ひぐらし農園のその日暮らし

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有機農業大全メモ②

2020-01-26 08:47:00 | ノンジャンル
土壌生態系の管理

不耕起草生栽培で土壌炭素濃度を上げ、豊かな土壌生態系を目指す!

【土づくりへの誤解】
・環境への負荷を抑制し、安全で安心な農作物を低コストで生産するには、土壌の有機物や養分、物理構造、生物多様性の保全など土壌が本来持つ機能を上手く利用する必要がある。
・ひたすら外部から堆肥や農業資材を投入し、物理的に耕耘することが土づくりではない。
・土壌の状態はゆっくり変化するため、農家は土壌の劣化を感知しずらい。
・土壌を一つの生きた生態系ととらえる

【土壌の持つ機能】
・物理的機能 植物を支える基盤、水分保持と排水、二酸化炭素やメタンなどのガス交換。植物を始め様々な生物の生息場所。
・化学的機能 栄養塩の吸着
・生物的機能 有機物の分解
・土壌有機物は陸上生態系における主要の炭素プール。地球全体では大気中の二酸化炭素の炭素量の2〜3倍の量が土壌に貯蔵されている。

【土壌生物の多様性】
・土壌生物は小型で乾燥に弱い。
・陸上動物の10倍の土壌動物、100倍の土壌微生物が生息。陸上生態系では土壌は最も多く多様な生物がぎっしりと生息している場所

【土壌生物の機能】
・微生物のほとんどは枯死した有機物を栄養源とし、酵素で有機物を分解。
・菌根菌は植物のへ感染共生し、植物から糖類などの炭素源をもらう替りに、リン、カリウムなどを土壌から植物に供給。
・病原性のもの、植物の生長を阻害するものもあり。
・土壌生物と植物の関係は、直接成長にえいきょうするものと間接的に栄養塩や土壌環境の改変を通じて関係するものがある。

【農作業が土壌生態系に与える影響】
・過度な土壌耕起は土壌団粒を破壊する。耕起は一般に土壌生物の個体数や現存量を減少させる。影響は体の大きな土壌生物の方が大きい。
・地上の植物群落は生態系の発達につれ生物相が豊かになる。同様に地下の生物相も豊かになる。
・除草は作物との競争を緩和するためには重要だが、土壌の劣化につながる。土壌中の植物の根の量が減少するので、土壌生物にとっては餌資源量が減少する。
・化学肥料は土壌のPHや土壌水の浸透圧を変えたりするので、土壌微生物や小型土壌動物に負の影響を与える。

【土壌生態系の機能を活かした農地の管理】
・FOAは保全農業として不耕起、省耕起、植生や有機物による地面の被覆、輪作や混植を提唱。
・不耕起栽培の採用で、土壌炭素の濃度は上昇する。カバークロップ、有機物の被覆で土壌生物量は増加する。
・不耕起草生栽培は日本独自。耕起と比較して土壌微生物の現存量は3〜5倍。土壌に炭素が集積。
・有機栽培であっても耕起することで土壌生物が少なく、こうした圃場に多量のたい肥を散布しても作物に必要な栄養は供給されない。
・土壌炭素濃度が高い土壌ほど収穫量は増える

有機農業大全メモ①

2020-01-24 08:22:00 | 農の話
以前有機農業をもっと日本で広めるには何が必要かというつぶやきをしました。

12月に出版された『有機農業大全』にそのヒントとなるものがたくさん入っていたので備忘録として記しておきます。

有機農業と環境保全

【オーガニック3.0】
・社会的に有機農業が定義された段階をオーガニック1.0(〜1970年代)
・有機農業の社会的認知度が広がり、国際的な標準化や法制度化された段階をオーガニック2.0(1980年代〜現在)
・3.0は有機農業が特殊栽培ではなく、次世代の主流となる生産システムとして発展させ、農業が直面するさまざまな問題(気候変動、持続可能な開発など)の解決策として位置付けられるような有機農業の刷新を提起

①魅力的でかつ収穫量の向上が見込まれる革新技術
②地域資源の活用や伝統の継承の観点
③社会的公正さがはっきりとみえるような取り組みの多様化
④真に持続可能な食と農に関する運動体・組織体と連携し、持続性を包括
⑤生産者と消費者とのより良いパートナーシップを持つ関係の構築
⑥有機農業の持つ潜在的な価値の認識と適正な価格の形成

【農業の永続性への課題】
・2005年に比べ、2030年には40%以上、2050年には70%以上食糧生産を増やす必要あり。
・しかし耕地面積はこの50年間にわずか10%増のみ。しかも残された土地は生産性は低い。
・しかもモノカルチャー栽培が占有し、土壌劣化の危機
・温室効果ガスの23%が農業から排出。過去50年で2倍に増加。2050年にはさらに30%上昇の見込み。
・排出は「農業生産を行うための開発」と「農業そのものの活動」の2つある
・窒素化学肥料が地球環境の大きな脅威。2010年の消費量は110テラグラム。利用効率は25%にとどまり、残りは反応性窒素として環境に大きな負荷となる。硝酸態窒素汚染、一酸化二窒素(N₂O)←温室効果ガス
・最善管理方法を導入すれば、有機農業が次代の農業システムの主流になれる。ただし有機農業の技術革新が非常に重要。
・慣行栽培技術に用いられる農業資材を有機質資材に置き換えた有機農業では環境負荷リスクある。

【慣行栽培と有機栽培の食品比較】
・タンパク質含有率は慣行の方が高く、リン含有率は有機の方が高い。タンパク質、硝酸塩、カドミウム濃度は慣行が高く、抗酸化物物質は有機が高い。
・乳製品、食肉に含まれるオメガ3脂肪は有機畜産の方が多い。
・作成方法に問題のあるたい肥は病原菌汚染につながる。=高温好気性発酵が不十分、動物に使わる薬剤など
・残留農薬は有機の方が検出頻度が低い。

【保全しながら生産する新たな有機農業へ】
・これからは農地の持つ生態系機能を向上させることが重要。自然の持つ生産力をベースに、人間が積極的に生態系に関与することで投入を極力抑え、農業生産力を最大限に発揮する技術が必要
・気候変動の緩和と適応をするシステムの確立。農耕地土壌が温室効果ガスの吸収源機能を最大限発揮することを期待
・有機農業では土壌に蓄積される有機態炭素量が増加。二酸化炭素を土中に長期貯蔵できる
・有機農業で最初の50年間に比較的急速に土壌炭素を増加させ、今後100年間、炭素貯蔵可能。


有機農業大全

2020-01-24 08:15:00 | ノンジャンル
地球温暖化の影響が目に見えて大きくなる中、私たちの暮らしをどのように変えていくべきか悩ましい今こそ、この本を読んでいただきたい。

これまでの有機農業関連本は、栽培技術や生活圏周辺の環境や身体への影響など、有益ながらも断片的な情報にとどまっていましたが、この本はこうした研究や実践の蓄積を体系化し、農家や消費者のみならず、社会がこれからどうあるべきかを示してくれています。
オススメです!