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鹿児島市の司法書士喜山修三のブログ

相続や売買の不動産登記,会社設立や役員変更,債務整理,成年後見等を業とする司法書士事務所の所長の法律や日々の雑感を掲載。

「ひまわり」幻冬舎 新川帆立

2025年03月01日 | 

 感動しました!!

 著者が、最後の謝辞の頁で、「本書は、実在の人物をモデルとした「モデル小説」ではりません」と述べています。しかし、リハビリで頑張る姿などは、とてもリアリティがあり、普通に食事ができる今の自分の体に感謝しました。感動で胸が一杯になります。
 本の紹介というものはとても難しい。書きすぎるとネタバレになるし、書かないとどんな本なのかも内容が分からない。
 ということで、結局読んで見るしかない。482頁もある本なので、読み終わるのにそれなりの時間はかかるが、時の経つのを忘れさせてくれます。
 物語が終盤にさしかかり、残りのページが少なくなると、読み終わるのがもったいない、あるいは寂しい、もっと読み続けたいと等、様々な感情が湧きます。
 本書の帯を参考に紹介するとこんな感じでしょうか。
 商社に勤める33歳の主人公ひまわりは、出張帰りに歩道に立っていて交通事故に遭い、頸髄を損傷してしまう。意識ははっきりしているが、上から六つ目の頸髄を損傷しているので、肩から下が動かない。
  そんな女性が、幼馴染みの検察官から弁護士になることを勧められ、目標に向かって努力する物語りです。(ん~~~~ん、紹介が下手すぎる)
 とても良い本です。そうそう、表紙の絵もきれいです。 

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「60歳から食事を変えなさい」栄養管理士森由香子著

2022年07月17日 | 

 60歳を過ぎても若い頃と同じ様な食生活を続けていると、糖尿病、脂質異常、高血圧をはじめ脳梗塞や心筋梗塞といった生活習慣病のリスクがあがると著者は言う。
 一方、年をとってきたからといって素食にすると、筋肉や骨の量が減って運動機能に問題を起こしたり、疲れやすくなったり、心身の状態に支障をきたしたりするとも言う。
 また、今では食事をとときは野菜から食べるいうことは、既に常識になりつつあるが(ここは私の発言)、著者は、60歳を過ぎたら、「野菜ファースト」を止めて「肉や魚、卵大豆、大豆製品から食べる「タンパク質ファースト」に切り替えましょうと言う。
 それは、野菜でお腹がいっぱいになっておかずを食べなくなると、タンパク質の摂取量が少なくなると、筋肉の量や質が低下し「フレイル」を招きやすくなると説明します。
 巷には、一日一食が、あるいは一日二食が体に良いという本もあふれているが、著者は、一日三食主義で、朝ご飯もしっかり食べる派である。
 「ま・ご・は・や・さ・し・い」を実践している方もいると思うが、著者が考えた合い言葉は、「か・き・く・け・こ・や・ま・に・さ・ち」です。それは、海藻・きのこ類・果物・鶏肉(卵)・穀類(芋類)・野菜類・豆類(種実類)・肉・魚・チーズ(乳製品)です。甘いもの以外、主な食材は全部入っているような。
  健康になりたいのは皆さん一緒ですが、さてどちらを実践しましょうか。

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英傑の日本史 信長・秀吉・家康編

2018年08月06日 | 
英傑の日本史 信長・秀吉・家康編 (角川文庫)
井沢 元彦
KADOKAWA

 学生時代,歴史の科目は嫌いだった。日本史はまだ親しみがあるものの,世界史に至っては,あのカタカナの人名や場所の名前が覚えられなくて。おまけにあの年代と出来事の記憶。どないして覚えるねん!「そんな昔のことを勉強してどうするんだ」と思ったのは,覚えられないことの言い訳であった。
 ところが,年を重ねるごとに歴史に関する本を時々読むようになった。それは加齢とともに,大正時代や明治時代がそれほど昔の話ではないことに気づいたことと全国の名所旧跡を回ると,歴史に関する記述を必ず目にするからである。
 とはいえ「歴史小説」にはなかなか手が出せない。歴史小説は,上中下はまだ短い方で,全4巻,全六巻,全八巻,長いものでは全15巻というものもある。
 それを読み出すと,仕事以外はすべて読書で,一日が終わりそうで怖い。
 その点この本は300頁弱であり,数時間で読み通せる。信長編・秀吉編・家康編と区切れば,数回に分けて読むこともできるし,それぞれの人物の特徴も知ることができる。信長も秀吉も家康も,全然違う意味で改めて凄い,と思いました。

