宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

中島義道『晩年のカント』「はじめに」:カントの「解答することができない問い」①「神の現存在」、②「魂の不死」、③「自由」!

2021-01-26 22:42:42 | Weblog
※中島義道(1946-)『晩年のカント』(講談社現代新書)2021年

(1)「傲慢さ」なしに生きることは出来ない!「自己の生の肯定」(生き続けようとすること)は根本的に「傲慢」だ!
哲学に携わり老境に至った者の二つの「傲慢さ」。(a) 「自分は少なくとも他の哲学者より真理に近づいている、物が見えている」という「傲慢さ」。(b)「『どうせわかるわけはない』という投げやりな態度」。これも「傲慢」である。(中島)
《感想1》「傲慢さ」なしに生きることは出来ない。「意味のない」(これは否定的な意味でなく、本人の意図・目的に従って生まれて来たのでないということだ)生誕の後の「生」を生き抜くためには、自分の「生」を肯定しなければならない。「自己の生の肯定」(生き続けようとすること、Ex.フロイトの「生の欲動」)は、根本的に「傲慢」だ。
《感想1-2》(a)《他の仕事上の競争者より「優れている」》or《商売人・職人・組織人・学者等々など同業者と比較し「人並み」だと合格点を自己に対して出す》「傲慢」は、生き続けるために(「自己の生の肯定」のために)不可欠だ。
《感想1-3》(b)哲学を「生業」とする者が、「哲学的問い」に対して「『どうせわかるわけはない』という投げやりな態度」をとったとしても、「生業」で生きていければ、それも一つの業態だ。この場合、さらに「積極的」な哲学の業態としては、どうして「わかるわけはない」のかを説明すればよい。これで十分に文章・学説は「商品価値」を持つ。

(2)カントの「解答することができない問い」:①「神の現存在」、②「魂の不死」、③「自由」!
カントにとって「課せられているが、解答することができない問い」とは、①「神の現存在」であり、②「魂の不死」であり、③「自由」であった。「私(中島)の場合、この3つが『私が現にある』とはいかなることか、という唯一の問いのかたちをとって、私に迫ってくる。」(中島)
《感想2》①「神」は、「存在」(=「有」=「宇宙」=「モナド」)の根拠であって現れ出ているわけでないから、確かに、「神の現存在」について答えようがない。
《感想2-2》「存在」(=「有」=「宇宙」=「モナド」=「超越論的意識(主観性)」=「超越論的モナドの共同体」)は現れ出ている「事実」or「出来事」だから、「事実」or「出来事」に関する問いは答えられる。

(3)カントの①「神の現存在」の問い:「私の存在」に、《偶然》を超えた確固とした理由があるのか?
「私が現存していること」に、《偶然》を超えた何らかの確固とした理由があるのであろうか?これが、カントの①「神の現存在」の問いにほかならない。(中島)
《感想3》評者(「私」)は「科学」の時代(今の日本)に生まれたので、①「神」を信じないから、「私」の存在は「神」の「被造物」という必然性は持たず、「偶然」にすぎない。
《感想3-2》評者の考えでは「私」とは《目覚めている=自己意識している》宇宙であり、ただし宇宙の「身体」領域に縛られた《目覚めている=自己意識している》宇宙だ。
《感想3-3》「身体」領域に縛られていることの一つが、「身体」に寿命があることで、身体の死滅とともに、《目覚めている=自己意識している》宇宙が再び眠る。(永眠!!)
《感想3-4》これらの意見(《感想3, 3-2, 3-3》)は、世の中(今の日本)のいわゆる「常識」とほぼ同じ見解だ。

(4)カントの②「魂の不死」の問い:私は死んでしまったら「完全な無」なのであろうか?
私は死んでしまったら「完全な無」なのであろうか?これが、カントの②「魂の不死」の問いである?(中島)
《感想4》評者(「私」)は、死は「完全な無」だと推定する。他なる膨大な「死」の例からみて、「私」だけ違うと言える理由がない。「私」は「科学の子」だ!(Cf. 「科学の子」は鉄腕アトムだけでない。)そして今の「常識」は「科学の子」の常識だ。
《感想4-2》ただ、もしかして「死後が《無》でなかったらどうしよう」という恐怖はある。もしかしたら自分は「地獄」に堕ちる。なんという不吉な「文化」のもとに生まれたことだろう!「地獄」に堕ちないためには、Ex. 「仏教的涅槃を目指す」or「功徳を積み阿弥陀如来の来迎を待つ」etc.しか救われる道がない。Cf. 他の文化で「死後が《無》でない」場合の救済は、Ex. キリスト教的救済、イスラム教的救済等々がある。

