工場ノ所有者カ工場ニ属スル土地又ハ建物ニ付抵当権ヲ設定スル場合ニ於 テハ不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第五十九条各号、第八十三条 第一項各号並ニ第八十八条第一項各号及第二項各号ニ掲ゲタル事項ノ外其ノ土地 又ハ建物ニ備付ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニシテ前条ノ規定ニ 依リ抵当権ノ目的タルモノヲ抵当権ノ登記ノ登記事項トス
②登記官ハ前項ニ規定スル登記事項ヲ明カニスル為法務省令ノ定ムルトコロニ依リ 之ヲ記録シタル目録ヲ作成スルコトヲ得
 ③以下省略

 ○工場抵当登記規則
(法第三条第二項の目録及びこれに記録すべき情報への工場財団目録に関する規定の準用)
第三条 第八条及び第十七条の規定は法第三条第二項の目録について、第八条及び 第二十五条の規定は法第三条第三項に規定する目録に記録すべき情報について、 それぞれ準用する。この場合において、第二十五条第一項中「別記第二号様式」 とあるのは、「別記第一号様式」とする。
(機械等の記録)
第八条 工場財団目録に機械、器具、電柱、電線、配置諸管、軌条その他の附属物 を記録するときは、次に掲げる事項を記録するものとする。ただし、工場財団目 録に軽微な附属物を記録するときは、概括して記録することができる。
一 種類
二 構造
三 個数又は延長
四 製造者の氏名又は名称、製造の年月、記号、番号その他同種類の他の物と識別 することができる情報があるときは、その情報

(工場財団目録に記録すべき情報を記載した書面)
第二十五条 工場財団の所有権の保存の登記の申請を書面申請によりするときは、 申請人は、別記第二号様式による用紙に工場財団目録に記録すべき情報を記載し た書面を提出しなければならない。
2 前項の書面には、申請人又はその代表者若しくは代理人(委任による代理人を 除く。次項において同じ。)が記名押印しなければならない。
3 第一項の書面が二枚以上であるときは、申請人又はその代表者若しくは代理人 は、各用紙に当該用紙が何枚目であるかを記載し、各用紙のつづり目に契印をし なければならない。ただし、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が二人以 上あるときは、その一人がすれば足りる。
4 第十五条の規定は、第一項の場合について準用する。

別記第二号(第二十五条第一項及び第四十条第二項第二号関係)/受付/平成年月 日/第号/登記番号/工場の名称/工場財団目録/何工場/所有者株式会社何/ 代表取締役何某/土地の部/所在地番/予備/建物の部/所在/家屋番号/予備 /工作物(建物を除く)の部/所在/種類/構造/面積又は延長/予備/

 

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登録免許税 順位変更 非課税法人

2016年09月30日 | 不動産登記法

 ブログは人のためならず。ある記事について書いたことを忘れ,検索したら数年前の自分のブログに当たった。そこで,検索しやすい標題の方がいいと言うことに気付きました。

 (根)抵当権の順位変更の登記を申請する場合において,申請人の一部の抵当権者が非課税法人であっても,その抵当権者の分について非課税とすることはできない(不動産登記総覧2070ノ70ノ3・登記研究385号83頁)

 銀行と非課税法人との順位変更の時に,「あれ,幾らだったけ?」と考えるんですよね。

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地目変更の登記。農地法の許可を得た農地を宅地に変更するには

2016年07月05日 | 不動産登記法

司法書士の仕事をしていると,時々,地目変更についての質問を受けます。質問が多いのは,農地法の許可後に,地目を宅地に変えたいというのと,雑種地に変えたいというものがあります。その中で今日は宅地への地目変更について。「農地法の許可を得て所有権移転登記をしました。宅地に地目変更をしたいのですがどうすればいいですか?」という質問に対する説明です。

 宅地について,不動産登記事務取扱準則68条では次のとおり定義しています。
宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地。建物の敷地という言葉は分かりやすいが,及びその維持以下の文章は,わかりにくいですねー。
 このような質問を受けたときは,「地目は現況主義なので,建物を建てた後に地目変更をするのが一番確実ですよ」と答えています。

 家が完成した後で地目変更登記をするのが最も簡単だと思うのですが,昭和56年8月28日民三第5402号民事局長通達二の1は,対象土地を宅地に造成するための工事が既に完了している場合であっても,この土地が建物の敷地に供されているとき,又は近い将来それに供されることが確実に見込まれるときでなければ,宅地への地目変更はしないとしています。

 そして,近い将来建物の敷地に供されることが確実に見込まれるものとして,(1)建物の基礎工事が完了しているとき,(2)建築基準法第6条第1項の規定による確認がされているとき,等々この他にも2つの規定が記載されています。詳しい説明は,『表示に関する登記実務第2巻』223頁にあります。 

