ひぐらし農園のその日暮らし

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減反政策の廃止の先には?

2018-02-24 17:47:00 | 農の話
減反政策が2018年度から廃止されます。40年以上続いたコメ政策の大転換。これからは農家は自由に米を作ってよいということです。

おそらくお米の値段が下がります。
もっと作付けを増やしたいと思っている大規模農家は多いし、作りたくないと思っていた農家がいたとしても、今年からいきなり辞めたりしないでしょうから。

生業として、地域の基幹産業として米作りを続けていくにはどうしたらいいのでしょうか?

経営規模の拡大による競争力強化か。
地域ブランドの確立か。
食味向上や有機米などの高付加価値化か。
飼料米、中食向けなど市場ニーズに合わせた作付けか。
流通に頼らない顧客の開拓か。
遺伝子組換やGPSなど最新技術を取り入れた省力化や無人化か。

しかし国内の米の需要は毎年8万トン減っている。産地間競争をしている場合ではないと思うのです。

ならば米粉など新しい需要の開拓か。
輸出による市場開拓か。

もちろん米だけに頼らず、麦、大豆なども取り入れていくべきでしょう。しかし、こちらも助成金なしでは利益は望めません。

山間の家族のために米作りをしている超零細農家、自給農家はすぐには辞めないでしょう。しかし世代交代は進まず、数年先には廃業に追い込まれます。
このままでは山間の農地は間違いなく荒廃していく。

ならば平坦部には希望があるのか?
先日避難解除されてまだ一年足らずの富岡町の稲作農家を訪問しました。
いくらでもある広大な農地。でも周囲に仲間は戻らず、用水路の管理や獣害に悩まされ、厳しい価格競争に晒されながらも、何とか復興したいと奮闘していました。
一方で近くには農業を諦めた農家が集結して、メガソーラーの導入が進んでいました。
これは被災地だからではなく、全ての日本の農業の未来の姿かもしれません。

さて山間のこの地で米作りを続けるためにやれることは何でしょうか?
ちなみに日本の農地のおよそ4割は中山間地にあります。これは会津山あいの一農家の問題ではないはずです。

公開セミナー「食と農の未来を考える」に参加してきました

2018-02-06 17:41:00 | 農の話
国学院大学を会場に行われた有機農業参入促進協議会主催の公開セミナーを聴講してきました。

基調講演は福島大学の農学部設立準備をしている部署のリーダーである生源寺眞一先生。福大農学部ができた折には学部長になる方です(たぶん)。見方によっては、今後の福島の農業の在り方を左右する方でもあるので、どんな話をされるのか興味津々で行ってきました。

講演は「食と農の未来を考える」という大きな題目だったので、日本の農業がどのような経緯をたどり、現在どのような状況にあるのかを豊富なデータを用いて判り易く解説するところから始まり、消費者との関係性、新規就農者の傾向についてなど、多岐にわたる内容でした。後半には農村コミュニティの重要性について言及され、個人的にはうれしく思いました。

以下備忘録もかねて。

〈一律に論じられない日本の農業〉
・カロリーベースでの食糧自給率はここのところ40%前後を推移しているが、昭和までは農業生産は増加していて、自給率の低下は食生活の変化=コメ離れ、肉、乳製品消費の増加(家畜の餌の輸入増)が大きい。
・しかし平成になってから、生産量そのものの減少が原因。昭和の時と質が違うことを認識すべき。=農業の弱体化
・自給率よりも自給力。
・小規模農家、中山間地の農家が兼業を選択したことは正しかった。
・最大の課題は水田農業の行く末。平坦地では農地の集約化が進んでいるが、一人当たりの耕作面積で見れば、新大陸型の大規模農業を実現することは不可能。
・日本の農業が直面してる現状は、経済成長のステージに入った多くのアジアの国々がこれから直面する課題を先取りしている=日本が反面教師にならないように!

〈存在感を増した食品産業〉
・日本の就業者の5人に一人(約18%)は食品産業に関わっている。(加工、外食)GDPでは約16%
・食品関連産業は次世代の日本社会を支える基盤のひとつ。成熟の時代を迎える中で、食の産業に対する期待は、地域密着型の雇用機会の提供を通じて社会の安定に貢献すべき。

〈消費者に近づく農業〉
・6次化という言葉は嫌い。厚みを増す、多角化を目指すべき。
・農業経営の判断力や構想力が顧客のニーズに向き合うことで鍛えらえる時代。
・経験財よりも信用財の側面が強まっている。
・農業経営には生産現場からの情報発信力のレベルが問われる時代

〈変わる農業の担い手像〉
・ほどよい面積を丁寧にが日本の農家のDNA
・40歳未満の新規就農者1万6100人のうち40%が農業法人などで就農した雇用就農者。11%が起業型就農者。残りが親元就農。60歳以上の定年帰農も3万人以上。
・女性の新規就農も増えている。今後に期待。
・若い世代は祖父母から農業に触れるきっかけを得ている。

〈農村空間の特質を活かす〉
・農業の多面的機能は日本、欧州など旧大陸では実感を持って受け止められていてグリーンツーリズムなどにつながっている。
・農業は思い通りにはならない難しさ。製造業=make、農業=grow=育つ、育てる(自動詞、他動詞)

〈農村の共同行動は文化遺産〉
・日本の農業、特に水田農業は二階建てで構成されている。二階はビジネス層、一回は地域の農業インフラを支えてる農村コミュニティの共同行動。
・共同行動の典型は農業用水路の維持管理活動。
・農村の共助・共存の仕組みには、都会が学ぶべき農村の文化的資産としての側面もあるのではないか。
・農村は決まり事としてメンバーに強制する仕組みから、異質なメンバーを前提に、互いに納得のうえで参加する共同行動へと脱皮することが求められるのではないか。