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デートです。 「ぼくは明日,昨日のきみとデートする」七月隆文著

2017年06月29日 | 
このマンガがすごい! Comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする 3 (このマンガがすごい!comics)
クリエーター情報なし
宝島社

 昨日,車で信号待ちをしていたら,手をつないだアベック(ペア)が目に入った。
 後ろ姿から推測するに,男女とも20代と思われる。
 二人で手をつないで歩いているだけでも幸せそう。うらやましい~~
 「デート」です。昔はその言葉を聞いただけで,うきうきしたものです。
 10代,20代の頃この言葉にどれほど心ひかれ,脳のエネルギーを消費したこ とか。
 あの時間を法律の勉強に充てていたら,私はもっと立派な司法書士になれただ ろう?!
 『ぼくは明日,昨日のきみとデートする』不思議な題名ですが,読み終えるとその意味が分かります。
 甘酸っぱくて切ない物語ですが読後感は爽やかです。
 デートの気分を味わいたい方,あのときの気持ちを思い出したい方はどうぞ。
 小説家ってすごい!

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代書屋と代筆屋

2017年03月04日 | 
ツバキ文具店
小川 糸
幻冬舎

 司法書士は,その昔代書屋と呼ばれていた。私が就職した昭和54年の頃でも,時々代書さんと言われていた。さすがに平成に入ってからは,もう言われなくなった。
 ツバキ文具店の主人公である鳩子は文具店をを営みながら副業として代筆屋をやっている。
 司法書士の代書は,不動産登記法や商業登記法に基づく申請書の代書(正確には代理人となって申請するから単なる代書ではないが)であるが,鳩子の仕事は依頼者の名前で依頼者に変わって手紙を書くので,まさしく代筆屋である。
 ペットの猿が死んだ人へのお悔やみ状,離婚した夫婦の報告書,絶縁状,夫(依頼者にとってはお父さん)の手紙を待ちわびている認知症にかかった母への手紙など,しんみりしたり,あるいはなるほどと参考になる手紙ばかりである。
 文字のきれいな人って,色々な文字が書けることに感激!
 物語の舞台は鎌倉。鎌倉って本当にお寺だらけですよね。鎌倉は町全体が巨大なお墓といっても過言ではない,とか心霊スポットだらけだとか鎌倉にすんでいる人にしか言えない言葉だと思います。
  鶴岡八幡宮,鎌倉宮,若宮大路などが頻繁に出てくるので,鎌倉に観光で行かれた方にも親近感があります。
 鳩子は,祖母に厳しく育てられその期待通りに文字の練習をするが,とうとう高校2年の夏に反乱を起こして不良になる。その後祖母が死ぬまで,心を通わせて話をすることがなかった。でも祖母はいつも鳩子のことばかり考えて生きていたことを,イタリヤから来た青年の持参した手紙で知る。家族も恥ずかしがらないで話をしないといけませんね。
 鎌倉と手紙と文房具が好きな人にお勧めです。心がほんのり温かくなります。

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なんくるないさー

2017年01月16日 | 
なんくるない (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

一昨日も寒かったが,昨日も寒かった。今日は,寒さ対策の下着を着たら,それほど寒くなかった。何事にも対策は大事ですね。

若者に人気のある吉本ばななさん,数年前(十数年前かも知れませんが),キッチンを読んだが面白くなくて,途中で読むのを止めた。

ところが,先日ある人から薦められてキッチンを読んだら大変面白かった。それならばと再び手にしたばなな本がこの『なんくるない』である。

個人的な傾向として,沖縄を舞台にした小説を購入する確率は,東北地方を舞台にしたものより遙かに高い。やはり親近感からくるんでしょうね。

離婚によって傷つけられた女性が,書店でそれも店員に罵倒されて更に傷つく。そんな女性が旅行で訪れた沖縄で,その自然や人々に癒やされる

という物語である。吉本ばなな氏の沖縄の風や夕暮れや雨の表現が絶妙である。やはり小説家は凄い!それにもまして主人公の心の変化のとらえかたが

巧いのは言うまでもありません。つらいときは,つぶやきましょう。なんくるないさー,なんくるない,と。

 

 