 なお,地目変更登記に関する質問は,土地家屋調査士か法務局にお尋ねになるのがベストです。

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抵当権の抹消登記原因,年月日不詳弁済

2016年02月05日 | 不動産登記法

 
  大正15年に設定された抵当権の抹消登記を依頼された。むむ,昭和元年である。
 弁済の日付を確認したところ,「全く分からない」とのこと。
 「それは,そうだよなぁー分かる方が不思議だわ」
 「年月日不詳弁済」で登記ができるか,友人間のMLで質問したところ,「抵当権抹消の登記原因を『年月日不詳弁済』とすることができる」(登記研究567号)という記載がありますよと教えられた。
 念のためにと思って,手許の(登記研究567号)を見たところ,本の背に自分の文字で「年月日不詳弁済」と書いてあった。
 以前調べて,本の背を見て直ぐに分かるようにと思って書いたのだろうが,その記憶がなかった。トホっ。
 まぁ,また憶えればいいかぁ!それにしても,昭和元年と昭和64年生まれの方には,未だお目にかかったことがありません。それだけ貴重な元号ですよね。

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不動産登記,公証人の認証による本人確認

2015年04月27日 | 不動産登記法

  売主は東京在住のAさん。売り地は,甲地(Aの単独所有)と道路持分である乙地(ABの共有)の2筆。2筆とも昭和50年代に相続で取得していた。
 事前に,甲地は権利証があり,乙地は権利証がないことが分かっていたので,「本人確認情報」を作成するための資料として,健康保険証と年金手帳など本人確認ができる書類を2通持って来て貰うように,仲介業者を通じてお願いしていた。その前に,運転免許証やパスポートなどのように顔写真の載っている公的な証明は,お持ちでないことも聞いていた。 
 決済現場で,売り主に本人確認の書類を求めたところ,提示されたのは,健康保険証だけ。年金手帳が必要という話は聞いてないという。これには理由があり,買主と売主の仲介業者間の間で,本人確認書類が,健康保険証と住民票で足りることになっていたらしい。電話とFAXであれほど説明したのに……。 
 ABは姉妹で,長姉のBが鹿児島に住んでいて,Bさんが持っている可能性が高いので,Bさんに電話で事情を説明して,B宅に行った。ところが,乙地の権利証は,全く見当がつかないという。
 このままでは決済ができない。一旦東京に戻って貰って,日にちを改めるしかないかと思ったときに,公証人の認証を思いつく。公証人は,司法書士と違い,実印と印鑑証明書で本人確認ができるはずである。
 Aさんに持参した印鑑証明書の数を数を訊くと幸いにして2枚あるという。早速公証役場に電話をして,午後からの認証の時間を約束する。
 約束までの時間に,日本加除出版の『Q&A登記に使える公正証書・認証手続き』で調べると,196頁に「申請情報(登記申請書)や添付情報である委任状について公証人の認証がされている場合には,結果的に登記所の事務処理過程において本人確認「の」ための事前通知は省略されますので,……」 
 認証には委任状が必要であることが分かったので,仲介の方に委任状をとりに来て貰い,その日に認証をして貰い,翌日の朝に決済を終了した。そのときの委任状は,登記原因証明情報を援用する形式のものではなく,登記内容がすべて分かるものを作成した。原因は,「平成27年4月〇日予定の売買」と作成。
 後日この経緯を大阪出身の司法書士に話したら「都会では結構利用されているようですよ」とのこと。実際はどうなんだろう?
 上記の本に,公証人が認証をする文例として次の3つ載っている。(ア)公証人が嘱託人の氏名を知り,かつ,面識があり場合。(イ)公証人が印鑑及び印鑑証明書により本人確認をしている場合。(ウ)運転免許証により本人確認をしている場合。司法書士の場合は,公証人に比べて本人確認の方法が厳しくなっている。(上記の内容は,事実とは若干ことなります。)

 

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所有権移転仮登記の抹消(単独申請・登記義務者の変更証明書添付)

2014年08月09日 | 不動産登記法

 相続登記を完了した不動産の「所有権移転仮登記の抹消」を依頼された。
  昭和46年に被相続人であるA名義に所有権移転登記がなされているが,それより2年前の昭和44年にAを仮登記権利者とする所有権移転仮登記がなされている。本来昭和46年の所有権移転登記の時に,仮登記に基づく本登記をすれば良かったのであるが,何故か仮登記は無視されて,同じA名義に所有権移転登記がなされていた。
 したがって,その仮登記の権利自体は混同で消滅しているのだが,その不動産を売却しようとしたところ,仮登記の抹消を指摘されたとのこと。

 Aを仮登記権利者とする所有権移転仮登記の登記済証の有無を尋ねたところ,当然のことではあるが,無いとの回答。
 当初,事前通知による双方申請を考えていたが,登記を急ぐとのこと。そこでひらめきました(本当は直ぐに思いつかないといけないのでしょうが),不動産登記法110条の規定による登記上の利害関係人からの単独申請。これだと,登記済証を添付しなくても直ぐに抹消登記がなされます。今回の件では,作成しなければならないのは,仮登記名義人の相続人全員からの抹消承諾書です。
 「仮登記上の利害関係人」には,共同申請で抹消する場合の仮登記の登記権利者(当該仮登記の申請とした当時の仮登記義務者)も含まれる(青山修著『仮登記の実務298頁』)

