ご縁があって国立社会保障・人口問題研究所の森田所長さんお話を聞く機会がありました。
少子高齢化問題は日本社会の将来に大きな影響を与えるテーマですが、その研究の最前線を行く研究所の方のお話。これは垂涎の場です。
で、今回は休暇で会津に来られたのを機に勉強会のような形で開催されている所をうまく潜り込ませて頂きました。感謝です。
さてそのお話は予想通りたいへん面白く、しかも衝撃的。日本の将来は、今からしっかりと対応しておかないと厳しいなというのが印象です。
以下備忘録もかねて。
まずは人口減少の現実の話から。
・団塊、団塊ジュニアと2度のベビーブームがあったが、第三次ベビーブームはなかった。これにより人口減少の流れは決まり、2008年をピークに日本の総人口は減少が始まる。
・第三次ベビーブームがなかった時点(1990年代)には超高齢化社会・人口減少は専門家の間では判っていたが、政府はその対応を怠ってきた。
・政府は2060年に一億人を目指しているが、専門家の間では厳しいとみている。(同所の推計では8674万人)
・出産適齢期の女性人口は2010年を100とすると、2060年には46.5(736万人)
・出生率が2.07ないと人口は現状維持できない。(人口置換水準というそうです)
・現在の出生率が改善しないと統計上は西暦3100年には日本人は0人になる。(さてこのときまだ行き先の決まっていない高濃度放射性廃棄物の管理はだれがやってくれるのやら)
・こうした現実は日本だけのことではない。フランスなどでは出生率は2あるが、他の欧州でも日本と同じ。またアジアも同じ傾向にある。(台湾、韓国は日本よりも先行している)
・このことから、人口減少、超高齢化社会は人類の進歩の過程で共有する問題であるという認識を持つべき。
・高度成長期は、生産年齢人口が多く、養われる人(老年人口、年少人口)の比率が低かったので経済成長ができた。 =人口ボーナス
・これからはそれが期待できない。=人口オーナス
・これからは人口が減ることを念頭にすべてを計画すべき。
都道府県別にみると
・2010年高齢化率が最も高いのは秋田(29.6%)、高知、島根、低いのは沖縄(17.4%)
・2040年には沖縄でさえ、高齢化率は2010年の秋田を上回り30.3%、このとき秋田は43.8%
・ただし高齢化が先行している地方は、比率は上がっても高齢者の人口そのものは増加しない。先進三県は減少する。
・一方で都市部は急激に高齢者が増加。(東京の場合2010年に2700万人が2040年には4150万人)つまり高齢者施設は絶対的に不足する。
会津は?(このデータは、勉強会用で研究所の正式なデータではないとのこと)
・会津全体は2015年27.3万人、2050年には13.5万人
・会津若松2015年12万人→2050年6.8万人、喜多方4.8万人→2.2万人
・これが出生率2.07となったとしても会津は14.2万人、会津若松7.2万人、喜多方2.3万人
ではどうすれば
・自然増は困難なことから、人口減少を前提とした地域社会の構築をすべき
・社会増の可能性。観光の推進。CCRC(「継続的なケア付きリタイアメントコミュニティー」の略。高齢者が自立して生活できるうちに入居して、社会活動に参加し、介護が必要になった場合も医療を受けながら暮らし続ける仕組み。)で高齢者の移住を受け入れる。
・地域内におけるコンパクト化の推進
・地域間の人口獲得競争における勝ち残り戦略、ただしゼロサムゲームとなり、日本全体での解決策にはならない。
こうした話の中で、出席者からいくつか質問がありました。
・地域でエネルギーも含めて自立していくことが小さなコミュニティが維持されていく方法ではないか。これを実現できれば、地方の人口問題の解決の糸口になるのでは。
・移民についてどう考えるか。
・地域内のコンパクト化(選択と集中)というが、小規模多機能自治など分散化についてはどう考えるか。
これに対して