(5)カントの③「自由」(善悪あるいは生きる目的)の問い:生きることに何の意味があるのか?
生きることに何の意味があるのであろうか?これが、カントの③「自由」((ア)善悪あるいは(イ)生きる目的)の問いである。(中島)
《感想5》「自由」(自由意志)とは「決定論」に支配されないことだ。評者(「私」)は「決定論」は単なる「反省」の立場であってor「過去」のみ扱う態度にすぎないと思う。
《感想5-2》「自由」(自由意志)は(「決定論」と異なり)「未来」にかかわる。「自由」は何をめざすか?中島は(ア)「善悪」、(イ)「生きる目的」を挙げる。
《感想5-3》「自由」がめざす(ア)「善悪」とは、すなわち(ア)-1「善」つまり「利他主義(altruism)」・「共感」であるか、あるいは(ア)-2「悪」つまり他者の破壊・収奪・奴隷化だ。(これは「悪魔主義」だ。)
《感想5-4》「自由」がめざす(イ)「生きる目的」はより広範な概念だが、「意志」的だ。例えば、「意志的」に「善」をめざす、「悪」をめざす。あるいは「意志的」に快追求・不快回避の行動・傾向に従う(Ex. 刹那主義)。
《感想5-5》「自由」が(ア)「善悪」や(イ)「生きる目的」と無縁な場合もある。(中島は(ア)(イ)以外のケースに言及していない。)つまり(ウ)「非意志的」な「自由」もある。これはそもそも「目的」として定立されたのでない(ウ)-1「快追求・不快回避」の行動・傾向だ。時には正反対に、(ウ)-2「不快追求・快回避」のこともある。(Cf. フロイトの「快感原則の彼岸」すなわち「死への欲動」!)

(6)「食える」「しのげる」「糊口の道が得られている」なら人生は《成功》だ!
「私(中島)は、これらの問いに確定的に答えることはできないことを予感しつつも、これらに関わり、これらに引きずり回されている。なぜなのか?この人生において、どうしても他に価値のあることを見出せないからである。」(中島)
《感想6》評者(「私」)が思うには、「人生」を全うするためには、まず生活しなければならない。「この人生において、どうしても他に価値のあることを見出せない」ということで中島氏は大学教員・著述家を続けているが、それで「食える」「しのげる」「糊口の道が得られている」のだから、それは《大成功の人生》ということだ。
《感想6-2》評者(「私」)も今、何とか「食える」「しのげる」「糊口の道が得られている」から私の人生も、ぎりぎり《成功》だ。

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浮世博史『もう一つ上の日本史、近代~現代篇』 (20) 百田氏の誤り:「下関条約」により、日本のおかげで李氏朝鮮が「大韓帝国」(1897)となったのではない!親ロシア政権が国号を改めた!

2021-01-26 11:27:38 | Weblog
※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、近代~現代篇」(2020年)「世界に打って出る日本」の章(67-148頁)  

(20)百田氏の誤り:日本のおかげで「大韓帝国」となったのではない!親ロシア政権が国号を「大韓帝国」と改めた!(87-89頁)
T 百田尚樹『日本国紀』は、日清戦争の講和条約である「下関条約(1895年4月)により、李氏朝鮮は初めて清から離れて独立した。李氏朝鮮は二年後に国号を大韓帝国と改め、君主はそれまでの『王』から『皇帝』を名乗った」(百田307-308頁)と述べる。百田氏は《「下関条約」により、日本のおかげで李氏朝鮮は「大韓帝国」となった》と主張する。だがこれは誤りだ。親ロシア政権が国号を「大韓帝国」と改めた。
T-2 日本は、朝鮮の独立を清国に認めさせ、「利益線」である朝鮮から清国の勢力を排除した。しかしロシア・ドイツ・フランスによる「三国干渉」で日本は「遼東半島」を返還させられる。
T-3 朝鮮半島は、清・日本・ロシアが影響化に置こうと争っていた。
(ア)もともと日清戦争中、朝鮮の国王がロシアに匿われていたこともあり。閔氏(ビンシ)政権は、1895年7月、親ロシアの方針を取るようになる。
(イ)日本公使三浦梧楼(ゴロウ)はこれに危機感をおぼえ、日本の軍人らとともにクーデターを決行。閔妃(ビンヒ)を殺害して、大院君を擁立する。(閔妃殺害事件)
(ウ)ところが今度は1896年2月、ロシアが後ろ盾となってクーデターが起こり、国王高宗はロシア公使館に移り(露館播遷 ロカンハセン)、親ロシア政権が誕生する。そして1897年、国号を「大韓帝国」と改め、国王は「王」から「皇帝」となって清や日本との対等を表現した。
(ウ)-2 このことを記念して「独立門」が建てられた。(ロシア人建築家サバチンの設計施工)。独立門は「日本と清からの独立」を記念して建てられた。

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