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慈雨 柚月裕子著

2017年01月12日 | 
慈雨
柚月 裕子
集英社

柚月裕子氏の小説は,なぜここまで心にしみるのか。
 物語を読み終えた後は,「もっと女房に優しい言葉をかけなければ」と思うのだが,それは読み終えたときの感傷であり,顔を見るといつもの会話になる。
 まあ,現実はそんなものですよね。
 定年退職をした警察官が,妻と一緒に四国で四十十八カ所の寺巡りをしながら,現実に起こった事件解決に協力する物語である。夫婦の会話や親子の心遣いが胸を打ちます。
 現実の世界では定年退職した夫が妻に,夫婦二人でのお遍路の旅を提案したとしても,さて何人の方が受け入れてくれるのだろう? 
 現実には次のどちらかでしょうね。
 1 二人だけで,しかも歩く。冗談は顔だけにして
  2 温泉とか京都なら考えてもいいわ 
  3 私は忙しいから,一人で行ってきて
  4 返事なし 
 男は,現役の時は仕事で鍛えられ,定年後は妻に鍛えられる。  

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終わった人 内舘牧子著

2017年01月09日 | 
終わった人
内館 牧子
講談社

 ここ数年,「今年の〇月で定年です」という年賀状を貰うことが多くなった。同級生のほとんど(と言っても12分の9ですね)は昨年還暦を迎えたので,公務員になった人も今年の3月で定年です。
  ここ数年「定年」という言葉に敏感になっているのですが,昨日本屋で見つけた本は,「定年」ではなく「終わった人」という題。著者は内舘牧子氏です。
 何とひどいネーミング,と思ったのですが,帯には「14万部突破!大反響が止まらない。ベスト&ロングセラー「定年」小説と」書かれています。
 「大反響」今まで聞いたこともないな,「14万部突破」これ以上儲けさせなくでもいいよな,などと思いつつも少し読んだら面白そうな予感。そうなんです,ベストセラーに弱いんです。そうそう,「二人っ子」の内舘牧子氏にも。
 私は司法書士なので,「定年」と言われてもあまりピント来ませんが,60歳,あるいは65歳になったからといって,人間の能力が極端に落ちることはないので,「定年」は組織の問題でしょうね。
 定年を迎えた東京大学法学部卒の主人公鈴木も,仕事をしたいと熱望している63歳の男性である。自分自身が一番やりたいのは,ジムに通うことや趣味に生きることではなく,仕事に打ち込むことである。そんな鈴木の願いが叶えられて,あるIT企業の顧問に就任することになった。ここまでが物語の3分の1くらいでしょうか。
 本書に出てくる言葉「卒婚」。離婚ではなく,結婚を卒業するという意味です。「夫婦別居」と同義語だと理解しましたが,これから増えるかも知れませんね。
 そしてもう一つ「思い出と戦っても勝てねんだよ」プロレスラーの武藤敬志さんの言葉ですが,いい場面で使われています。   
 「定年」は「生前葬」で,定年を受け入れられないことを「成仏していない」と言わせています。なんだか後ろ向きのことばかり書いてしまいましたが,物語の最期は前向きな場面で終わりますからご安心下さい。
 ♪過ぎてしまえば みな美しい♪♪過ぎてしまえば みな美しい♪  なるほど,思い出には勝てません。

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アンマーとぼくら。有川浩著

2017年01月03日 | 
アンマーとぼくら
有川 浩

講談社

  「ー那覇空港はいつもこうだ」(9頁)の文章と作者が有川浩氏ということで購入を決めました。本を買う同機って,結構単純ですね。 
 大好きな実の母が亡くなったのは,主人公が小学校4年生頃。その地は北海道でした。それから,約1年後,父は沖縄の女性と結婚し主人公と共に沖縄に移り住む。その女性が主人公の2番目の母親になる。簡単に書くと,これらの人間関係中心に描いた物語である。
 

 昨年沖縄に行ったときに,物語の舞台の一つとなっている「斎場御嶽(セイファーウタキ)」の入り口までは行ったのですが,結局斎場御嶽には行かなかった。
 標識に徒歩で15分位かかると書いていたので断念しました。何しろ入り口行くまで結構歩いていたので「もう,これ以上歩きたくない」と思ったのです。
 しかし,このような物語の重要な場所になるのであれば,もう一踏ん張りして「斎場御嶽」まで行けば良かった。
 先日も15歳?の子供が45歳?の母親を殺したという悲惨なニュースが報道されていましたが,この物語の親子はお互いに,相手を思い遣る気持ちで一杯です。「相手を思い遣る」。いつの時代でも,この気持ちは大切ですが,その表現方法は難しい。
 物語の終わり頃には,自然と目頭が熱くなってきます。そして,沖縄に行きたくなります。沖縄に馴染みが深い人には特にお薦めです。 

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『国語辞典の遊び方』 サンキュータツオ著

2016年12月18日 | 
学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方 (角川文庫)
サンキュータツオ
KADOKAWA