・ロングスパンで見ていくことが必要。残念ながらコミュニティを持続させていく要因が減っている。人口構成が以前とは大きく変わっていることから、それに合わせて考えるべき。
・医療が発展した現在、安心して暮らせることの選択枝が増えている。例えば高度医療を受けられる場所は限られる中、住民は何を望むのか。
・公共インフラの更新時期に来ている。その大きなもののひとつが水道。例えばこうしたものを更新する際に、将来の地域の姿を考える。(ダウンサイジングもあり、水道なら分散化した簡易水道の導入など)
・移住人口を増やすことはその地域にとっては解決策だが、取り合いにならないように。
・役所の機能が縮小していく中、例えば小規模自治体なら、事務組合を結成し、行政部門を大きな町に委託してしますことも可能。
・現場にいる地方自治体から、国にどんどんアイデアをぶつけていくべき。
・長期的な右肩下がりの社会はまだ人類は経験していない。一時的な経済回復は意味がない。
・そろそろ「失われた10年(バブル後よく言われた)、失われた25年」という古い考えから切り替えが必要。
・2040年には有権者の50%は高齢者になる。政治がますます高齢者に目を向けた政策に流される心配がある。
・移民については、日本は今まで真剣に議論していない。定着してもらう仕組みももっていない。
感想
・会津という地方のさらに周辺地域、限界集落に住んでいる身には厳しい現実をあらためて突きつけられました。
・安心して暮らす。そもそも安心とは何なのか。すべてを望み手に入れることはできない。
・地域を守ることと地域の人すべてに安心の暮らしを実現することをイコールに考えるのは、右肩下がりの時代の中、場合によってはエゴになる?
・これをクリアしていくには、住民一人一人にきめ細やかな対応が必要。しかし地域にそれを支える力が残っているのか?
・大きな視点で見ていく必要があるなと感じた一方で、受け継がれてきたコミュニティをどう守っていくか。
・まあ、まずはエゴと言われようとも、移住者獲得に走りるしかないかな。(やや投げやり)
少子高齢化問題は日本社会の将来に大きな影響を与えるテーマですが、その研究の最前線を行く研究所の方のお話。これは垂涎の場です。
で、今回は休暇で会津に来られたのを機に勉強会のような形で開催されている所をうまく潜り込ませて頂きました。感謝です。
さてそのお話は予想通りたいへん面白く、しかも衝撃的。日本の将来は、今からしっかりと対応しておかないと厳しいなというのが印象です。
以下備忘録もかねて。
まずは人口減少の現実の話から。
・団塊、団塊ジュニアと2度のベビーブームがあったが、第三次ベビーブームはなかった。これにより人口減少の流れは決まり、2008年をピークに日本の総人口は減少が始まる。
・第三次ベビーブームがなかった時点(1990年代)には超高齢化社会・人口減少は専門家の間では判っていたが、政府はその対応を怠ってきた。
・政府は2060年に一億人を目指しているが、専門家の間では厳しいとみている。(同所の推計では8674万人)
・出産適齢期の女性人口は2010年を100とすると、2060年には46.5(736万人)
・出生率が2.07ないと人口は現状維持できない。(人口置換水準というそうです)
・現在の出生率が改善しないと統計上は西暦3100年には日本人は0人になる。(さてこのときまだ行き先の決まっていない高濃度放射性廃棄物の管理はだれがやってくれるのやら)
・こうした現実は日本だけのことではない。フランスなどでは出生率は2あるが、他の欧州でも日本と同じ。またアジアも同じ傾向にある。(台湾、韓国は日本よりも先行している)
・このことから、人口減少、超高齢化社会は人類の進歩の過程で共有する問題であるという認識を持つべき。
・高度成長期は、生産年齢人口が多く、養われる人(老年人口、年少人口)の比率が低かったので経済成長ができた。 =人口ボーナス
・これからはそれが期待できない。=人口オーナス
・これからは人口が減ることを念頭にすべてを計画すべき。