 今回申請する所有権移転仮登記抹消の登記義務者たるAは,昭和46年以降住所を変更しているので,その変更証明書を添付したが,仮登記名義人の住所変更登記までは必要ない。
 仮登記の抹消を申請する場合には,当該仮登記名義人の表示に変更(更正)を生じていても,右の変更(更正の事由)を添付すれば,その変更(更正)の登記を省略することができる。(昭和32年民事局長回答の要旨) 

 バブル経済の頃までは,所有権移転や賃借権設定の仮登記の依頼もそれほど珍しくはなかったのですが,今では珍しい登記になりました。登記は時代を反映します。

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法定持分による共同相続登記後に遺産分割協議がなされた場合の登記手続き

2013年10月23日 | 不動産登記法

1 法定持分による共同相続登記は,共同相続人の1人からできますが,何らかの事情で共同相続登記がなされた後に,共同相続人間で遺産分割協議が成立した場合の登記手続きはどうすれば良いかという質問に関しては次の回答がなされています。 

「遺産分割協議により持分が増加した者を登記権利者,持分が減少した者を登記義務者とする共同申請により,「遺産分割」を登記原因とする旨持分移転の登記をすることになります。持分が増加した者のみによる単独申請は許されません」(幸良秋夫著「設問解説相続法と登記」188頁)

2 さらに,法定持分による共同相続登記がなされた後,遺産分割協議が成立しない間に共同相続人の1人が死亡し,新たな相続関係が発生した場合はどうすれば良いかという質問には,次のとおり回答されています。
 
 「第1次相続人と第2次相続人との間において有効に遺産分割の協議を行うことができますので,その協議が成立した場合の登記手続については,例えば,被相続人甲名義の不動産につき,乙,丙及び丁名義に共同相続登記がされた後,丁が死亡し,その後乙,丙及び丁の相続人A・B間において,丙の単独所有とする遺産分割協議が成立した場合には,丁の相続人A・B名義への共同相続登記を経ずに,遺産分割を登記原因として,記の申請をすることができます(相談事例・登記2巻10号176頁)。
 丁の相続人A・Bは,当該遺産分割協議の成立により,丁名義の持分登記について丙への登記引渡義務を負ったものと解され,その場合,不動産登記法62条ないしその類推適用により,直接丙への持分移転登記を認めても差し支えないと考えられます。また,上記事例において,亡丁の単独所有とする協議が成立した場合には,遺産分割を登記原因として亡丁への持分移転の登記の申請をすることができ,この場合,亡丁からA,B名義への相続登記をする際,登記原因日付が前後することになっても,受理して差し支えないとされています(相談事例アラカルト・登先35巻5号154頁)」(上記幸良秋夫著192頁)

 最後の「この場合,亡丁からA,B名義への相続登記をする際,登記原因日付が前後することになっても,受理して差し支えないとされています」というのは,事実のとおり登記する,ということでしょうね。

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債権者代位登記における,代位原因と代位原因証書

2013年09月29日 | 不動産登記法

債権者代位による登記は,案件が少ないだけに,依頼があるとその代位原因と登記原因証明情報(代位原因証書)で戸惑うことが多い!先日民法28条第2項の競売の前提としての債権者代位登記を経験しました。年度や日付,相続人の人数等はフィクションでああり,事実とは異なります。

1 約5年前に,遺産分割の調停が不調に終わり,結局数筆の不動産を5人の共有  (法定持分)とする遺産分割の審判がなされました。今年に入り,その後民法25 8条1項の規定に基づき共有物分割の裁判をしましたが,裁判所は民法288条 第2項の競売を命じました。

2 上記の遺産分割の審判がなされて5年余りが経過したので,その間に共有者の 1人が死亡したために,競売をするためには,相続登記を経由しなければならな いという案件でした。

3 亡くなった相続人の誰か1人が相続登記に協力してくれれば債権者代位という 面倒な手続きは要らなかったのですが,実際に競売の申立をしようとしたのは, その相続人の相手方でした。 
 
4 代位登記で頭を悩ますのは,代位原因と代位原因証書ですが,今回は次の方法 で無事登記を完了することができました。
  (1) 代位原因 平成25年6月10日判決に基づく競売
    (2)  代位原因証書 判決正本,確定証明書,競売の受理証明書
     * 個人の意見(何の力もありませんが)としては,判決正本とその確定証明    書があれば,競売の受理証明書までは要らないと考えたのですが,法務局    の見解は,受理証明も要求されました。
 
5(遺産分割に関する感想)
   判決(共有)→共有物分割の調停 →不成立 →共有物分割の裁判 →民法 288条第2項の競売という流れは,ごく自然だと思うのですが,こういうケースをあまり見聞きしません。ということは,遺産分割調停の成立率(この表現でいいのでしょうか)は,相当高いと推測されます。まぁ,少々の我慢で済むことでしたら,5,6年もかけて上記の道を歩むよりは,ずっと良いと思います。

 

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