ひぐらし農園のその日暮らし

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コモンズ・大江正章さんを偲ぶ

2020-12-27 07:29:00 | その日暮らし
 大江正章さんと初めてお会いしたのは2010年6月。猪苗代町ビライナワシロで行われた日本有機農業学会公開フォーラムでした。
 その少し前に友人を通じて知り合い、本の執筆を打診されていて、その時が最初の顔合わせと打ち合わせでした。想像していたよりも小柄で、気さくで笑顔が印象的。
 コモンズは有機農業や国際的な社会問題、環境問題などを取り上げた書籍を多数出版されていて、まさにボクのツボにハマっていたのですが、そのほとんど全てをこの人が編集したのかと思うと、果たして数多いる新規就農した有機農家で決して優等生ではないボクが本を出させてもらっていいものか。稚拙な文章と知識と僅かな実績で、いくら着飾っても見透かされ、あの笑顔を最後まで保たせられるのかと重圧もありました。

 一章書き上げるたびに、メールでチェックを入れてもらい、およそ半年かけて8割ほど書き上がった時、東日本大震災が起きました。
 それからしばらくはあの混乱ぶりで気持ちの整理がつかず、執筆も全く進まなくなっていたのですが、大江さんから放射能汚染に向き合う福島の農家の姿を本に書き加えて欲しいと言われ、再び筆を取る気持ちになったのでした。そしてようやく『ぼくが百姓になった理由』を出すことができたのです。書き始めてから出版まで2年を費やしました。

 震災を機に大江さんは、放射能汚染に翻弄されながらも耕し続ける福島の農家たちの支援の先頭に立ってくれました。
 福島県有機農業ネットワークの会員農家たちの苦悩や取り組みを『放射能に克つ農の営み』の一冊にまとめて世に出し、下北沢でアンテナショップ「ふくしまオルガン堂」が立ち上がるとアドバイザーになってくれました。さらに放射能汚染とどう向き合うべきかシンポジウムを東京で頻繁に開いてくれました。

 また上堰ボランティアにも2014年に来てくれました。もっとも浚い作業よりも、集まった人と料理とお酒を楽しんでいたように見えましたが。

 その後もさまざまなシンポジウムやセミナー、主宰する「地域の力フォーラム」に声を掛けてくださったり、さらに地方自治の先進例に精通したジャーナリストでもあり、憧れの課題先進地・島根県にも連れて行ってもらいました。
 最近では『有機農業大全』に実践者の一人として筆者に加わらせてくれたりと、ボクの身の丈以上の機会をいつも与えてくれました。

 今年の3月に肺がんが見つかると、福島の有機野菜を食べたいと連絡があり、ふくしま有機ネット会員の野菜や人参ジュースを何度も買ってくれました。その度にメールで聞く病状は、安定していると勝手に思っていました。
 遺作となってしまった『有機農業のチカラ』と一緒に、大江さんが自身の原点と言っていたつくばの田んぼのお米が11月に送られてきた時、何か胸騒ぎのようなものを感じました。それが現実になってしまったことが残念でなりません。

11月に新たに転移がみつかり、12月に入り症状が急激に悪化して、15日に帰らぬ人となりました。
 まさに今日(12月19日)、東京で大江正章さんの葬儀がしめやかに行われています。
ご冥福をお祈りいたします。

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