『国語辞典の遊び方』を書かれたのは,サンキュータツオさんである。サンキュウさんを知らないので,グーグルで調べると「サンキュータツオは、日本のお笑い芸人、日本語学者。漫才コンビ「米粒写経」のツッコミ。オフィス北野所属。」( ウィキペディア)とあった。
 そうなんです,最近は分からないことがあると,直ぐにグーグルで検索するので,辞典を引く機会がめっきり減りました。それに,例え辞典を引いてもその言葉の意味がなんとなく理解できれば,それ以上読み込むことはありません。ましては,同じ言葉で辞書によってどのように表現しているのかを気にしたことがありません。
 それが,日本語学者と一般人の違いなんでしょうね。
本書の18頁に,辞書ごとの「美しい」という言葉の説明を並べて掲載しています。 「目・耳・心に,うっとりさせる感じで訴えてくる。」(岩波国語辞典)
  「いつまでも見て(聞いて)いたいと思うほどその色・形や声・音などが,接する人に快く感じられる様子だ。」(新明解国語辞典)
  「すがた形や色・音などがすぐれていて,心を奪われるような感動を覚える。」 (明鏡国語辞典)
  著者は,角川必携国語辞典は,「きれいとの違いを明言。芸術的!」とし,ベネッセ表現読解は,「用例の書き方も独特」,新潮現代辞典は,「文芸作品からの用例がずらり!」と書いていますが,まったく同感です。
 なるほど,辞典の説明って個性的なんですね。びっくり!!せめてこれからはグーグルだけに頼らないで,辞書を引く機会を増やすと共に,もっと丁寧に説明を読むことにしましょう。

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怒り……吉田修一

2016年11月16日 | 
怒り(上) (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論新社

 3つの物語が同時に進行するので,初めは少し読みにくいのですが,直ぐになれます。
  吉田修一氏の小説では決まって嫌な気分にさせられ場面が登場します。そう女性がレイプされる場面です。レイプされた女性は,深く傷つけられながらも,それ以上傷つくのを恐れて告訴をしない。結果犯人は逮捕されない。罪を犯しながら罰せられない人がいる。そこに許しがたい憤りを感じる。実話ではなく,小説なんですがねー。
 でも読後感は,決して悪くありません。『悪人』に比べると数十倍爽やかです。
 人を信じることの難しさ。それがその人の過去や名前が分からなかったらなおさらのことです。信じ切れなかった自分への憤り,涙なくしては読めません。
 それにしても,犯罪者の挙動や心理描写が実に巧い。ひょっとしたら吉田氏の周りには,犯罪者や刑事や元不良少女だったという人がごろごろいるのではないかとさえ思わせる。
 とても面白い小説ですが,唯一の難点は,読み終えるのに少々時間がかかることです。

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九十歳。何がめでたい。 佐藤愛子著

2016年11月15日 | 
九十歳。何がめでたい
クリエーター情報なし
小学館

 佐藤愛子氏の本音爆裂の書である。
 悪口を言って何が悪い。
 自分の意思を通すためには相手とぶつかることもある。
 そうやって,人生の波を乗り越えてきたのだ!!
  北杜夫氏の『どくとるマンボウ航海記』,遠藤周作氏の『狐狸庵シリーズ』を読んだときの面白さが思いだされた。
 40歳以上の方にはお薦めです。

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「明日の君へ」。家裁判事補の活躍

2016年10月05日 | 
あしたの君へ
柚月 裕子
文藝春秋

 人というのは不思議なものである。丁寧な言葉遣いをする人には,こちらも丁寧な言葉遣いになり,他人から優しくされると,自分も他人に優しく接したくなる。  
 冒頭に掲載された物語「背負う者」は,ラインで知り合った男性とラブホテルに行き,男性がシャワーを浴びている間に財布を抜き出して逃走する話である。少女の罪名は窃盗。盗んだ理由は,遊ぶ金ほしさと言う。 

 しかし,主人公である家裁調査官補である望月大地が少女の家庭環境等を調べていくと,どうしても少女の回答に納得がいかない。少女が犯罪を犯した本当の理由は何のか。そしてその少女を更生させるためにはどのような処分が一番にいいのか。
 
 裁判官は大変な職業だと思ってるが,それをを支える家庭調査官の仕事も大変な仕事であることを知った。まあ,世の中に楽な仕事はありませんが。家庭調査官の仕事については,漠然としてイメージはあったが,この物語を読んでその調査の広さと深さに驚かされた。まさか,あくまで小説の世界の話ってことはないと思うが……

