以前ブログで紹介した喜多方新エネルギー策定委員会の先進地視察に参加してきました。場所は新エネルギーの導入に積極的な岩手県葛巻町。同じ東北とはいえ遠い・・・。いや~、東北ってやっぱりでかいですね。何しろバスで片道6時間ですから。当然一泊旅行、夜は宴です。
で、到着した場所は会津から遠いだけにやっぱり同じ東北ではありませんでした。何ていうか、気候がここより一ランク北のところ。植生がもっと寒冷地仕様。雑木には白樺が交じり、植林地も杉が寒さのため十分育たないためカラマツが主。田んぼも自給程度分しか見られず、ほとんどが牧草地。そう、葛巻は本州最大の酪農の町なのです。(こういうことが車で通るだけでピンとわかるようになったのはやはり会津で農業をしていたおかげですね。日頃の農作業で季節感や自然への視点に確固たる基準があるからでしょう。)実際に到着した時、雪でした・・・。今年の初雪は岩手で遭遇。風景が宮沢賢治の地元だけにあの世界っぽい。まさに暗く厳しい東北のイメージそのまま。
それはともかく、この町の新エネルギーの取り組みはムダな金を使っていないという点で素晴らしかった。実に上手く地の利を生かしています。今回見学したのはバイオマスを利用した発電と風力発電、太陽光発電、それとペレットボイラー。あるものを利用する、捨てられていたものを生かすという発想が根底にあり、儲けてやろうとか目立ちたい的なガツガツしたところがないのがたいへんよろしいです。
例えば風力発電。標高1000mの吹きっさらしの尾根に12機の大型風車が連なる様は圧巻。日本最大級だそうです。実際は葛巻町の出資ではなく、電源開発の事業。工業団地に企業を誘致したようなもので町には法人税と固定資産税が入ってきます。強い風が吹くのはもちろん、元々あった牧草地に建てたので、建設にあたり道路敷設が必要なかったことが最大のメリット。ただ強風が吹けばいいって訳ではないのですね。なにしろこの発電機、塔の高さは60m(!)、風車のハネも1本30m強あるらしいですから。無理をせず上手く地の利を生かしています。
ペレット製造工場(葛巻林業=民間)にも行きましたが、本業は製紙用チップの製造で、今まで捨てられていた皮(バーク)の処理に困ったため苦肉の策として始めたそうです。自社で発生するバークだけでは足りない場合は近隣の製材業者からトラック一台数千円程度で調達してくるらしい。このペレット供給を見込んで町の施設にはいくつものペレットボイラーがあります。捨てられていたものをこんな風に循環させているのも素晴らしい。
バイオマス発電も同様。酪農の町では常に牛の糞尿処理は悩みの種。まして大規模な牧場ではその労力、費用は馬鹿になりません。そこを逆手にとったのがこの施設。牛糞を嫌気性発酵させ、メタンガスを回収。それを発電に回し牧場施設の電力をまかなうというもの。ただしこれは国や県からの補助金で費用の半分以上をまかなっているので、まだ採算のとれるものではないという問題があるみたい。
そんなこんなでとても有意義な視察旅行でした。さて喜多方ではどんな新エネルギー計画を立てるべきでしょうか。最終計画案に一委員の意見がどれだけ反映されるかはなはだ疑問ではありますが、せっかくなのでいろいろ考えて提案してみたいと思います。