都道府県別にみると
・2010年高齢化率が最も高いのは秋田(29.6%)、高知、島根、低いのは沖縄(17.4%)
・2040年には沖縄でさえ、高齢化率は2010年の秋田を上回り30.3%、このとき秋田は43.8%
・ただし高齢化が先行している地方は、比率は上がっても高齢者の人口そのものは増加しない。先進三県は減少する。
・一方で都市部は急激に高齢者が増加。(東京の場合2010年に2700万人が2040年には4150万人)つまり高齢者施設は絶対的に不足する。
会津は?(このデータは、勉強会用で研究所の正式なデータではないとのこと)
・会津全体は2015年27.3万人、2050年には13.5万人
・会津若松2015年12万人→2050年6.8万人、喜多方4.8万人→2.2万人
・これが出生率2.07となったとしても会津は14.2万人、会津若松7.2万人、喜多方2.3万人
ではどうすれば
・自然増は困難なことから、人口減少を前提とした地域社会の構築をすべき
・社会増の可能性。観光の推進。CCRC(「継続的なケア付きリタイアメントコミュニティー」の略。高齢者が自立して生活できるうちに入居して、社会活動に参加し、介護が必要になった場合も医療を受けながら暮らし続ける仕組み。)で高齢者の移住を受け入れる。
・地域内におけるコンパクト化の推進
・地域間の人口獲得競争における勝ち残り戦略、ただしゼロサムゲームとなり、日本全体での解決策にはならない。
こうした話の中で、出席者からいくつか質問がありました。
・地域でエネルギーも含めて自立していくことが小さなコミュニティが維持されていく方法ではないか。これを実現できれば、地方の人口問題の解決の糸口になるのでは。
・移民についてどう考えるか。
・地域内のコンパクト化(選択と集中)というが、小規模多機能自治など分散化についてはどう考えるか。
これに対して
・ロングスパンで見ていくことが必要。残念ながらコミュニティを持続させていく要因が減っている。人口構成が以前とは大きく変わっていることから、それに合わせて考えるべき。
・医療が発展した現在、安心して暮らせることの選択枝が増えている。例えば高度医療を受けられる場所は限られる中、住民は何を望むのか。
・公共インフラの更新時期に来ている。その大きなもののひとつが水道。例えばこうしたものを更新する際に、将来の地域の姿を考える。(ダウンサイジングもあり、水道なら分散化した簡易水道の導入など)
・移住人口を増やすことはその地域にとっては解決策だが、取り合いにならないように。
・役所の機能が縮小していく中、例えば小規模自治体なら、事務組合を結成し、行政部門を大きな町に委託してしますことも可能。
・現場にいる地方自治体から、国にどんどんアイデアをぶつけていくべき。
・長期的な右肩下がりの社会はまだ人類は経験していない。一時的な経済回復は意味がない。
・そろそろ「失われた10年(バブル後よく言われた)、失われた25年」という古い考えから切り替えが必要。
・2040年には有権者の50%は高齢者になる。政治がますます高齢者に目を向けた政策に流される心配がある。
・移民については、日本は今まで真剣に議論していない。定着してもらう仕組みももっていない。
感想
・会津という地方のさらに周辺地域、限界集落に住んでいる身には厳しい現実をあらためて突きつけられました。
・安心して暮らす。そもそも安心とは何なのか。すべてを望み手に入れることはできない。
・地域を守ることと地域の人すべてに安心の暮らしを実現することをイコールに考えるのは、右肩下がりの時代の中、場合によってはエゴになる?
・これをクリアしていくには、住民一人一人にきめ細やかな対応が必要。しかし地域にそれを支える力が残っているのか?
・大きな視点で見ていく必要があるなと感じた一方で、受け継がれてきたコミュニティをどう守っていくか。
・まあ、まずはエゴと言われようとも、移住者獲得に走りるしかないかな。(やや投げやり)