 思わず目頭が熱くなると共に,「自分も頑張らなければ」と,思える物語である。
 「背負う者」の他に,四つの物語が収められているが,どの物語も感動的である。 最後の物語である「迷う者」のような事案があった場合,裁判官はどう判断するだろう,と考え込んでしましました。
 帯に書かれた言葉「犯人までも人を救いたいんだ」,それが家裁調査官補たちの想いだと知った。

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コンビニ人間

2016年08月18日 | 
コンビニ人間
クリエーター情報なし
文藝春秋

 「コンビニ人間」。変な題だと思いましたが,読み終えた後は,なるほどこの名前がぴったりだなぁ,感じた。
 私が初めてコンビニに行ったのは,昭和50年の半ば頃か,終わりの方だったと思う。自慢じゃないが,はっきりとした記憶も記録もない。

 「こんなに高い値段で買う人がいるのかなぁ」と,当時はスーパーが今の2倍以上は存在していたので,思ったが瞬く間にコンビニの店舗は増えた。
 そして,3,4年前「セブンイレブン」が鹿児島島に初上陸したときに。「こんなに駐車場が広くて採算があうのかなぁ」と思ったが,セブンイレブンは破竹の勢いで増えた。 

私自身店舗の立地条件については幾ばくかの興味を持っていたが,そこで働く人や商品の並べ方には無頓着であった。
 この物語に主人公は,大学生のときから18年間コンビニのバイト一筋である。確かに今の日本では,結婚もせず,就職もしないでコンビニのバイトだけで18年間過ごした人に対しては,奇異な目を向けるかも知れない。
 この物語は,18年間コンビニでバイトをしている人と,その人を取り巻く人たちの物語である。心の描写が面白い。
 この小説を読んで以来,店員さんの接客態度や商品と陳列方法に視線がむくようになりました。

 知らない世界を垣間見るって,本当に面白いですね。あと30年若かったら,コンビニでバイトを始めていたかもしれません。

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「つまをめとらば」,いい本です。

2016年02月06日 | 
つまをめとらば
青山 文平
文藝春秋

 上質な物語とはどのようなものをいうのであろうか?
 読んでいて心が温かくなるもの,目頭が熱くなるもの,ほほえましくなるもの,読み終わった後にほんわかとした気持ちにさせられるものであろうか。
 『つまをめとらば』にえがかれた物語は,この中のいずれかが満たされます。
 結婚する前,「女性は,優しくて可愛い者」であると思っていたが,子供の成長と共にそれは大きな勘違いであることに気付かされる。

 『人もうらやむ』男同士の友情に感激しながらも,夫を支える女性の気働きをほほえましく読み進むが,その結末は……。なるほど「人もうらやむ」ですね。

 『つゆかせぎ』の中の一文です。「あらかたの男は,根拠があって自身を抱く。根拠を失えば,自身も失う」「女という生き物は美醜に関わりなく,いや,なにものにも関わりなく,天から自身を付与されているのではないか」まったく同感ですね。
 『乳付』乳が出るのに乳を飲ませる子はいない。乳を飲ませる子がいるのに乳がでない。江戸時代,出産は,子供を産む母親も,生まれ来る子供も死と隣り合わせであった。そして,いつの時代にも男は仕事で苦労し,女は悋気をする。その悋気が誤解から生じたものであることが分かったときに,お互いをより理解し合える。読み進める内に,はからずも目頭が熱くなった。

『つまをめとらば』数年前に隠居した56歳の男性が,幼なじみの友人に久しぶりに再会し,家を貸して欲しいと申し出たところから物語は始まる。
 禎治郎は,56歳になるまで結婚をしたことがないが,省吾は3度結婚を経験している。その3度の結婚がいずれも幸福な結婚ではない。
 その省吾が振り返る。「ふつうの女などいない。振り返れば,幾も,紀江も,みなふつうだった。ごくごくふつううの女に見えて。周りの風景に溶け込んでいた。それが,…………」「女は,皆,特別だ」 

 江戸の昔から,不倫や,欝や,浪費はあったのだ。いつの時代にも人は同じような悩みを抱えながら,生きていくのかも知れません。
 省吾は,省吾の家に下女の奉公をしたいと言ってきた,佐世という二十歳の娘,を見て,これは断らなければならないと思う。それは「なにしろ佐世は,罪のない童女のような顔を,罪ではち切れそうな躰の上に乗せていたからである。首の上と下との落差はあまりに大きく,……」。
 楽しみを毎日味わうためには,一日に一つの物語を読めば良かったのだが,「次はどんな物語だろう」という気持ちが抑えきれずに,一気に読んでしまった。この本ほ,既婚者には絶対にお勧めです!!

 

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