8月はクマに翻弄される日々でした。ブログやFBではお伝えしていましたが、今回、我が家の前に頻繁に出没していたクマが捕獲され、おそらく一連のクマ騒動も終息すると思われるので、その一部始終をまとめてみました。
近年日本中でクマの目撃情報が寄せられています。早稲谷もここ5~6年、クマの活動の痕跡がすぐ身近で見られるようになりました。その数や場所は年々増え、とくにここ数年は人家近くでも見られるようになったのです。
最初に我が家でクマが近づいていることが分かったのは、家のすぐ脇に生えている桐のウロに営巣していたニホンミツバチが襲われたことです。7月中旬、大雨の中、やってきたようでした。
続いて8月3日に2キロほど離れた畑のトウモロコシがやられます。
過去の経験から8月~9月にかけてクマがもっとも人里に近づくことは判っていました。おそらくこの時期は秋の実がなるにはまだ早く、一番山にエサの少ない時期だからです。そして心配していたことが現実に。ついに我が家の小屋に侵入したのです。
ちょうどロンドンオリンピックの頃で、サッカーを真夜中に観戦中、珍しく我が家の犬・ハナが(家中で飼っています)唸り声を上げました。まさかクマとは思わず、ハナが吠えるなんて珍しいなと思いながら、翌朝玄関を出るとこの有様。
狙いは鶏エサ用にストックしている米糠のようで、一袋引きずりながら森に帰っていった跡も。
この時点でとりあえずクマが出没していることを市役所に連絡。クマよけ用の夜間ライトやカメラを設置し、どれくらいの頻度で来るか調査開始。すると翌日は警戒したのか、エサ小屋ではなく、鶏小屋に侵入し、餌箱を持っていきました。
どうやら発酵している鶏エサが美味しくて気に入ってしまったらしい。たしかに甘い香りがしていますから。それでも鶏そのものに被害がなくてよかった。鶏小屋への連続侵入は避けたいので、電柵を設置しました。その後、鶏小屋への侵入は止まりました。
その後1週間ほどは気配は感じられなかったのですが、(カメラには頻繁に映っていたそうです)8月21日から再びクマのアタックが始まります。
足跡も確認。
22日には夫婦別々に外出し、連れ合いが先に9時ごろ帰宅したときに、すでにエサ小屋があらされていたそうです。ビクビクしながら家に入ると、12時ごろに再びクマが現れました。玄関越しにその様子を連れ合いが目撃。帰宅途中のボクに連絡し、友人宅に寄って爆竹を借り、家に着いたらまず爆竹を鳴らしてからあわてて入るという状態に。こうなると安心して暮らせないということで、市役所に交渉し、あらためて害獣駆除申請をお願いしました。
駆除申請は県の許可が必要なためにすぐに下りるわけではありません。オリが設置されたのは24日金曜日。その間もクマの襲来は止まらず。帰宅のたびにロケット花火を家に向かって放ってから入るという状態に。一応エサ小屋の扉を閉めてみましたが、扉を破ることなんてクマにとっては造作ないことです。
そして許可が下り、オリを設置。おとりのエサは大好物の蜂蜜です。ちなみに設置場所は台所から10mも離れていない畑の中。
するとクマの襲来がピタリと止まりました。オリには先に囚われたクマの無念がついているのか、警戒して近づかなくなりました。それならばそれでよいのです。山に帰ってもらえるのなら。しかしその効果も2日しか持たず、26日深夜、クマがオリに入りました。台所の窓越しからクマの暴れる音と荒い息づかいが聞こえていました。夜が明けてみると、
予想以上に大きいクマでした。体重100キロ以上、10歳位のオス熊です。あまりの警戒心のなさに、勝手に世間知らずの若いクマを想像していただけに驚きです。かわいそうですが、捕まってしまった以上は射殺されてしまいます。9時過ぎに猟友会の方々が来て処分していきました。
野生生物との共生という課題が今回も突き付けられました。なぜ10年もの間山で過ごしてきたクマが里に下りてきてしまうのか。開発により山が荒れ、エサがないことを指摘されることもあります。しかしボクの見解は、人が山を利用しなくなったことが最大の原因と考えます。事実、造林や炭焼き、焼畑などもっと盛んに人が山に入り、利用していた50年ほど前には、村の人がクマを目撃することは全くなかったと言っています。この頃の方が、クマにとっては自由に歩ける範囲がはるかに狭かったはずです。にもかかわらず、クマと人との接点がなかったのは境界線がはっきりしていたからだということです。バッファーゾーンが里に近づけば、クマは人が出した生ごみや今回のような家畜のエサ、農作物と接する機会が増えます。一度その味を覚えてしまうと、なかなか山には帰れなくなると思うのです。
解決するには人が再び山に進出していかなければなりません。もちろんただいたずらに山に入るということではなく、持続的な方法で山を利用していくということです。木を伐り、薪や炭に利用する。山菜やキノコを採る。こうしたことが生活の一部、できれば生計の一部になることで、クマは山に帰っていくのではないかと考えています。