犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

眠くなる文章

2010-03-01 23:43:48 | 国家・政治・刑罰
ある犯罪被害者保護研修の資料より

 犯罪被害者が訴訟記録の閲覧又は謄写をするには、「当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要と認められる場合その他正当な理由」がなければならない(犯罪被害者保護法3条1項)。この正当な理由については、「損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合」が例示されていることから、これと同等の理由が必要であると考えられ、単に被害者等が事件の内容を知りたいというだけでは、正当な理由があるとは認められない。

 犯罪被害者が訴訟記録の閲覧又は謄写をするには、正当な理由がある場合であって、更に「犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認められるとき」でなければならない。ここにいう「相当と認められるとき」とは、訴訟記録の閲覧又は謄写をした場合に、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせる不当な影響がないか、又はその恐れが低い場合をいう。

 逆に、関係人の名誉又はプライバシーへの不当な侵害などが懸念される場合、閲覧又は謄写された内容が濫用される懸念がある場合、被告人が事実を争い、被告人の供述調書の信用性が争われている事案で、その閲覧又は謄写を認めると審理に支障が生じるような場合などにおいては、閲覧又は謄写が認められることは相当でないと考えられる。将来的には、相当性およびその判断過程の透明性をチェックする第三者委員会、不正監視委員会の設置も検討されよう。

 訴訟記録の閲覧又は謄写の申出に対しては、速やかに応答しなければならない(犯罪被害者保護規則3条)。当然のことながら、書類の不備の指摘、過去の事例の調査による整合性の検討や、正当な理由や相当性の有無などを判断するのに必要な時間まで制限されるものではない。応答は、訴訟記録の閲覧又は謄写をさせるかどうかを申出人に知らせることによって行う。訴訟関係人その他の者に通知をした場合には、これを記録上明らかにしておかなければならない(犯罪被害者保護規則11条1項、刑事訴訟規則298条3項)。

 訴訟記録を謄写させる場合においては、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる(犯罪被害者保護法3条1項)。これは、訴訟記録を謄写させた場合において、目的外使用がされたり、一般に公表されるなどの濫用があると、関係人の名誉若しくは生活の平穏が害されるからである。仮に条件違反があって、それにより関係人が損害を被った場合には民法709条の不法行為が、当該関係人の名誉を毀損した場合には刑法230条の名誉毀損罪がそれぞれ成立する場合がある。


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 法律専門職の間では、犯罪被害者保護に関する研修も増えてきました。しかし、官僚的な文章は眠気を誘うもので、何か大きなものを得て帰ったという記憶はありません。
 このような研修に真剣に取り組んだ結果として、「犯罪被害者は法治国家のルールに収まらずに扱いが難しい」という視点を無意識に身につけてしまうのであれば、寝ていたほうがいいとも思います。

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